【34】自己進化型組織を作るステップ(1)
生物の進化成長というものをベースに考えていくと、強いチーム、組織を作る鍵は「自己進化型」を目指すことだ、というざっくりとした総論を【31】と【32】でお話ししました。
今回は「では、どうしたら自己進化型組織を作れるのか?」という各論を掘り下げていきたいと思います。
その前に、「自己進化型組織」について簡単におさらい。
「自己進化型組織」は端的にいうと、「多様性:高い」「選択圧:高い」という状態の組織のこと。
表にすると、④の部分にいるのが自己進化型組織です。
ただ、この④の状態を実現できているチームや組織は現状ほとんどなく、多くの企業は、「多様性:低い」「選択圧:高い」という①の状態にあります。
では、①の状態の企業では、具体的にどんなことが起こっているのか、そこから自己進化型組織を目指すためには何が必要なのか、動作学のレンズを通して見てみましょう。
意見を言えないのは本能レベルで起こっている
企業において、高い多様性のある状態とは、多種多様な意見がその組織内に存在している状態を言います。
意見というと「しっかりリサーチをして、根拠も提示できるような発言」というようなイメージがありますが、ここで言う意見というのは、「個人個人が自分の感じたことを言う」ことと言い換えて差し支えありません。
つまり、立派な見解なり、深い考察である必要は全くなく、その組織に属する個人個人が自分の好き・嫌いといった感性、価値観を表明することができている状態が、多様性の高い企業ということです。
同じことを、個人の観点から見たら、あなたが感じたことを素直に表明することが、その組織の多様性を高めることになるということになります。
ただ、これ、口で言うほど簡単ではありません。
というのも、私たち人間は、これまでの歴史の中で、社会性を身につけることで生き延びてきた生物種だから。
つまり、人間は一人ではなく数人が集まって組織を作ることで生き延びてきた、ということなのですが、その結果として、私たちは以下の二つのことが得意ではなくなったのです。
1) 多数派の意見に反論や異論を言うこと
2) リーダーに対して反論や異論を言うこと
なぜかというと、多くの場合、大多数に賛成するか、リーダーに賛成しておけば身の危険が少なかったからで、身の危険が少ない方を選択することで生き延びてきた我々にとっては、大多数と足並みを揃えること、リーダーに従うこそが安全だというパターンが本能的に組み込まれているんですね。
これはつまり、私たちが本能のままでいると、自分の意見を言わないことを自然と選んでしまうということ。
ですから、組織やチームなど人が集まる時、あえて意識しなければ、自ずと多様性の低い状態に陥るのは当然と言えば当然なのです。
意見を言えないのか、意見がわからないのか
そのようにして人が集まるとよほど意識しない限り多様性の低い状態に自然と陥るわけですが、そんな中でもみんなの力で何かの物事を押し進めていかねばならないとなった場合、どうなるでしょうか?
「リーダーに従うのが手っ取り早い」となります。
結果、組織のみんながリーダーに指示を仰ぎ、リーダーが言ったことをやることで、物事を動かしていくというような状態になります。
このような状態になると、その組織内では、リーダーが言ったことをちゃんとやれたか? リーダーが求めた結果を出したか? といったことが評価をされるようになります。
すると、どうなるか?
リーダーの指示に従っている個人個人は、自分の感性を表明できず、他人の感性で動いているわけですから、ものすごくストレスを感じます。よって、よほどの見返り(報酬)がないと続けられない、もしくは、そこにいる期限が見えていないと頑張れない、という状態になります。
一方、そんな状況でも心身を壊すことなく、指示されたことを盲目的にやり続けられる人がその組織において重宝されるようになります。
ところが、重宝されるその人たちは、ただ盲目的に従うことができるというだけで、自分の感性を求められいるわけでも、表明できているわけでもありません。そうすると、その人はやがて自分の意見がわからなくなる、自分が何を好きなのか、何をしたいかがわからなくなる、という状態になります。
冒頭で述べた①の状態、「多様性:低い」「選択圧:高い」組織で起こっているのは、まさにこれ。
リーダーの指示、トップの目指すことに応えるという選択圧に耐えられる人が組織に残っている(選択圧:高い)、しかし、そこに耐えられている人はもはや自分の意見がわからなくて、意見を言えと言われても言いようがない(多様性:低い)という状態です。
自己進化型組織を目指す最初のステップ
このような①の状態から自己進化型組織を目指すには、まず②の状態「多様性:低い」「選択圧:低い」へ移行するのが最初のステップです。
そのためには、組織を運営する側としては、①の状態では、そもそも意見を言えないだけではなく、意見がわからない人もいるということを認識する必要があります。
そして、リーダーやトップの指示を聞くことを評価するという選択圧を下げ、この組織内では自由な発想が許される、どんな意見も歓迎される、というような環境を作ること、つまり、個人個人がそれぞれのアイデアを持つことをサポートするような環境作りが求められます。
一方、組織に属する個人としては、自分の意見を持つこと、つまり自分の感性・価値観というものに耳を澄ませ、見つけ、それに従うという個人の自己の成長のジャーニーをスタートさせねばなりません。
このように、自己進化型組織を目指すにあたっては、そこに属する個人の成長が必要不可欠です。むしろ、いかに個人個人を成長させる環境を作れるかが自己進化型組織の肝であるといっても過言でないかもしれません。
繰り返しになりますが、まずは「指示に従う人を評価する」「与えられた結果を出す人を評価する」というような圧を下げ、「各個人が自分の意見を持てる」ように成長を促し、①から②へと移行することが自己進化型組織への第一歩。
そこから、さらに③④と進んでいくステップについては、次回に続きます。