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海外の仕事は日本と比べてゆるいのかきついのか?ー研究職の場合ー

今回の記事は、私の実体験から海外の仕事(研究職の場合)が日本と比べて果たしてゆるいのかどうかについて書いていきます。お給料は?労働時間は?などの具体的内容についても触れていきたいと思います。


海外の研究職に就くまで

大学院留学

自己紹介記事でも書いていますが、私は日本でサラリーマンがやりたくなくて海外に出てきました。大学院の修士をやっているときに周りが就活をしているのを見て瞬時に自分には無理だと悟りました。同じ感じのスーツを着て、同じ感じの髪型にして、人事の心に響きそうなことをとりあえず言う。大学入試とかとっくの昔に終わったのに、今度は就職偏差値というアホみたいな物差しを無理やり作ってまたその高みを目指す。謎に厳しい上下関係。それらすべてが肌に合いませんでした。私では日本の会社では生きていくことはできないと思ったので、海外に行きました。

留学した海外の大学院では幸いにして指導教官に恵まれて、ほとんど苦労しないで博士号を取りました。指導教官というのは、会社でいうと上司にあたるのですが、私の上司は人格が神のような人で2週間に1度のミーティングで研究成果が芳しくないことを伝えても、ここを工夫するといいよとか、この人に話してみるといいよとか、ひたすら一緒に問題解決をしてくれました。

日本だと苦労することこそが美徳だという話をよく聞きますが、少なくとも私の場合それは嘘ですね。たぶん自分が過去に苦労をして今ではきれいな思い出になっているからそう言っているだけで、人生に苦労は必須ではないです。あったらちょっとした思い出というオプションがつくだけです。それを理由に部下に無駄な苦労をさせようとする上司がいたとしたら、失礼ですが僕なら頭おかしいと思ってしまいます。

話がそれますが、子育てとかも親に厳しく育てられた子供は、その子供にも同じく厳しくしか接することができないらしいです。僕はラッキーにも親にも上司にも恵まれたので、厳しくしなくても大丈夫なことを知れました。

海外の国立研究所に就職

私が就職したのは、とある国の省庁に所属する研究所です。所員は事務の人とか全て含めるとたぶん1万人くらいいるマンモス研究所です。博士号の審査を待っているときに、例の人格が神の私の指導教官が私を推薦してくれて、この研究所に職を得ることができました。運に恵まれるというのも、ゆるい人生を送るためには大事な要素かも知れません。ポジションは「ポスドク」と呼ばれるもので、5年の任期のうちに論文をたくさん書いて、大学の助教授(今話題のYale大学の成田さんと同じポジション)に応募するのが王道パターンです。

話はそれますが、成田さんみたいに超一流大学の助教授(英語ではAssistant Professor)というのは実は終身雇用ではなく、だいたい5年の任期のうちに顕著な業績を上げて初めて准教授(Associate Professor)に昇格して終身雇用となります。成田さんは問題ないと思いますが、他の人にとってはポスドクと合わせて最大で10年間不安定でかつ熾烈な競争に晒され続けないといけない職業です。

ポスドクはゆるい!

長々とバックグラウンドについて書いてきたので、ここで一つ結論を書きたいと思います。ズバリ、ポスドクの仕事はガバガバにゆるいです。

私の一日の実質的な労働時間は、おそらく平均で2〜3時間です。いまだにある程度リモートワークが許容されているので、朝9時とかに起きて10時くらいからまったり働いて、ゆっくり家でお昼を自炊して食べて、午後に軽く作業したら、だいたいそれで事足ります。夕方4時前にはいつも1時間くらい散歩に出掛けて青空を楽しむ余裕があります。

なぜこんなにゆるいのかというと、ずばり成果主義だからです。ポスドクやその他研究者にとって一番大事な成果は論文を書いてジャーナルに投稿することです。ジャーナルというのは論文用の雑誌のことで、そこに自分の論文を提出すると、大概はこんな論文ではダメだと雑誌から文句が帰ってくるのですが、そこでその文句への回答を論文に反映させてもう一度提出すると、だいたいそれでOKになって雑誌に載ります。一年に論文1.5~2本くらいジャーナルに出していれば私の分野ではグレートで、他に何をしていようと何の文句も言われません。

なので、プログラミングとかを活用して自分がサボっている間にコンピューター君が頑張って仕事をしてくれるようにセットしておけば、私は晴れて自由の身になって1日2〜3時間の労働時間で済むというわけです。

これで給料いくらもらっているかというと、2023年10月6日現在の為替レートの日本円でいうと、月の手取り額が約70万円になります。ボーナスはありません。まさにゆるい人生の極みのような労働時間とお給料だと思いませんか?笑

しかし、これには上で書いたように制限時間があって、5年以内に上に行かないといけません。上にいってもゆるいのかというと… なんといきなり真逆で日本でいう「ブラック」な業種に早変わりします。

注)日本だと「ホワイト」=ゆるい、「ブラック」=きついみたいな使い方をしますが、これは海外だと人種差別発言と取られかねないので、海外に向けて発信する場合は注意が必要です。

これより上はきつい!

ポスドクの先の助教授になるとどうかというと、一気に忙しくなります。毎週2コマくらいある授業の準備と講義、学科の会議、研究費への応募、研究室の学生のお世話などやることがてんこ盛りで、独身の人が助教授になると准教授になるまではほとんどの場合結婚できません。仕事にほぼ全ての時間を取られるからです。そんなこと気にならないくらい研究が好きで、研究をしている時間=幸せという価値観の持ち主でないと相当きついです。

成田さんとかは日本でテレビに出たりして時間がありそうじゃないかと思うかも知れませんが、それは学校がお休みの夏季休暇とか年末のクリスマス・新年休暇に時間ができるからだと思います。普通の助教授ならその時間もせっせと研究をして業績を上げて准教授に昇進できるように働いているはずです。

私の場合、残念ながらそこまで研究が好きではありませんでした。それに、運よく准教授になれたとしても、今度は教授(Professor)になるための競争があるので、ずっと息をつく暇がありません。私はそうまでして研究をしたくないし、教授にもなりたくないので、ポスドクの時点で違う道に進むことにしました。もっとゆるい人生が送れる道です。それについては、また次回の記事で触れたいと思います。

とりあえず、結論として、

  • 海外のポスドクはゆるいし給料がとても良い

  • ポスドク以上になると熾烈な競争と私生活の無さが待っているのでキツイ

ということにしておきます。では、ここまでお読み頂きありがとうございました!

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