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203/366 【変態的な天才】 三体第3部 「死神永生」

世の中には2種類の人がいる。好物から食べ始める人と、最後まで残しておく人だ。

一口だけ好物を食べてから残りを最後に残すというハイブリッドもいなくはないが、これも最後まで残す人に入れても差し支えないと思う。

わたしは、最後まで残す派だ。大好物に向けてテンションを上げていく。最後にお皿にたった一人残っている大好物と待ち合わせる。そして盛り上がったまま食事デートは終わる。

時折ヘマることもある。美味しそうなお土産を頂いた時、嬉しさのあまりに取っておき、気づいたら賞味期限が切れていた、なんてことが頻発する。

どんなタイミングで出せばいいのか分からなくて、手にとっては仕舞い、また別の日に取り出しては仕舞い、を繰り返していることもある。

そんなに悩むならとっとと食べたらいいのに、珍しいものであればあるほどなかなか開けられない。頂いた嬉しみをなるべく長く感じていたい。愛に対する貧乏性ってこういう姿を言うのだろう。

これは何も食事に限ったことではない。

今日、ずっと残しておいた「三体」の3巻目を読了した。

1冊目、2冊目「暗黒森林」を夢中で読んだのち、3冊目をなかなか読み始められなかった。これを読んでしまったら物語が完結してしまうと思うと、干しシイタケ星人を含めたあの世界を惜しんでなかなか読み進められなかった。

1巻目の感想はこちら。「暗黒森林」書いていなかったのか!銀英伝の話をした時に2巻目との比較はあるけれど、それだけやったか... 不覚。

んで、3巻目。邦題は「死神永生」。来年出版予定。

英語版はこちら。

...凄かった。(語彙力)

「三体」を読んだ時、「なんだこの人天才か?!」と驚愕した。だからこそ、2巻目に入る時、一冊目を超えるなんて無理くない?と思っていたら、いとも易々と期待値を超えていかはった。

むしろ、1冊目はまるっと2冊目の布石だったことに慄然とした。(冒頭の「アリンコ」部分については初見時、「これはあかん」と思ったことは内緒にしてて。後から判明するその布石っぷりに、声にならない声が漏れまくったことは漏らしてOK)

この段階で爆上げな期待値を3巻目でどう超えるのか?!2巻で風呂敷、広げすぎたんじゃなーい?なんて思った方。ご安心ください。

さらに風呂敷は広がります!

宇宙はどんどん拡大していくし、トライソラリスを遥かに凌ぐ文明も生命も出ていらっしゃって頭の中でハレーションが起こります。

2巻まではなんとかついていった物理のお話もエスカレートしていきます。後半はかなり物理部分は流し読み。「高次」の話は2巻から出てきましたが、そこに光の速さと時間の流れの関係性が絡んできて、脳みそがウニ。

“Weakness and ignorance are not barriers to survival, but arrogance is.”
弱さや無知は生存の障害にはならない。なるのは傲慢さだ。

壮大な物語だけれど、個人に当てはめて考えることもできるし、「生命体」に広げて考えることもできる。

本作の主人公は女性科学者。彼女は人類の存亡を賭けた判断をいくつかしていく。その一つで全てが変わったなんて言えないけれど、彼女自身はその判断が正しかったのかをその後ずっと悩み続ける。

我々にもそういうところがあるはずだ。文明を背負っているわけではないけれど。

それでもやっぱり人生は待ったなしで進んでいくし、宇宙は拡大し続け、あるいは収斂して特異点に向かっていく。特異点を超えたらまた新たなエデンの園が生まれるのかも知れないし、そうではないのかも知れない。

そんなことは分からない。

“Time is the cruelest force of all.”
時は、最も残酷な力なのだ。

最後の段落の破壊力がハンパない。こんな風に3部作が終わるとは、想像もしていなかった。ページをめくったら後書きが登場して、ようやく認識したほどだ。

どんな脳みそしてるんだろう、劉慈欣。絶対外宇宙と交信してるに違いない。太陽にもニュートリノにも依存せずに。

「宇宙」と「時の流れ」という壮大な話なのに、読み終えた瞬間に向かいたくなるのは、屋久島とか西表島などの緑深く、水が豊かな島だった。

そろそろ自然に帰りたいな。

***

ところで今回、好物を食べるに至ったのにはもう1つ理由がある。

デザートが届いたからである!

デザート食べるには、メインディッシュ食べとかなきゃあかんやん?よってこれから取り掛かるのです。むっふっふ。

明日も良い日に。

こちら、13日目!






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