奴隷博士

「詩と思想」(詩誌の名前と重なってる笑)。写真はすべてオリジナルです(絵画はネットで拾…

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「詩と思想」(詩誌の名前と重なってる笑)。写真はすべてオリジナルです(絵画はネットで拾ったものです)。小松正二郎詩集『聲』(モノクローム・プロジェクト)Amazonで発売中です。

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詩の椅子(改稿#1)

地球現存在から”なにか新しいもの”が生まれなければならなかったとすれば、それが人間なのだ。。。 その人間がグレン・グールドになってピアノを弾いている林の奥で。。。 かりに此の世に「詩の椅子」があったとしてもそれが電気椅子ではないという保証はどこにもないだろう。あの世で詩が座っている椅子。だれも詩の顔を見た者はいない。ただオレ一人がかれの懐で見知った。         * 透明な硬質の立方体 世界を排斥しない体積 が存在するとはどういうことか 超越とは光を超えるこ

    • 詩の椅子

      地球現存在から”なにか新しいもの”が生まれなければならなかったとすれば、それが人間なのだ。。。 その人間がグレン・グールドになってピアノを弾いている林の奥で。。。 かりに此の世に「詩の椅子」があったとしてもそれが電気椅子ではないという保証はどこにもないだろう。あの世で詩が座っている椅子。だれも詩の顔を見た者はいない。ただ一人俺がかれの懐で見知った。         * 透明な硬質の立方体 世界を排斥しない体積 が存在するとはどういうことか 超越とは光を超えること

      • 洪水について

        北側の窓に面して机を置いてこの冬は過ごした。もっぱらこの眼前の風景だけが自分の世界で、ときおりやってくる小鳥たちが画面の主役である。双眼鏡で観察する。小鳥たちはメンタルが安定しているとおもう。言葉はなくとも概念はもっているのだろうか。「言葉のない世界は真昼の球体だ」という詩人の言葉。小鳥たちの集合無意識=真昼の球体が現前しているのだ。死んだ詩人の断言の力が降ってきた。      1 洪水と グールドの歌いながらの平均律と 腹痛と冷たい風と青い空と 離着陸を繰り返す自己意識

        • 詩とはなにか ー異端審問ー

          「当事者以外には決してわからない種類の感情というものがある。すべてを栄養(ネタ)にしてしまう優等生の無神経さがとどかない深い処に・・・」 昨日(1月24日)は何報か書いたツイートが致命的だった。ツイートしないで保存に回す理性が勝ったが、そのぶんは結局「詩」として書かれてしまった。田舎で孤立している自分の立場がさらに危うくなるような内容だ。出版・詩壇系権力勾配の落ちこぼれで生きているのにどうなのか。      * また傑作(註1)を書いてしまった。ガソリンの代わりに世界を

        詩の椅子(改稿#1)

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          反反戦詩 ーあるいは十三月の蝿ー

          不条理な死を高みから歌われるほどの辱めはない ギリシャ悲劇的なその構図が「かれら」の気に入れば別だが 「殺すは歌う」 金蠅・銀蠅が死骸に産み付けた卵からも詩は生まれるだろう 太った蛆虫どもが幼子の屍肉を喰らって蠢く やがて透明な黒い羽根を震わせながら飛び立つ 桂冠を頭上に抱いた十三月の美事な蠅が 「狼狽と恐怖は双子の兄弟」 蝿よ、 その高みから ぼくらの死を歌うな 嬉々として 言葉の缶詰を投下しないでくれ! ぼくらの死を爆鳴で祝福する 汚れた言葉の地雷を どうか踏ませ

          反反戦詩 ーあるいは十三月の蝿ー

          薔薇園#4

          飢え死にしたアジア人の屍肉を順番待ちしながら高い塀の上から見下ろしているハゲワシたち(の写真を中国大使に見せられる)。英米帝国主義の”pecking order”そのものだった(「戦犯」大川周明なら何と謂うか?)。 新自由主義の、「新しい資本主義」の潜在的屍肉=私もハゲタカの視線を感じ始めた。屍肉になるまで待てない、深紅のハラワタを引き出しては喰い散らかす世襲ゾンビの群れ。 私(=死)的感慨は放っておくべきだが。 ゾンビの食物は人間だけである。過去の人間だけを食べるゾン

          薔薇園#4

          錆シイ方舟#3

                       0 秋になった。「自己」の網の目がつながってきて面白く感じる。夏は生きているだけでたいへんだった。この不可視の網になにかが捕まるかどうかわからないが、脳漿の水面下にこの網を入れて動かしてみる。すると奇怪な形而上的魚類を捕獲することになる。そいつを「キリスト」と名付けよう。              1 すでに数日経ってしまったし、自分の夢としてはフロイト理論の射程内に収まるもので特に面白くもないが、新カテゴリーとして書いておく。 原宿あたりの

          錆シイ方舟#3

          錆シイ方舟#2

          秋になった。「自己」の網の目がつながってきて面白く感じる。夏は生きているだけでたいへんだった。なにかが捕まるかどうかわからないが、脳漿の水面下にこの不可視の網を入れて動かしてみる。すると奇怪な形而上的魚類を捕獲することになる。そいつを「キリスト」と名付けよう。             * すでに数日経ってしまったし、自分の夢としてはフロイト理論の射程内に収まるもので特に面白くもないが、新カテゴリーなのでメモしておく。 原宿あたりのカリスマ美容師の店で髪を四つ編み(まさしく四本

