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私が見つけた超絶遠回りな失恋相手の忘れ方

 高校の卒業アルバムを見返すタイミングは唐突に訪れる。

 それは友人に自分の学生時代を話す時だとか、同窓会の時だとか、悲しい事があった時とか…?

 今回は帰省した実家の部屋を掃除した時に出てきて気がついたら見返した。
 卒アル写真、う〜ん………1番“イモ”な時だったから、本当にダサい時の私だ。
中途半端に色気付いて、髪型も整髪剤でベタベタ…。なのに眉毛は整えてないし
共感性羞恥が働いたので、他の同級生たちを眺める。
 あ〜、〇〇は結婚したな、△△は遠くの大学へ行って音信不通になったなとか
 □□はこの頃はワルだったけど今は小洒落た喫茶店のオーナーをしてるな
 ××は捕まったって聞いたな…。
人間どうなるか高校時代だけでは分からないものだ。

 何人かの思い出して人生とは謎だと感じたところで、不意にドキッとする。


高校時代の元恋人の卒アル写真だ。

 “人生で1番影響を受けた人物は誰ですか?”って質問をたまに見る。
大概の人は、歴史上の偉人だとか、スポーツ選手、最近だとYouTuberとか
まぁ基本的には著名人を挙げがちだが、私はこの元恋人だ。
 多かれ少なかれ、誰しも元恋人に人間は影響を受けるのだ。趣味や思考
嗜好品や音楽なんかそうだ。


 つまり今の私を構築するベースを作り上げたのがこの元恋人な訳である。

当時の私は元恋人に完璧に依存した。当時は音楽なんか聴かなかったけど
恋人がロックが好きだった。それも70年代のメタル系で、元恋人の父親が
ゴリゴリのバンドマンという欲張りセットだった。
 よくライブハウスでライブをしていて一緒に見て回ったりした。 
 今もロックは好きだし”The Black Keys”みたいな古臭いのが特にお好みだ。

 アニメ、漫画も元恋人は好きだった。元恋人の家にお家デートをしに
行っては深夜アニメをぶっ通しで見たものだ。当時の私は、漫画もアニメも
嗜まずにオンラインチャット一辺倒だったので、新鮮だった。
 最近はアニメはあまり見なくなったものの、漫画は今でも買う。
最近のお気に入りは幾花にいろ先生の“イマジナリー”である。

 元恋人と知り合った経緯から馴初めを話し出すと前編中編後編に分けなくてはならなくなるので、今回は割愛する。


 別れた理由は高校卒業して遠距離恋愛になったからである。

 高校を卒業して元恋人とはお付き合いを続けていたが、進学で電車で
片道3時間の遠距離恋愛となった。もちろん私にとっては初めての
遠距離恋愛であった。 
 遠距離恋愛を始めた最初の数週間は綿密なメールのやり取りで上手く
行くものだ。それが数が減り、ようやくスケジュール合わせて会いに行く。
折角久々のデートなのに些細な事から喧嘩になったりで、解散後もメールの
数が減り、別れを切り出されるまでが“初めての遠距離恋愛”のセオリーだ。 
 “全日本ダサい別れ方をした選手権”でならこの元恋人との別れ方は
散々なものだった。きっとベスト8入りは確実だ。
 土下座して足に縋って別れないで欲しいと懇願して駅で声を上げて泣いた。
 さながら“女々しくて”のMVの冒頭のような大失恋であった。

 ただし、別れた後もそれなりの連絡は取り、しばらく爛れた関係になったり
したのは、また別の話である。


 少なく見積もっても6年は引き摺った大失恋のスタートである。

 その後は散々だった。全く連絡を取らなくなってからも元恋人の事を考えない
日は無かった。お互いの実家と私の実家がそれなりに近かったので、帰省時は
いるのかも分からない元恋人の姿を探した。元恋人のお気に入りのお店に行ったり
とにかく“偶然の再会”を目論んでストーカーまで後一歩の行為をしていた。
 それが少なく見積もっても6年は続いた。元恋人を超える存在はあり得ない
そう信じていた。


 ただ、今思えば本当に良かったと思うのはその6年間で自分磨きもしていた事。

 “偶然の再会”を装いたかったが、ただ闇雲に会っても恐らく相手には過去の
存在にしかならない。そう思って私は元恋人への想いを引き摺った6年もの間に
自分磨きもしていた。

