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344/366 文楽鑑賞教室のススメ

面白い演目があるとお声がけくださる先輩から今年もお声をかけて頂き、行ってきました国立劇場。

今回は、文楽鑑賞教室と銘打った企画の中の「芦屋道満大内鏡」がお目当てです。

白狐と人間の間に生まれた「半妖」である、という安倍晴明誕生にまつわる伝説のお話。

お目当ての演目は一番最後。今回は「2人禿(かむろ)」がまずあって、文楽の解説を挟み、最後に「芦屋道満大内鏡」(長い...)となるのです。

文楽の魅力の解説で、太夫が同じセリフを「おばあさん」「青年」「若い女性」と性別と年齢で演じ分けてくださったり、さらに「武士」といった「属性」が入るとどうなるかも実演して下さった。

同じセリフを使っての演じ分けを生で聞くことはまずないので、非常に面白かった。考えてみれば、太夫って声優の元祖ではありませんか!

そう考えると文楽とは、人形という人間の身体を通さない無言の表現に、太夫という声優が声と息吹を与え、さらに楽器類が感情表現を付加してドラマを盛り立てていくという、様々な要素が自然に備わった総合エンタテインメントと言える。

凄くない?!

それなのに、歌舞伎や能に比べると、伝統芸能としてさほどフィーチャーされていない気がするのです。

もったいなーい!

今回の「2人禿」にしても、若い女性の手の動きの何とたおやかなこと!指とか動かない状態なのに、手が美しく「動いて」見える。表情も然り。目の開閉はあれど、基本お人形の顔は動かない。それでも表情の移り変わりが分かるのだ。

例えば、「芦屋道満大内鏡」で、女房の「葛の葉」(実は白狐)と本物の「葛の葉」姫が鉢合わせをするシーンがあるのだけれど、そこで「葛の葉姫」は「途方に暮れてしまう」のです。

台詞はない。太夫もそうは言っていない。でも、「途方にくれた」のが分かるのです。そして、ああ可哀想だなあ... この人も悪くは無いんだよねえ... と心を寄せてしまう。

文楽といえば、「心中もの」が多いから、という理由で避けておられる方々もいるかも知れませんが、さにあらず。

今回の「芦屋道満大内鏡」は、故高畑勲監督の「かぐや姫の物語」や、「鶴の恩返し」等の「漫画日本昔話」的な要素有り、ちょっと連獅子っぽい歌舞伎の派手な早替え要素あり、でも親子の人情噺でもあり、というとても多面的な演目です。

喧嘩の最中で部屋の中のものを手当たり次第に投げつけるというアニメ的なシーンもあり、「こいつは本当に俺の女房か?」と確認すべく、女房葛の葉の着物の端をこっそりまくって見るという、軽快エロもちらりとあったりと、軽やかなギャグもちょいちょい盛り込まれています。

前にも書いた「妹背山婦女庭訓」のようなワーグナーも真っ青な大爆笑演目だってあるのです。

お人形の艶かしい動きだけでも一度はどうぞ!日本が誇る伝統芸能の一つだと思います!

明日も良い日に。




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