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資本主義を超える思想@大西つねき氏Part1

「資本主義を一言で言うと『金利』ですか?」
と訊くと
「いや、所有だよ」
と即座に返答された。

私が質問した相手は大西つねき氏である。

大西つねき氏は資本主義に変わる思想を持っている偉大な人だ。

資本主義とは

市場経済+限りない拡大と成長を目指すシステム

である。
よく「資本主義は終わる」というと
「共産主義がいいの?」となる。いや違う。
共産主義は

計画経済+限りない拡大と成長を目指すシステム

であり、「限りない拡大と成長を目指す」という点に置いては同じ類のものだ。

世界の中でも先進国の成長率は低下した。
限りない拡大と成長という点では先がもう見えている。

そんな中でアメリカの覇権国家としての役割が終えようとしている。
次は中国か?インドか?
いやそんなことはない。
次の覇権国家は新しいシステムを構築した国」と水野和夫氏は言う。

大西つねき氏著書「希望」で「資本主義」をシステムと言わずに「思想」と言った。

大西つねきさんの本を読んで思ったこと。
資本主義の思想を一言で言うと「所有」
資本主義のシステムを一言で言うと「効率化」
になるのではないか?と想像した。

ケインズは100年前、「100年後、仕事は1日3時間になっていると言った。」
しかしそうなっていない。
そうなっていないのは資本が労働者をしばりつけているからである。

今の資本主義のシステムでは、効率化の果実は当然株主が手にする。従来はそれが再投資され多くの人が恩恵を受けたが、今は再投資されずそれが滞留したままだ。行き過ぎた効率化によって労働者たちが力を失い、彼らが大多数を形成する消費市場が低迷し、滞在が停滞しているからだ。言わば止めどない効率化の思想が、自らの首を締めているに等しい。

大西つねき 「希望」 P170

国家経営のもう一つの重要な本質とは、人の時間と労力を何より大事にすることです。(中略)そうすれば自由時間や余力が増えます。あとはそれを最大限に個々人に帰属させること。なぜなら、各人がもって生まれた身体、能力、時間などは全てその人のものであり、それを自由に使うことは基本的な人権だからです。

大西つねき 「私が総理大臣であればこうする」 P117

大西つねき氏もケインズと同じことを言ってますね。
効率化により生まれた時間は個人に返すべきだと。
しかし、実際は資本に1日8時間、通勤時間等考慮すれば毎日10時間ほど取られているのが実情ではないでしょうか。

さらに大西つねき氏は続けます。

効率化が進んだ今、社会に必要な価値を作るのに、全員働かなくてもいい時代になりつつある。本来、生産性が上がり、必要な価値を作る労力が減れば全員の労働時間が減ってもいいはずだ。だが、資本主義の思想がそれを許さない。効率化の果実は資本家が再投資のために利益として吸い上げ、労働者はむしろ効率化の対象である。余剰人員は椅子取りゲームから弾き出され、仕事は「役割分担」や「貢献」よりも「サバイバル」の様相を呈している。
今の若い人たちは社会に出る際、希望に燃えて就職するというよりも、何かに追い立てられるように仕事を探しているのではないだろうか。お金の流れの最下流からスタートする大部分の若者たちはまず、お金に従属し、それを得るための仕事を見つけなければ自活できないからだ。
今まではそれでも経済全体が成長し、椅子の数も増え、ある程度の年齢になればチャンスを掴む機会もあったが、今はどこまでいってもサバイバルである。経済成長が20年も止まり、全体のパイが大きくならないのだ。このことは若い人だけでなく社会にとっても大きなマイナスである。何故なら、この硬直した世の中を突破できる一番の可能性を秘めた若者たちがお金に従属させられ、その創造性を発揮する機会を与えられないのだから。私はそこに今の行き詰まりの原因があると感じている。つまり、以前は幸せな役割分担だった資本家と労働者の関係が、労働者の創造性を抑圧しているということだ。

大西つねき 「希望」 P165

もはや、誰もが求めるような最大公約数的な価値を、効率的に大量生産、大量提供すれば皆幸せになる時代は終わった。のような価値は既に飽和し、それだけでは必要な仕事も作り出せなければ、人の心も満たせない。資本主義の最大の弱点は、生産物を持たない大勢の人を、「労働力を売るしかない労働者」と定義したことだ。かつてはそれが好都合だったのかもしれない。それが人間の可能性に蓋をし、創造される価値の幅を狭め、我々の行き詰まりの原因となっている。我々が活路を開くには、人々に本物の自由を与え、その個性や創造性を開放することである。そうすれば、そこから既存のビジネスの枠に収まりきらない大小無数の価値が生まれ、それを交互に交換し合う新しい経済が生まれる。

大西つねき 「希望」 P167

山口周さんも「役に立つ」時代は終わった。これからは「意味がある」が大事。今の若者は「意味のない」ことはできない。と言ってます。

私は常々、若者に夢を持って欲しいと思ってきました。
ただ、それは私の勝手な希望であったのかもしれないとも思いました。

夢を持ちたくなるような社会を作ってあげなくてはいけないのであり
ねそべり族などに代表される今の若者の行動というのは、資本主義における脱落者なのかもしれませんが、最強のアンチテーゼ(資本家に搾取されない)なのかもしれません。


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