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【魔拳、狂ひて】構え太刀 七
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三兄弟が渋谷で起こした惨劇から、今日で十日が経過していた。
時刻は丑三つ時。薄暗い闇夜に、鳥や虫の鳴き声が騒がしく木霊していた。
「ああああああ退屈だな畜生ォ! 何で退魔師が誰も来ねェんだよ!!」
「待てども待てども現れん! 退魔師は腰抜けしかおらんのか!!」
「……騒がしいぞお前達。少し静かにしたらどうだ」
子供のように癇癪を起こす剣次郎と剣三郎を、剣一郎が落ち着いた声
【魔拳、狂ひて】構え太刀 六
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「──あああああああああああああああああッ!!」
己を苛む悪夢から逃れるように、斉藤正弘は絶叫を上げながら、ベッドから跳ね起きた。
両目を見開き、全身の毛穴からは、べっとりとした嫌な汗が噴き出していた。
「はぁ……はぁ……っ」
荒く息をしながら、ゆっくりと目を閉じる。
平静を取り戻すのを待ってから、おもむろに窓の外を見た。
外はいつの間にか、土砂降りの雨が降り注いでいた。
時折