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恒川光太郎「スタープレイヤー」

 引き続き恒川光太郎読み。これまではホラー、神話といった感じだったが、今作はファンタジー。十個の願いを叶えられる「スタープレイヤー」として、現実の日本から異世界へと飛ばされた主人公と、その世界の住人や先達のスタープレイヤー達との関わりが描かれる。

 十個の願いをどのように使っていくか。
 本当にその願いは願ってもいいものなのか。
 自分のためか。他人のためか。
 
 何でも叶うと言っても、たとえば地球から想い人を連れてきても、その人に永遠の愛を誓わせることは出来ない。出来ることと出来ないことは、「スターボード」という、ノートパソコンかタブレットのような物で判断、承認される。何もない原野に放り出される主人公が悩むのは、まず衣食住だ。何でも叶えられるといっても、生活するために必要なものは地球と大差ない。

 何でも叶えられるという能力が存在しながらも、現実的に物語は進んでいく。他のスタープレイヤーとの関わり、民族間紛争、死者を蘇らせるか否か。

 地球に似たどこかの惑星ではないか、と見当はつけられているが、確かなことは判明しない。元々その星にいた現地人と、スタープレイヤー達が連れてきた人々及びその子孫が暮らしている。

 ネタバレになるが、有名な話らしいので記しておく。

 物語終盤、主人公達の建国した国に名前が付けられる。


 国名は、「麗和(れいわ)」と決まった。


 単行本刊行年は2014年。当然令和は始まっていない。

 続編の「ヘブンメイカー」を読んでいる。
 その最中にハローワークに行くと、職員に怒鳴り散らしている男がいた。間隔を空けながらも混み合う中、ベンチが空いたので私は腰を降ろした。まだ私の番号まではだいぶ間があったので本を読むことにした。怒鳴り声の響くハローワークで、スマホのKindleアプリでファンタジー小説を読むのも、なかなか乙なものだった。途中休憩してうとうとしていたら順番が回ってきた。まだ男は怒鳴り散らしていた。異世界への扉は、開きそうになかった。






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