 無茶苦茶なダイエットをした。半年でー30kgを達成した。
 ファッション誌を読み漁ってファッションセンスを磨いた。
 自己啓発セミナーみたいなのに行ってコミュ力を磨いた。
 いつデートしても良いようにお洒落なカフェやレストランはリサーチをした。
 夜も相手に様々な意味で満足してもらえるよう、お洒落なバーにリサーチに
行ってたまたま居た気に入った人とワンナイトもしたりした。

 今思えばズレた磨き方もあったが、無駄にはなっていないとは思う。 
 “イモ”だった高校生の頃の付き合い始めと比べたら、全く別人になっていた。
実際磨きがかった私は同窓会に出席した時にしばらく誰だか分からない人が
居ると誰も声をかけられなかったというエピソードもあるくらいだった。



 ラブストーリーでは無いけども、出会いは突然に 

 元恋人との再会はお盆に帰省した時だった。ダイエット、自分磨きの一環で
ランニングをしている時だった。先述した通り、元恋人と私の実家はそれなりに
近かったので、意識をしなくても否応なしにランニングルートにその辺りを
組み込まないとならなかった。別にそこを通ったところで会える訳がないと
諦め半分割り切り半分だった。
 ランニングする私の向こうから歩いてくる元恋人は散歩をしていた。
やや見た目は老けたものの“あの頃”の面影はバッチリ残っていた。
もちろん私から話かけた。もう“あの頃”の事は全て忘れているよ〜何も
気にしていないよ〜、みたいなテンションで他愛もない会話をした。


 6年ぶりの会話の後は、なんの感情も残らなかった。

 少なく見積もって6年間引き摺った大失恋は、いとも簡単に終焉を迎えた。
 未練だとかそういうのは会話の際に使用した息と一緒に全て吐き出したのか
なんて思うほど何も残らなかった。



私は6年前のあなたが好きだったのかも知れない。

 私が行き着いた最終的な結論はこれである。
 別に6年ぶりに再会した元恋人が太っていたとか、そういう事は一切ない。
声が変わった訳でもない、トーンが低くなったとかそんな事もない。“あの頃”に
6年分の加齢を加えたあなたが居た。
 何がそういう結論に私を導いたのか分からない。ワンナイトをしている内に
抜けた脳細胞がそうさせたのかも知れない。無茶苦茶なダイエットの影響かも
知れない。お洒落なカフェの店主に人生について問いた時に結論づいたのかも
知れない。今となっては分からない。ただ間違いなく言えることは私が6年の間、抱き続けた“あの頃”のあなたに対して続けた自分磨きは“今”のあなたには向けていなかったようだ。


 元恋人が忘れられないって、人生においてその場に残り続けるという事。

 トランプゲームで負け続けてその場に残り続けてもディーラーが戻らなければ
一生ゲームが始まる事はない。それは“次は勝つぞ”と意気込み姑息にイカサマを
仕込んでも同じ事である。
 元カノ、元カレが忘れられないとは良く聞く話だ。ただ最低6年の期間を経て
ようやく私が行き着いた結果は、相手の事が忘れられなくても肝心の相手は
忘れているのだからその場に残り続けても何にもならないという事である。

 性格が明け透けな人なら3日くらいで到達しそうな結論に私は超絶な遠回りを
して6年を費やしたが後悔はしていない。その間に善かれにしろ悪かれにしろ
様々な体験や経験、人生観を学ぶ事が出来た。


今、元恋人を引きずっている人は自分磨きのチャンスの中にいる。 

 個人的には色んな世界、様々な人と接する事をお勧めする。人と接するのが
苦手であればそういった方々向けのセミナーがテレビ局なんかでやっていたり
するので、受講をしてみたりしたらどうでしょう?セミナーに行く服が無ければ
ファッション誌を読んでみたり、何の本を読めば良いか分からないなら造詣が
深そうな友人や知人に聞いてみよう。お金があるならカフェやバーに行くのも
吉である。
 誰かに想いを馳せてわらしべ長者よろしく、人と接する間にもしかしたら
あなたは次のステップに足を踏み入れているのかも知れません。

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忘れられない恋物語

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