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白子CFOがメンバーに対して「指示を出さない」理由

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前回の記事では、ドヴァでCFO(最高財務責任者)を務める白子貴章さんのキャリアを紐解き、その後のビジネスパーソン人生の糧になった経験について話を聞いた。

そんな白子さんがドヴァの取締役になって1年。どのような改革を進めてきたのだろうか。


白子さんが起こしつつある改革

現在取り組んでいるのは大きく3つある。1つ目は「見える化」だ。

「経営や業務の可視化、考え方の言語化などを推し進めると同時に、やったことの振り返りをきちんと行うべきだと社員に伝えています。そうすることで、お尻を叩かなくても自ずと改善できるようになるからです」

例えば、この半期で良かったこと、悪かったことを振り返り、今後どのように変えていくのかを明確にする。従来は個々人が暗黙のうちにやっていたことをすべて紙に書き出し、定量的に可視化するようにした。

「過去をしっかりと振り返って反省し、未来に向けて修正するためのプロセスを作りました。社員の皆も面倒くさがらず、真面目に取り組んでいる印象です」

全員で新人を育てる環境に

2つ目は、部署の垣根を超えて議論する場を作ったこと。各部門のメンバーが集まり、それぞれの状況について数字でも施策でも振り返るようにしている。その上で見えてきた課題に対してどう対処していくのかを、自部署だけでなく他部署のメンバーも一緒に考える形にした。

白子さんによると、今までのドヴァにはそういったスキームがなかったという。

「みんな個別に自分の課題を解決しようとしていましたし、業務に関する承認も社長と1対1でやっていました。だから隣の部署のメンバーが何をやっているか、ほとんど見えていませんでした」

部門横断的な場所を作ったことで、社内の風通しが良くなり、情報伝達が活性化した。とりわけ新人社員の育成には効果が出ているそうだ。

「当社の新人はローテーションで各部署を回るのですが、例えばA君の仕事ぶりや人物像、強みや弱みなどを部署間で共有し、どういった対応をすればいいかなど、関係者全員で考えられるようになりました」

効果的なのは新人育成だけではない。以前のように社員一人一人が自分の仕事だけを見ていれば良かった状態から、周囲のことも気にする必要性が出てきたため、結果的にオープンなコミュニケーションが各所で図られるようになりつつある。

「答え」よりも「質の良い問いかけ」を

3つ目は、指示出しをしないことである。これは、全社的な取り組みというよりも、白子さんのマネジメントスタイルに関わるものかもしれない。メンバーに対していきなり答えを教えるのではなく、彼ら、彼女らの行動変容を促す「質の良い問いかけ」を実践する。

「指示を出さず、問いを投げて考えてもらいます。願わくはそれによって自分自身でやり方を見つけるのが、本人にとっても一番気持ちいいはず」

具体的なエピソードとして、経営状況を見える化するための資料を財務担当者に作ってもらった時のことを挙げる。

白子さんによると、質の良いIR資料とは、ただ数字を全部並べればいいというものでは当然なくて、経営者が本当に見たい情報をできるだけ集約して、かつシンプルに見せられるかが重要だという。

しかし、担当者は最初、どういう観点で考えればいいのかわからなくて、他社のIR資料を見ていたが、非常に仔細な数字を記載している会社もあれば、ビュレットポイント(箇条書き)で要点だけしか書いていない会社もあった。そこで担当者は白子さんに「どれを真似ればいいか?」と尋ねたという。

それに対して白子さんは、「真似ても意味がない。あなたが経営者だったらどうしたいか?」「あなたはどんな情報を見たいのか?」と問いかけた。すると担当者からスラスラと意見が出てきたのである。

「最初から答えを言うのは楽だけど、それだと、なぜこの答えに行き着いたのかというプロセスやロジックが見えなくなってしまいます。実際にはそれまでのプロセスを知ることのほうが大事。そこに対して腹落ちできれば、こちらが提示したものよりも良い答えを自ら作り続けられるようになります」

「白子さんの答え」は必ずしもその人にとっての正解とは限らない。自分なりの解を見つけ出してほしいという思いがある。

これも思考訓練で、やればやるだけスキルアップする。願わくは全社にもこうした機会を広げることができればと白子さんは考える。

誠実さに勝るものなし

仕事をする上で最も大切にしていることは何か——。

最後にこの質問をぶつけてみたところ、白子さんは「誠実さ」と即答した。そう思うようになったきっかけはあったのだろうか。

「これは自分に対する戒めでもあるのです。金融の仕事をずっとやっていると、自分にとってカネが儲かるかどうかという視点になりがち。でも、それが最優先ではダメだと思っています。もっと大事にするべきなのは、誠実に相手と向き合い、信頼を得ることです」

仕事を長く続けるにつれて、いかに信頼がものをいうかが身に染みるようになった。それがよりこの考えを強固にしている。

「いろいろな会社を渡り歩いてきましたが、振り返ってみると結局、それぞれのステージで信頼関係を結べた人たちが今の自分を支えてくれています。これは明らかです。経営コンサルをしているお客さんも、元々の知り合いだったり、友達の会社だったりと、何だかんだで関わりのある人たちでした。そうした状況ができたのは、誠実に、真摯に、本音で相手と向き合ってきたからだと思います」

これまで誠実さを強みに、仕事に打ち込んできた白子さん。ドヴァでも信念は変わらずに、いかんなくその手腕を発揮してくれることだろう。

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