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コマ撮り動画を撮り始めた8歳の娘の話

娘がコマ撮り動画を撮り始めた。
娘は8歳、発達障害があり、今年7月ごろからは同級生の暴力が怖くて学校に通えなくなった。

ある日、弟が遊んでいるレゴブロックの人形を見て言った。
「レゴの人形が走ってる動画ってどうやって作られてるの?」
「少しずつずらして撮影した写真を、連続して再生しているんじゃないかな。そういうアプリないか探してみるよ」
「お願い」

Stop Motion Studioというアプリをダウンロードし、私が少しテスト撮影をして、使い方を娘に説明すると、さっそく作品を撮り始めた。

人形を少しずつ動かして、手が映らないように撮影し、繋げて観る。意思があるように動く人形たちは、会話を交わしているようにも見えた。自分一人では撮り切れない分は私の助力を乞うが、そうでない場合は、出来る限り一人でやりきりたいようだった。

初日の最後に作った作品には、ストーリーもあった。

シルバニアファミリーの家から出てくる、すみっこぐらしのシロクマ。家の前にマウスが置いてあり、邪魔になるので移動させているうちに、マウスの上に昇ったり転がったりと遊び始める。
通りかかったオーロラ姫(母親役)とハッピーセットのリカちゃん人形たち(その娘役)。オーロラ姫は用事があるのか、画面外へ去る。リカちゃん人形たちはマウスと戯れるシロクマを見て、ちょっかいをかけようと近づく。
そこに空からぶりぶりざえもんが登場し、リカちゃん人形たちは去っていく。
再び登場したオーロラ姫が、ぶりぶりざえもんを抱えて去る。もう一度飛んでくるぶりぶりざえもんはオーロラ姫にまた連れていかれる。

撮影しながら流れを考えているようだ。
箱庭療法? なんて言葉も頭をかすめるが、娘の中では「作品」という意識がしっかりあるらしい。
撮影二日目、三脚を買い与えてみると、私の手をあまり借りなくなった。つい「あんまり大きく離すと、カクカクしすぎるよ」と口を出すと、「この子はすごく足が速いってことだからいーの!」と怒られた。実際、ピューッと逃げ出す様子が見事に映し出されていた。

ふいに三脚を渡され、「私を撮って」と言われる。人形をつかんで動かす動作をする娘。「こうやって私が撮影していました」というメイキング映像である。YouTube慣れしているかのようだ。自ら発信者になりたいとそのうち言い出すかもしれない。

創る、という行為は楽しい。きっと、他の何よりも。
時には他のことが何もかもどうでもよくなるくらいに。
楽しいと同時に苦しみもある。
うまく出来ない、発表しても評価されない、もっといいものを創りたい、知り合いに見られて馬鹿にされた、など。

でもきっと、初期衝動は間違いなく「楽しい」だったはず。
3歳の息子がレゴで青いブロックを敷き詰めて「じゃじゃーん、プール!」と言って、レゴの人形を泳がせていた。警官の人形が帽子を取ってプールに入る。女の子の人形も髪の毛を外して入れようとして笑っていた。
それもまた「創造」だ。

藤本タツキ「ルックバック」を娘がパラパラとめくって読んでいた。
「女の子二人が漫画や絵を描き続ける話だよ」みたいな説明はしておいた。台詞にふりがなはついていないので話の内容はあまり分かっていないが、「この女の子かわいい」と言っていた。
そんなことも何かのきっかけになっているのかもしれない。

ちなみに娘と散歩がてら本屋に行った時の会話。
「ルックバック」を手に取る私
「パパ、この作者が好きなんだ。十年くらい前かな。まだ漫画家になる前から、ネットですごい作品を発表していて」
「ふーん、この人女の人?」
「違うよ、男の人」
「パパって男の人が好きなんだ?」
「違う!」

娘のコマ撮り動画撮影熱がいつまで続くかは分からないけれど、下手に口出しして、やる気を削ぐようなことがないように気をつけていこうと思っている。

昔だったら同じことをしようとするにも、撮影機材あれこれ買い揃えないといけないのが、思いついた瞬間に準備出来て、8歳の子どもでも作品を創れてしまう。

誰もが創る楽しみを知ることが出来る。
誰もが創る苦しみを味わえてしまう。
乗り越えて次へ。完成させた後、また次の未完へ。
とにかく撮影中の娘の瞳は輝いていた。

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