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414/1000 【時空を超えて】 木版画浮世絵が生まれる瞬間

浮世絵木版画の摺師さんの実演、ご覧になったことありますか?

お仕事させていただく度、職人さんたちの心の姿勢に、自分の背筋が伸びる思いがします。

静かな佇まいの中に、膨大な熱量を秘めておられます。

研ぎ澄まされているのに、ギラギラしていない。

触れたら斬られるとは思いませんが、話しかけるのは躊躇われます。

全身から放たれる、静かに張り巡らされた集中力。

居合いで、お互いに構えている時のようなもの?とも思ったのですが、あれは命のやりとりだから、少し違う。

江戸時代の絵師と、時空を越えたやりとりをしている感じ。

そんな柔らかで繊細で、触れたらすぐに霧散してしまいそうな会話、おいそれと口を挟めないじゃないですか。

でも出来上がった版画は、大胆さも備えているのです。絵筆1本で生み出されるグラデーション作業が必要とする繊細な力加減なんて、微塵も感じさせません。あんなに繊細な作業から、こんなに大胆なボカシが生まれていく。コトバは矛盾しているけれど、こうとしか言いようがありません。

そして出来上がった復刻版画作品には、江戸の方々も楽しんだであろう風景や美人さんが立ち上るんです。

それを間近で見る度に、仕事を忘れて「ほーーーー」「はぁ〜〜〜〜〜」っとなるのです。

昨日、その木版画の摺師さんによる実演動画が東京博物館さんのYoutubeサイトで公開されました。

コロナ禍だからこその試み。浮世絵が生まれる「音」をお楽しみ頂けるのは、刷り実演の醍醐味です。途中で挟まれる説明も、毎度毎度学びが深いのです。

公開は月末まで。

出来上がった木版画は、そもそもは大量生産されたもの。だから「もの」自体を目の当たりにする機会は多々あります。

でも、この佇まいと音とを含めたプロセスを見る機会は、なかなか無いと思うのです。

コロナが明ければ、お客さんをちゃんと入れた有観客の実演もきっと再開されるはず。人間国宝が梳いた和紙ついさっき摺った版画を手に取ることができるのです!

今しがた水彩絵の具をキメこんだ(繊維の中に完全に摺り入れることをこう言います)ばかりの和紙なのに、触れても絵具は指に一切付きません!摺り上がったばかりの木版画を何枚重ねても、色移りは一切ないのです。なのに、和紙はまだしっとりしています何度見ても不思議。

何色重ねてもずれない摺師の技もびっくりだし、その連綿と連なる歴史上の絵師との対話のような集中力も感動です。

少しでも興味を持って頂けたなら、動画をぜひ。今月末までの公開です。

そしていつか、本当の実演も見て頂きたい!

明日も良い日に。


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