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『存在と時間』を読む 全88本

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2021年12月の記事一覧

『存在と時間』を読む Part.32

  第33節 解釈の派生的な様態としての言明

 これまでで、「あるものをあるものとして」解釈すること、その「として構造」と、その前提となる理解における「予ー構造」としての「予持、予視、予握」の構造が解明されました。この理解は、すでに考察されてきた情態性とならんで、現存在の根本的な存在様態です。ハイデガーは、内存在の考察の基本的な構成を示したところで、<そこに現に>であることを等根源的に構成する2

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『存在と時間』を読む Part.33

  第34節 現ー存在と語り。言語

 これまで、情態性と理解、解釈についての考察が行われてきました。この節で、現存在の〈そこに現に〉の実存論的な構成の第3のカテゴリーである語りと言語のテーマが登場します。「語り」こそが、情態性と理解とならぶ、現存在の世界内存在の実存カテゴリーなのです。

Die Rede ist mit Befindlichkeit und Verstehen existenz

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『存在と時間』を読む Part.34

   B 〈そこに現に〉の日常的な存在と現存在の頽落

 さて、ここからは第5章のB項に入ります。これまで内存在の〈そこに現に〉の実存論的な構成としての「情態性」「理解」「語り」が考察されてきましたが、これらは世界内存在の開示性に含まれる実存論的な構造でした。これに注目することは、現存在の実存に注目するということであり、ある意味ではその日常性から目を離すことでもあります。現存在は日常性においては世

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『存在と時間』を読む Part.35

  第36節 好奇心

 現存在の頽落の存在様式の分析の第2の視点は、実存の3つの根本的な存在様態のうちの「理解」の頽落した様態を、「まなざし」という視点から分析するものです。

Sicht wurde im Hinblick auf die Grundart alles daseinsmäßigen Erschließens, das Verstehen, im Sinne der genuin

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『存在と時間』を読む Part.36

  第37節 曖昧さ

 節のタイトルにもあるように、現存在の日常性における第3の頽落のありかたが、「曖昧さ」です。曖昧さは、「語り、理解、情態性」という3つの契機のうちの「情態性」が頽落したありかたです。

Alles sieht so aus wie echt verstanden, ergriffen und gesprochen und ist es im Grunde doch nich

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『存在と時間』を読む Part.37

  第38節 頽落と被投性

Gerede, Neugier und Zweideutigkeit charakterisieren die Weise, in der das Dasein alltäglich sein >Da<, die Erschlossenheit des In-der-Welt-seins ist. Diese Charaktere sind als existenzi

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『存在と時間』を読む Part.38

 第6章 現存在の存在としての気遣い

  第39節 現存在の構造全体の根源的な全体性への問い

 第2章から第5章までの分析によって、現存在が世界において示すさまざまな存在様式が解明されてきました。第2章では世界内存在一般について考察され、第3章では世界内存在を構成する3つの契機を示す概念「世界」「世人」「内存在」のうちの「世界」の概念が、第4章では「世人」の概念が、そして第5章では「内存在」に

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『存在と時間』を読む Part.39

  第40節 現存在の傑出した開示性としての〈不安〉という根本的な情態性

 前節で語られていたように、ハイデガーは現存在の根底的な情態性として「不安」の概念をあげていました。この不安についてはまだ提示されただけであり、それについてさらに考察するのが第40節の内容になります。まずは不安についての問いの提起から始められています。

Inwiefern ist die Angst eine ausge

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『存在と時間』を読む Part.40

  第41節 気遣いとしての現存在の存在

 ここで一度、これまでの分析をおさらいしながら、この節で行われる考察につなげてみましょう。

 これまで現存在の根源的な開示性として、語り、理解、情態性が考察されてきました。「語り」は現存在の知的な世界理解と感情的な気分としての情態性を根拠づけ、「理解」は現存在の語る活動と感情的な気分を支え、「情態性」が現存在の語る活動と世界の理解を可能にするのです。

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『存在と時間』を読む Part.41

  第42節 現存在の前存在論的な自己解釈に基づいた気遣いとしての現存在の実存論的な解釈の検証

 ハイデガーはすでに、人間という存在者にとって適切な存在論的な基礎を獲得しようとすることを目指すなら、特別な概念装置が必要であることを強調してきました。人間という概念を使うなら、人間についてのさまざまな既存の定義に規定されてしまうのであり、しかもこうした伝統的な手掛かりは、存在論的には不透明なものでし

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