[ミニゲーム]チームで問題解決する練習のゲーム

市中病院でリハビリテーション科専門医として組織のレベルアップに関わっています。ある年度初めに新入職員向け研修で「回復期リハ医療」をテーマに時間をもらったのですが、ただ話を聞いてもらうのも面白くないし…と思って、途中で席を離れて動き回るミニゲームを入れました。その時の話を別のところでしたら割と評判が良かったので、簡単に紹介したいと思います。

画像2

ちなみに最初にこのミニゲームをやった研修はこんな感じのスライドが出てくる、まあお気楽なやつです。対象はリハビリの療法士(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)、ソーシャルワーカー、看護師、介護職、事務員さんなど多職種で、社会人1年めが半分以上、と言う感じ。出身もバラバラで面識はできたばっかり、という感じでした。

ゲームの概要

ゲームといっても至極単純です。数分から、せいぜい10分程度あれば終わります。

下の画像のような紙きれを印刷して、「まだ見せ合わないように」と前置きをしてから、ひとり1枚行き渡るように配ります。

スライド1

配り終えたら、ルールを説明します。病院の研修ではこんな感じのスライドを出して、読み終わったら、「はいスタート!」としました。ヒントから正解の数字を当ててね、ということです。

スライド2

ルールはこれだけです。

やってみるとどうなるか?

病院の研修では、正解できたチームが3つ出たら終わり、先着順で商品があるよ!…としました。どうなるか想像つくでしょうか?

スライド3

「解けましたー!」ゲーム開始10秒くらいでさっそく最初の回答者が出ました。

「ブッブー!」です。

スライド4

算数得意な方にとっては「ウソやろ?」って感じかもしれませんが、やってみると、思った以上にこんなケースが出ると思います。

この記事では、配るカードのラインナップを最初にまとめて見せたので、簡単に見えているかもしれません。ですが、あなたがゲームの参加者で、一枚だけ紙切れを渡されたらどう考えるか、想像してみてください(まあ、それでもすぐわかるよって方もたくさん居ると思いますけど笑)。

回答例

そう、例です。答えは組み合わせによって変わるんだね!

スライド5

まあ、ネタとしては算数なんですよね。「エラトステネスのふるい」というやつです。結果を聞けば理解はできると思います。

ただ最初は自分のカードだけを見ても、どんなふうに考えていけば良いのかわからない人もいると思います。あるいは、わかっていないことに気づけない。そこで周りにカードを見せてもらうと、どんな条件があるのかわかってくるわけですね。共存できない相手がいることも、見えてくるかもしれない。

スライド6

ゲームのねらい

さて、なんでこんなゲームをやってもらったのか、という話です。まあもうほとんど種明かししちゃってますが… 

スライド7

一見とらえどころのない事態であっても、動き回って周囲と協力することで状況整理が進み、取るべき行動や必要な条件が見えてくる、ということを確認したかったんですね。

少し話題はそれますが、このミニゲームを最初に実施したリハビリ病院でやっているリハビリテーション医療というのは、多職種で知恵を出し合って取り組む仕事なんです。たとえば、「お家に帰れない」みたいな漠然とした問題を「麻痺があって歩けない(から帰れない)」みたいな状況整理を通して「麻痺を軽くして歩けるようにして帰す」、それが難しい場合は「歩かなくても良いように車椅子を導入して練習して帰す」というような具体的な解決方法に落とし込んで、実施していく。そんなプロセスです。自分ひとりで課題をクリアできることはないし、問題の全体像を見誤ることもあります(「歩けるけど記憶が混乱して迷子になっちゃうのは安全といえるのか?」)。逆に「自分だけで出来ないことを、チームの力でクリアしていく」というスタイル、チームで教え合える・補い合えることが魅力です。私はそこが面白くて、リハ医をやっています。…免許を持った専門家であるはずの新職員さんにはちょっと失礼かもしれませんが、少しでもそういう感覚を伝えたくて、ゲームの形で体感してもらったのです。

算数の話が嫌いな方にはゴメンナサイ。ただ割と簡単に実施できますし、どんな職場でもアイスブレークには使えるんじゃないかと思います。

「ゲームで研修をする」というのは私の医師になる前からの夢の一つでしたので、ささやかな一歩でしたが個人的には嬉しい出来事でした。今回は伝えたいメッセージから発想したミニゲームでした(ほんとだよ!こじつけじゃないよ!)が、純粋に面白いゲームを作りたいなという気持ちもあるので、またお披露目の機会があったら良いなと思います。

おまけ

配る紙切れの元ファイルをPDFでも作ったので、使ってみたい方がもしいらっしゃったらどうぞ。

おまけ2

ボードゲーム好きとして、たま〜にですが、Twitterでもゲームの話をしています。(最近はリハビリとか産業医学とか餃子の話のほうが多いですが…)


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