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【品とは】 通し狂言 「義経千本桜」

古今東西、様々な形でかかっている「義経千本桜」だが、今回は、歌舞伎。ちなみに今年の春には、文楽でもかかっていた。その時の感想は、以下。

上記の記事でも書いたが、この作品は、通し狂言であろうと、通し文楽であろうと、全幕一気に見ようと思うと、かなりな長尺となる、ワーグナー的スペクタクル作品である。

荒唐無稽で、外連味もある本作なのだが、空想と妄想と幻想をフルフルに発揮させた上で、史実とくんずほぐれつのごった煮に状態に作り上げるのは、遥かな昔から人間固有の才能なのだな、と思わせてくれる。

文楽では2回見たことがあるのだが、歌舞伎では初めて。人形ではなく、人間が全てを演じたら、一体どんな化学反応があるのだろうとワクワクしながら見に行った。

折しも、千秋楽。お日和もよい。お着物姿の方々も多い。梨園の奥様方もいらっしゃったそうだ。お誘い頂いたメンターさんに教えて頂いた。(私は全然分からない)

千秋楽Cプログラムは、道行初音旅と、河連法眼館。

静御前が、初音の鼓を預かる道行の場面と、佐藤忠信に扮して静御前に付き従っていたキツネの正体がバレたものの、その生い立ちに感動した義経が、キツネに鼓を与えたところ、狐がそのご恩返しにと、義経の追手を神通力でなぎ倒し、彼の東北への逃避行を可能にした、という2つの名場面。

菊之助さんの舞は、水のようだった。流れるように、優美にたおやかに身体を滑らせていたかと思えば、ぴたりと止めたり、緩急をつけたり、力強さもそこここで見せる。
しかも、上品。

だからこそ、お狐さんの性格も上品だった。時折、鼓となった両親恋しやで、若い狐が顔をもたげてしまう感じも、高貴な生まれの坊ちゃんのようだった。

ご恩返しも、雅なご恩返しになっていた。

コメディリリーフ的なギャグシーンもあり、緩急のあるプログラム構成だった。
唯一残念だったのは、分かりやすさを重視したのか、ストーリーがかなり簡素化されていて、スペクタクル感が薄れていた。

初見の人でも分かりやすく、という狙いだったのかも知れない。

文楽の方が、お人形である分、「常識」を易々と超えられるのかも知れない。コアファンしか来ないから、より突っ込んだ筋立てを追えるのかも知れない。

これはこれで心から楽しめたのだけれど、より一層、文楽が好きだと思えたことが、もしかしたら一番の収穫だったかも知れない。

これで、国立劇場は、リニューアル工事に入る。出来上がるのは、2029年。かなり先だ。どんな劇場になるのかな。柿落としは何になるのだろう。あっという間、なのかな。なのかもな。最近、一回寝たら、1週間くらい過ぎてしまっている感覚だから。

明日も良い日に。

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