          錆シイ方舟#2

          錆シイ方舟

                  0 秋になった。「自己」の網の目がつながってきて面白く感じる。夏は生きているだけでたいへんだった。この不可視の網になにかが捕まるかどうかわからないが、脳漿の水面下にこの網を入れて動かしてみる。すると奇怪な形而上的魚類を捕獲することになる。そいつを「キリスト」と名付けよう。         1 もう数日経ってしまったし自分の夢としてはフロイト理論の射程内に収まるもので特に面白くもないが新カテゴリーなので書いておく。 原宿あたりのカリスマ美容師の店で髪を四

          錆シイ方舟

          「モブキャラ」の記

          詩の出版社から重量のある小包が届いて、開けてみると年刊のアンソロジーだった。ぼくも参加したような意味のプリントの一枚紙が同封してある。全く覚えがない。なにかの間違いだとは思ったが、一応確認してみた。やはりぼくの名前も作品もない。分厚い辞書のようなハードカバーで同じものが三冊。 最近は、ぼく個人宛の電子メールでも同じ文面の使いまわしで宛名が違っていたりする(元の宛名を変更してない)こともあった。 詩を書く人としての自己のアイデンティティの危うさを実感してしまう。”モブキャラ

          「モブキャラ」の記

          N氏からの手紙:詩集『聲』について

          研究會の先輩N氏から分厚い封筒が届いた。開けてみると便箋十八枚にびっしりと書き綴られた詩集『聲』の批評・感想だった。黒インクの流麗な達筆でところどころ読み取れない部分は推測で読んだ。ぼくはコロナ以前から研究會も出なくなって、すでに五年近くはご無沙汰しているのではないだろうか。 関係者に詩集を送付したのは昨年十月のことで、大方の反応(ほとんどがぼく個人宛のもの)は出尽くしたあとだったし、期待した詩誌などの出版物の反応も知る限り完全に無視された格好で、思うようには詩界に受け入れ

          N氏からの手紙:詩集『聲』について

          正弦波

          物理学教室の年老いた助手が正弦波の捕獲に成功したというので見に行った。正弦波の節(せつ)に捕まえ方のコツがあるらしい。虫かごに五つ入っているものを見せてもらう。譲り受けて正弦波の調理では右に出るものがいないというキダミノル先生のところに持っていくことにした。 老後の先生は光のなかでルソーを読むことを日課にしているそうだ。頻尿のわたしが”はばかり”をお借りしているあいだに調理が進んでいた。小さなアルミ鍋のなかで正弦波のコロッケがひしめいている。まだうわっつらは白っぽい。これか

          ラザロの復活(改稿#1)

               1 The other side is not the enemy. っていい言葉だな The other side is the enemy. の宇宙に追いやられる 楽園追放。      2 「新しい猛暑」も八月のこの時期になると雰囲気が変わる。少なくとも午前中は窓・引き戸全開と扇風機でしのげる気がする。昨夜はアマプラでカンバーバッチ主演映画『クーリエ 最高機密の運び屋』。前半が地味で途中まで見ていたもの。 キューバ危機の時代の雰囲気が伝わってきた。理想

          ラザロの復活(改稿#1)

          ハシビロコウ

                  1 宙空には蠱毒の壺がある 蠕動する人面毒虫 「血」を啜って肥え太った面々 のわずかに半開きの口元 の作り笑顔に隠し仰せない 凶々しき歯列 ツラだけヒトの八ツ目ウナギ、ヒルの類 生まれつき人民の膏血でぬるぬる・てかてかしてるやつら が「壺」から溢れ落ちてきて わたしの顔の上を這い廻っている         2 さて次に、金持たちよ、さしせまっている自分の難儀を思って、泣いて大声で祈るがよい。 見よ、あなた達の土地の刈り入れをした労働者の、あなた達が搾取し

          ハシビロコウ

          物への問い(改稿#1)

          人間にとっても、他の生物にとっても、生存=存在可能な環境の温度がある。物質にも、その「名」にふさわしい存在として存在が可能になる温度がある。認識論ではなく、存在論として、熱力学的に、現実の個物=系は全て環境温度に依存して存在可能になる。 熱的に見れば、環境=世界から孤立・独立している現実的な存在は存在しない、熱的には、現実の全ての個物=系は外界に対して閉じていない。素朴な熱力学の視点を導入するだけで存在論は一変する。 われわれの文明は未だに機械論的な観点にとどまった物質的

          物への問い(改稿#1)

          五月(改稿#1)

          われわれが臨在しなかった 時間に着火して一瞬 浮かび上がる光景を注視せよ! カタツムリの這った跡に神の加護が見えないか? 世界の荒廃と甦り をめぐる黙示 終末の祝福 (と処罰) 魔が醒めるような 聖書暗喩篇=暗喩変 物自体=言葉自体 の幻影 を愛する 五月がやってくる 自我という 「個」 を世界に投影して見ている われわれは自我の孤独 を投影することでしか世界を認識できない 認識論と存在論が奇妙な出会いを強いられている 「場」 に生じている 「力」 としての人間が歩いて

          五月(改稿#1)