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【32】新時代の組織論「自己進化型組織」とは(2)

より強い組織を作るためのカギは、組織が自ら進化する「自己進化型組織」を作ることにある、という前回のお話の続きです。

自己進化型組織に必要なのは、生物の種の進化と同様、
(1)多様性
(2)選択圧
です。

この二つのキーワード、とりわけ多様性については、昨今、その重要性が語られることも多く、特に真新しい言葉ではありません。

が、動作学というマクロ(全体論的)なレンズを通して見ると、多様性がなぜ重要なのか、背景にある仕組みそのものが見えてくるのが面白いところ。

多様性という言葉に限らず、組織改革やチームビルディングにおいて、近年注目されているさまざまなキーワードは、動作学的に見れば全て「自己進化型組織」を目指すことに関わっていると言っても過言ではないんです。

一体どういうことか? さっそく見ていきましょう。

自己進化型組織における多様性

多様性というと、人種、年齢、性別などの多様性を思い浮かべることが一般的だと思いますが、組織づくりにおける多様性はそこではありません。

組織においての豊かな多様性とは、さまざまな物の見方や考え方、意見が多様にある状態。

つまり、多種多様な物の見方、考え方、意見が、それぞれ存在を許されている状態が、多様性のある組織、ということです。

多種多様な物の見方、考え方、意見が許されている状態というのは、言い換えるとメンバーの誰もが安心して発言や行動ができる環境ということでもあり、この環境のキーとなるのが「心理的安全性」と言われています。

「心理的安全性」は、かのGoogle社がかつて「成果の出るチームが持つ共通点の一つが心理的安全性だった」というような調査結果を発表したこともあって、近年の組織開発の分野では重要視されているキーワードでもあります。

動作学的に言えば、心理的安全性のある職場環境は、職場環境の多様性を育むために重要であり、職場環境の多様性が育まれると、その職場は組織としてより強く進化しやすい状態になる、という仕組みなんですね。

自己進化型組織における選択圧

自己進化型組織に必要なもう一つの要素は、高い選択圧です。

自然界の生物の進化においては、選択圧は、自然環境の変化などといった外部環境の変化によってもたらされますが、組織、とりわけ自ら進化する自己進化型組織においては、外部の環境に依存するのではなく、組織の内部の環境を選択圧の高い状態にしておくことが求められます。

組織内部の選択圧を高くすることの例は、たとえば、その組織のミッションや目標、経営哲学などを明確に共有すること。

要は、ミッションや目標、経営哲学に賛同する人だけが残るように、組織としての文化、哲学、スタンスを明確に共有しておく、ということです。

先に述べた豊かな多様性は、物事を前に進めていく推進力のようなもので、選択圧はその推進力をどこに向けていくか、方向性を決めるベクトルのような役割とも言えます。

多様性を育むために心理的安全性を大事にすると自由を認めざるを得ず、そうするとチームや組織がまとまりにくいのではないかという不安の声をよく聞きますが、選択圧が高ければ、多様性がある中でも目指す方向は定まっているという状態が可能になるわけです。

自己進化型組織へ生まれ変わるために

ここで一つ重要なことは、組織が自己進化型になるためには、多様性と選択圧、どちらも高いことが必要だけれど、高くするのは多様性→選択圧という順番でしかできないということです。

想像すればわかると思いますが、そもそも選択圧が高いと、多様性は育まれにくいんですね。

ですから、多様性が低く、選択圧が高いという、一般によくあるチームや企業が自己進化型になるためには、今の状態にただ多様性をプラスすればいいということではなく、まずは今の選択圧を低くし、多様性を十分に高めてから、その上で選択圧を高めるという順序で進める必要があります。

ですから、まずは一旦、視座を高くして、ご自身が関わっているチームなり組織なりの多様性と選択圧は今どういう状態かを見極めること。

そして、今の状態がうまくいっていないのであれば組織内に心理的安全性を作り出し、多様性を豊かにする、ということを始めてみることをおすすめします。

このように動作学というレンズを通すと、昨今よく言われる「多様性」がなぜ重要なのか、「心理的安全性」がなぜ求められているのか、変化する時代についていくために「進化」を続けるとはどういうことか、といった一つ一つ異なって見えるピースが、それぞれ関連しあう一つのシステムとして見えてくるようになります。

それこそが動作学の醍醐味であり、強みであり、このマガジンを通して多くの皆さんにお伝えしていきたいことでもあるのです。