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心の隙間お埋めします〜まるまるもりもりメモリーフード〜

家の中というものは、丸いもので溢れています。

壁にかけられた丸い時計、子供用のビニールプール、アロマディフューザー。
キッチンに行けば、さらにたくさん溢れています。
フライパン、鍋、コップ、お皿、お茶碗、湯呑み、ボウル。

それぞれの丸は、もしかしたら、それぞれの記憶への入り口になっているかも知れません。

スーパーマリオが土管をつたい、地上と地下を行ったり来たりするように。


我が家の冷蔵庫の中にはいつも、五枚入りでパックになった、丸いロースハムのスライスがストックされています。

私はハムが大好きなので、朝食にハムを乗せたピザトーストをよく作って食べています。その他にも、ハムエッグを作ったり、チャーハンに入れたり、チャーシューの代わりにラーメンに入れたり、ホットサンドにしたりと我が家ではハムが大活躍なのです。

ほかにもポテトサラダやマカロニサラダ、春雨サラダなんかにもハムは欠かせない存在です。

私は春雨サラダが無性に食べたくなる時があるのですが、そうなると休みの日に大量に作り、数日の間春雨サラダを食べ続けます。
子供の頃はどうも酸っぱくて嫌いだったのですが、今はあえて少し酸味を強めにして、キリッとサッパリといただくのがお気に入りです。

今思えば、小さい頃の私は本当に好き嫌いが多く、自分でもよく成長できたなと思うくらいの偏食でした。

野菜はいっさい食べなかったですし、好きな食べ物といえばラーメン、カレー、焼きそば(野菜抜き)、チャーハンでした。

これは、私と同じく大変偏食な父親の影響でもあります。父親が休日に作ってくれるインスタントラーメンや、インスタント焼きそばが私は大好物だったからです。
そして、そのラーメンや焼きそばが出来上がるまでの場繋ぎとして、いつもハムエッグを作ってくれるのですが、コレがまた絶品でした。

ハムを二枚、四等分にして、熱したフライパンに敷き詰めます。その上に卵を二つ割り入れて、黄身を潰します。フライパンを傾けたりしながら卵を平らにならし、少し半熟気味に火を入れた、大きくて薄っぺらいハムエッグです。

ハムはところどころカリッと焼けていて、卵はとろっと半熟で、そこにテーブルコショウと醤油を垂らして食べるともう最高なんです。

その当時の味を再現しようと、寸分違わぬ作り方で私もハムエッグを作ってみたりするのですが、どうも同じようには作れません。フライパンが違うのか、ハムが違うのか、はたまた油が違うのかは分かりませんが、確かに何かが違うのです。

歳を重ねて私の味覚が変わったなんて事もあるとは思いますが、あの頃はきっと、普段は仕事で家にいない父親が、休みの日に自分のために作ってくれるのが嬉しくて、それがさらに美味しく感じさせていたのかもしれません。


さて、私も今や父親になりまして、5歳の娘に美味しい料理を食べさせてあげたいと思い本格的なパスタを作ったりもするのですが、娘はどうやら私が作るパスタよりも、レトルトのカルボナーラの方が好きなようです。

そして更には、「パパの作るご飯は1番まずい」という、汚名までいただく始末。

娘の中では、ばあば(妻の母)が作る料理が1番で、母親である妻が作る料理が2番目で、私が作る料理は最下位なのだそうです。

もはや私の料理人としてのプライドは、ズタズタのボロ雑巾です。吸水率も悪ければ、絞るとビリビリと破れてしまいます。後はせいぜいコンロ周りの油を拭き取るのに使われて、そのまま捨てられてしまうようなボロ雑巾です。

娘が寝てしまった後、私は不貞腐れながら床に寝っ転がって、天井にくっ付いている、縁が木目の丸いシーリングライトを眺めていました。すると、それがなんだか、だんだんロースハムに見えてきて、無性に当時のハムエッグが食べたくなってきました。
今から作って食べようかとも思ったのですが、さすがに夜も遅かったのでやめました。

いつか娘が大人になった時に、「昔パパが作ってくれたパスタが食べたいなあ」なんて思ってくれたら、そんな嬉しいことはないですね。


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