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【ロック魂とは】 近松名作集 「国性爺合戦」

定期的に補充必須、スペクタクル文楽のお時間がやって参りました。
今回は、近松名作集のなかの、「国性爺合戦」こくせんやがっせんです。

近松作品といえば、今回の名作集にも入っている「女殺油地獄」やら「曽根先心中」やらの方が有名でしょうが、私的には、さにあらず。

文楽は スペクタクルが 最高death。(字余り)

今回の演目、「国性爺合戦」は、明の忠臣だった鄭芝龍ていしりゅうが、奸計により、日本に亡命し、日本人と結婚し、和藤内わとうないという男子をもうける。和藤内は父から軍法を学んでいるが、その親子の元に、唐土で起きたクーデターで亡命してきた明の皇帝の妹が現れ、助けを乞う。

亡命した鄭芝龍には、唐土に残してきた娘が1人おり、彼女は甘輝という武将の妻となっている。ピンチに陥っている皇帝を助けるため、その娘の夫を味方に引き入れるべく、親子は明へと旅立つこととなる。

その道中の物語なんですけどね…

これ、キングダムじゃね?

時代は違うんですけどね。でも、舞台セットも、文楽では珍しい唐風のセットなのです。お衣装ももちろんそうだし、髪型もそう。

甘輝なんて、名前からして、もはや王毅の生まれ変わりってことで良くない? 唇魔神ではなかったのが残念すぎる。

さてこの国性爺合戦。

1つ目の目玉は、「千里が竹虎狩りの段」

名前の通り、和藤内が明国で虎狩りをするんですけどね。その虎がね…

マンパワーなの!!!!!!

フッカフカな着ぐるみの虎がいきなり舞台に現れるの!!!!!

いや、文楽って古典ですからね。やっぱ虎だってお人形で出てくると思うじゃない?それがまさかの着ぐるみでした!

出てきた瞬間大爆笑。いつもは静かなお客さんも、これは流石に笑ってました。良かった、みんな起きてたw

しかもこのどでかいフカフカな虎を鎮めるのに使うのが、お伊勢のお札!お伊勢さんのご加護、どんだけや。

最終的には、その虎を使って唐土の追手を倒し、味方に付けるのだけれど、味方になった証に、彼らの髪型を切り落とし、月代にして、日本風の名前もつけていく。

でも、その名前が、カボチャ右衛門とか、南京兵衛とかなのです。今これ書いたら、ポリコレでアウトになりそう。ただ、日清戦争の頃だって、そういう人種差別的なことはあったのだから、差別という行為は人類のDNAのどこかに深々と刻み込まれているんじゃないか、と思えてならない。

その後、ようやく甘輝の元に辿り着いた和藤内親子。無事娘ちゃんにも会えたのだけれど、その旦那さんの将軍は事情を聞いて、妻をいきなり殺そうとします。

曰く、「味方をしたいが、妻の父子から聞いて情にほだされて味方したなんて思われるのは武将の恥。だが妻が死んでいれば、そんなそしりを受けずに済む

なんだそのウルトラCな理屈は?!

でも、そういう不条理がごくごく普通の「常識」だった時代なのです。エンタメは、常に世の中の価値観の鏡。先日の木ノ下歌舞伎でも思ったけれど、男尊女卑的な価値観は、どうも根が深いように思えてなりません。

この甘輝、甘輝の妻、和藤内、和藤内の母で繰り広げられる3段目が、2つ目の目玉なのですが、これがもう…

ロックでした!!!!!!

ここは武道館か?!と思うよな魂の咆哮を上げていたのが、今日のお目当ての竹本織太夫さん

織太夫さんの太夫は、他とは全然違うのです。空気がビリビリと振動する。言葉が分からなくても、何かが伝わってくる。しかも凄い圧で。

鶴澤藤蔵さんの三味線も、これはエレキか?!ってくらいに泣いている。さらに、2人の感情が一体になった、コールアンドレスポンス合戦たるや!

例えて言うなら、聖飢魔IIのミサでした。(注:行ったことない)

目の前で繰り広げられているのは、男性のため、お国のため、皇帝のために命を投げ出そうとしている女性2人の決意の物語。

それを支える聖飢魔II。

これで脳内ハレーション起こさない人、いるのだろうか。

文楽なんて、つまらない!と思っている人がもしいるならば。このスペクタクル文楽「国性爺合戦」はぜひ体験して欲しい。

まじ必見。

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明日も良い日に。

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