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まちについて考えよう。"マイパブリックとグランドレベル"

読書感想文です。最近「街」について考えます。
たとえば「今日はいい天気だから外でコーヒーでも飲もう」と思っても、その通りに過ごせる場所ってあまりないように思います。ちょっと座って、1〜2時間過ごせるようなそんな場所。カフェや飲食店に入る「目的」がないと、出かけるのって意外にハードルが高いなぁと私は感じています。しかも都会の飲食店は隣と密接した空間、リラックスできない割にはコストもかかる。最近は再開発された公園などが増えてきましたが、私の地元では、街に出る=車でショッピングモールに行くことが多く、「街」に対する感覚が違うような気がしています。

というのもイギリスやドイツに滞在した時、みんなが公園でそれぞれの時間を過ごしていたり、パブに集まっていました。私はここに新鮮さと楽しさを感じ、「こんな暮らしもいいなぁ」と憧れていました。この違いはなんだろう。そのヒントを知りたくてこの本を手にとりました。さぁいきましょう。


ひとことで言うと

たのしい街はグランドレベルが最高

グランドレベルとは一階のことです。
一階は街をつくるといいます。「たのしい街」は、一階にお店がいっぱい。ポートランドなどの海外では、一階についてテナントやファザードなども細かく指定された街づくりがあるようです。チェーン店ばかりではなく、個性あるお店が並ぶ。豊かな街ですね。

では日本はどうでしょう。日本の街は基本的に綺麗です。住宅街は同じようなマンションと綺麗なエントランス、高層ビルの足元は、大量の自販機や花が植えられ、チェーン店がそのまわりに立ち並ぶ。一見綺麗に見えるけれど、なんとなく画一的で寂しい。

その原因は街にひと気がないからだといいます。一階が高い壁で覆われている、たてものが街に開かれていないことが多いのです。とはいえ人間は根本的には人と関わりたい生き物。なんとなく入りやすい、ひと気のあるコンビニに吸い寄せられてしまう。私も無意識にコンビニやスーパーに吸い寄せられていました。。知らない人でいい、話さなくていい。たのしい街には、ゆるく開かれた場が必要ということを認識しました。

とはいえ、開かれた場所に住むのも難しい。都市開発には様々なリソースがかかるし、実際に都市開発された街は家賃が高く、人が集まりすぎて通勤も大変。ではどこに住めばいいのか。。


ベンチという解決策

居場所とは、飲み食いや消費をする場所だけではない。「何の目的もない」といった、からっぽの状態でもそこにいてもいい、という状況こそ、さまざまなひとにとっての居場所であり、まち本来のあるべき公共なのではないだろうか。

私は都心に買い物に行くと、とても疲れます。ちょっと座りたいと思っても、人であふれたカフェしかない。カフェに入らないと休みにくいような、ただぼーっとしていると不審者にもなりえる。

この解決策がベンチ。もちろんセントラルパークのような都心部に近い公園があったら理想的ですが、まぁ難しい。普段はベンチについて考えたこともありませんでしたが、ベンチは座るだけのものではなく、まちづくりになるといいます。それは、ベンチを置くだけで滞在時間が増え、それに伴い消費活動も増やすことができるから。憩いの場だけでなく、経済にも影響を与えることができる可能性を秘めている。

現にニューヨークでもCityBenchというベンチを置きまくる都市戦略があるくらいベンチの力ってすごい。街をデザインすることもできる。そういえば私の好きな街にはベンチがたくさんあったなぁと。普段気にも留めなかったことについて考えてみたらとても面白くなってきました。街全体が変わらなくても、街の一部で再開発された小綺麗な公園などはあります。せめて過ごしやすいベンチのある街に住むのが、一番手軽な解決方法かもしれない。小さいことに思いますが、一人で納得してしまいました。



おわりに

この本を読んで、グランドレベル=1階の大切さを実感しました。地域の閉塞感は、街に対して開かれていないから起きている。海外で感じた街と、地元の街の違いがはっきりしました。なんとなくいい街だなぁというのが言語化できたとともに、これから街を見る視点が変わってきそうです。

ちなみにこの本のタイトルにもあるマイパブリックとは、「自分で作る公共」という造語です。公共はみんなのものではなく、自分の好きなことをして、それに共感する人とやれる範囲でやること。筆者はそれを事務所の一角で始めたバー→コーヒーカート→会社設立と進めていきます。その行動力は本当に尊敬。お金をとらないからこそ得られるもの、一階の大切さを考えさせられました。街には直接関係ないかもしれませんが、自分が楽しめることは気軽にやってみようと思うようになりました。お茶をいれたり、自分の得意料理をふるまったり、こんな風に読書感想文を書いたり。同じ本でも、全く同じ感想が出てくるわけではなく、その人なりのフィルターがある。どんな形でも、お金を取らないからこそ楽しめることがあると気づかされました。

著者がこの考え方に至る過程がていねいにまとめられていて、とても面白かったです。ぜひ読んでみてください。マイパブリックとグランドレベル

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