自分の感受性くらい。
こんな世の中だからこそ、
自分をしっかり見つめる。
こんな世の中だからこそ、
自分の足でしっかり立つ。
いつまでも世の中のせいにばかり
していては、なにひとつ変わらない。
ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて
気難しくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか
苛立つのを
近親のせいにはするな
なにもかも下手だったのはわたくし
初心消えかかるのを
暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志にすぎなかった
駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄
自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ
茨木のり子 詩集より ( 小学館 )
当たり前のことほど、本当にむずかしくて。
ふりまわされても、まきこまれても、
心がくたびれても、1日1日は過ぎていく。
自分の機嫌くらい、自分でとらねば。
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