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今ではプロ顔負けの写真家、ベトナム人エンジニアのTさんの人生を変えた「沖縄」

沖縄の海に感動

ドヴァのICT Software Services Division(開発部)で、シニアエンジニアとして新しいサービス開発にまい進するTさんは、日本での生活も通算18年となった。

今では横浜・みなとみらいに通勤する日々を送り、大都会での暮らしもすっかり板についた。けれども、かつてTさんが母国・ベトナムを離れ、最初に出会った日本は、東京でも大阪でもなく、「沖縄」だった。

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2000年10月、琉球大学の大学院で音声合成システムを研究するために来日した。初めて沖縄の地に足を踏み入れたときの感動を、Tさんははっきりと覚えている。

「うわあ、と感嘆の声を上げることしかできませんでした。今まで目にしたことがないほど海が青く、透き通っていたんです。ベトナムにも美しい海はありますが、私の地元の北部にはなかったから。言葉にならない感動とは、こういうことを言うのだなと思いましたね」

沖縄の街へ出ると、触れ合う人々は皆優しく、心が温かかった。琉球王朝時代から交流が盛んだったこともあり、ベトナムの風土と似ていて居心地が良かった。そんな沖縄をTさんはすっかり気に入った。

修士課程を終えて、一度ベトナムに帰国した後、再び琉球大学に進学したのも、Tさんが沖縄を愛してやまなかった証左であることは間違いないだろう。

プロ顔負けの腕前

Tさんの趣味であり、いまや特技といっても過言ではないのが「写真撮影」である。友人や知人からの撮影依頼も買って出る。どこかへ出掛ける際には、カメラを肌身離さず持ち歩く。このように人生の“道楽”となった写真撮影を引き寄せたのも沖縄だった。

「最初は沖縄の海を撮ってみたいと、初めてデジタルカメラを買ったんです。そこからどんどんのめり込んでいきました」

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現在の愛機はニコン「Df」。加えて、望遠、広角、マクロや魚眼などあらゆる種類のレンズを買いそろえ、シーンに応じて使い分けている。これらをフル活用して、日常生活や旅先で目にした風景をどんどんカメラに収めていく。

オフィスのある横浜・みなとみらいもお気に入りの撮影スポットだ。例えば、ランドマークタワーの麓に展示されている国指定重要文化財の帆船「日本丸」の写真は、しっかりと三脚を立てて、長時間露光撮影した渾身の一枚だ。

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ほかにも街の夜景や、月のクレーターがはっきりと映る写真など、プロ顔負けの作品の数々をきちんと現像して、コレクションしている。社内のメンバーに見せると、みんな口をそろえて「すごい!」と驚いてくれる。これもTさんのささやかな喜びである。

日本の祭りに魅せられる

Tさんが沖縄で得た人生の楽しみはもう一つある。「祭り」だ。

「(沖縄の伝統芸能である)エイサーを見て、祭りに興味を持ちました。ベトナムにも祭りはありますが、日本の祭りはスケールが違います。準備を綿密にするし、演者たちは命をかけている感じがする」

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祭りのコンテンツの魅力もさることながら、神輿の細工や衣装の縫製といった職人の高い技術にも目を丸くする。祭りを通して日本の伝統文化の奥深さをTさんは実感した。だからこそ、職人の後継者不足を憂いている。

「このままでは日本の伝統的な技術が途絶えてしまいます。今は日本人ではなく、外国の人がそれを受け継ごうとする動きも出ていますが、個人的には、ぜひ日本人に守り抜いてほしいと思っています」

外国人だからこそ感じることのできる、日本の価値の本質なのかもしれない。

祭りには興味があるものの、まだ全国の祭りを見て回る機会は得ていない。特にコロナ禍では地域をまたぐ移動も難しい。もっぱらインターネットなどで検索し、PCモニタ越しに眺めることしかできない。

ただ、いずれ情勢が落ち着けば、日本中の祭りを巡り、その情景をカメラに収めたい。そんなことを夢想しながら、手入れを欠かさないカメラやレンズとともに、Tさんはその日がやって来るのを待ちわびている。

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