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#12質という錬金術を知っていますか?質屋に低学年で体験した私の記憶。一つのお金を生み出す方法ですよ。(貧困幼少期からNPO代表理事までを100日で振り返る)

前回母の仕事が決まった!とはいえ、手元のお金はありません。

母が仕事を始めて初給料までは、児童扶養手当などの支給で何とかしのぐのですが、その前にさせてもらった体験を・・・

現行の児童扶養手当/厚生労働省

質屋に6歳から関わった人生。

質屋ということに一度も関わらずに一生を終える人もいると思いますが、私の質屋デビューは6歳でした。

学校が休みの朝、母が家にあったカセット口が並んで2つある横長の黒いラジカセを大きな紙袋に入れました。

「何するん?」
『ちょっと出かけるで。あんた後ろでこの紙袋もってくれるか?』
「・・うん」

(なんなんやろ。。。)

行先は不明なまま、子供乗せ自転車の後ろで紙袋から飛び出ているラジカセをにぎりしめながら支え、ガタガタと振動を受けながら景色が流れます。

「どこいくのぉ~??」

(自転車の会話は大きな声を出さないと伝わりづらい)

『ちょっとなぁ~。』

何でも言う母でしたので、あまり言わない時は何となく突っ込んだらダメなんだとそのまま黙ってのっていました。

ラジカセは、山口百恵さん・桂銀淑さん・美空ひばりさん・森昌子さん・中森明菜さんなどの歌を沢山聞かせてくれました。

歌詞の意味なんて微塵も分かっていませんでしたが、思い出歌です。

『着いたわ!』

いつもの活動範囲より離れた古民家。
地味でお世辞にも綺麗とは言えない家には、一遍20cmほどの正方形の鉄看板には、色あせたネイビー色で「質」と書いてあり、ギィーという異音を鳴らしながら風になびいていました。

漢字は習っているものの、そこが何の店かもわかりませんでした。

母は自転車から私を降ろすと、木の扉を開けます。

入ったら玄関みたいな場所で人はいません。
『すみませーん』

(どこ・・ここ。ってか知らん人の家、入って良いんかなぁ?)

中から家の見た目や古びた玄関とは違って、パリッとした雰囲気のおじいさんが、はい。とでてきました。お店っぽくもなく、民家でした。

『これをお願いしたいんです』

「どれですか?」

『ちょっと貸してくれるか?』と紙袋を預かり、おじいさんにラジカセを渡します。

おじいさんはカセットデッキをまじまじと見ます。

「おこさん?」
『はい。』
私はおじいさんを見ると目があいましたが、すぐ目をそらしました。
怖いから声は発していません。

「ラジカセね。今はCDもあるからね。こちらやったら、3千円いうところでしょうかね。どうでしょう。よろしいですか?」

『ありがとうございます!そちらでお願いします』

「そうしましたら、〇月〇日迄に来てもらわなかったら、こちらは処分しますからね。」

『はい。』

お釣りを返すようなトレイに3千円と紙を差し出されます。

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母はお金を受け取り、家へと自転車を走ります。

「お母さん、〇日迄って言ってはったけど、また取りに来るん?」
『ううん。もうあれは取りに行かへん。売ったんやで』


(え・・・・・・!?カセットテープもう聞けへんやん!!!)

「そうなんやぁ・・・」

悲しみもあったのですが、目の前でお金に変わる場をみたことで、興奮もしていました。

「けど、3000円ってすごいなッ!!!」

ーーーー

何年も使用されたCDも聞けないラジカセに3000円もの価値があったのかはわかりません。子を連れて質という状況で、ちょっと”色”を付けてくれたのではないかと思い出すたびに感じます。

母は、「質流れ」を決めた上で「質預かり」を使用したのでした。
近所がうるさいから、家の近所ではない質屋を利用したようです。

「質預かり」とは、顧客から預かった品物に見合った金額を融資することです。例えば、顧客が持ってきたブランドバッグの査定を質屋が行い、10万円の価値があると判断すれば、顧客に10万円融資するという流れです。
顧客は、借りたお金を返済する際に(10万円 + 利息)を支払う必要があり、その利息が質屋の収入になるというわけです。
質預かりの期間は基本的に3ヶ月以内となっていて、顧客が3ヶ月以内に「元金 + 利息」を支払いできなかった場合には、「質流れ」となり、質屋側が顧客に融資した金額で、顧客の商品を買い取るという形になります。

質預かりとは/RecoreHPより

お金がないと思ったときも、家の中にはお金に変えられるものが沢山あると思います。モノを現金化するときに時間がかかるものもあります。
今回、ラジカセが3千円になった話を書くと同時に、質屋が何するところか知らない方も多いと思いますので、困ったときの一つの選択肢になればいいなと書いています。

母に言ったら『そんなことあったかなぁ?』と、忘れていました(笑)

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ささいなことで人生は変わると信じています。それは、人生の大きな決断の手前にあるキッカケになるのではないかと。節目を思い出すと決断の前には、ささいなキッカケがあったからです。見て下さったあなたの何かのキッカケになればと思って綴っています。note100日チャレンジをする理由はこちら

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