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ビールと唐揚げ。続く、テキーラハイボールと空。

 23時半をすぎた頃から飲み始めるビールは、疲労困ぱいの体にダイレクトに伝わる。暑さのせいで汗をかき、乱れた私の顔、髪、服、その姿はまさにぐしゃぐしゃという言葉がお似合い。

 鏡なんか見てられないからそっぽ向けて、美しいくびれを魅せるグラスにビールを注ぎ、私は口づけした。

 喉に流れ、胃に到達する様はナイアガラの滝を彷彿とした。今の姿は、滝の水飛沫を浴びたからなのではないだろうか。そう思ってしまうほど、ビールの暴力的な清涼さと刺激が、胃から脳に繋がる。

 ビールを全身で感じ、満たした後、私の体内に揚げ物を投入する。唐揚げだ。さあ、油だ!肉だ!さあさあ、夜もふけたぞ!もう健康とか美容とかダイエットとかクソ喰らえだ!。

 私の脳内は欲望でかき乱され、歯で感じる屈強な衣、舌で感じる肉の油と汁。旨味と甘み、それらを一掃する麦の酒の苦味と爽快感。たったの一品&1ドリンクで私の口内と体内はカオス。これが現代に生きる会社員の体内です。我を忘れ、一心にビールと唐揚げに取り組む人々は、そうやってカオスになるのです。

 そんなカオスも、駆け抜ける馬のように過ぎ去り、グラスの中は閑古鳥が鳴いている。ガラスの壁にしがみつく泡々に耳を傾けると、冷静な声で「早く何か注ぎなさい。」と言っているように感じる。

 生おかわり!なんていつも言っていたが、最近の私はここでハイボールを入れる。でも、ウイスキーじゃない。

 テキーラだ。

 私は今、テキーラで作るハイボールが猛烈に好きだ。それもアガペ100%のプレミアムテキーラというやつで作るテキーラハイボールが好きだ。

 冷えたテキーラハイボールは、上品な甘さを脳に突き刺していく。絹のように細く、真っ直ぐと尖った光沢を見せ、煌びやかに装飾させた針。それが脳に直接刺激させ、独特なアガペの香りを全身で体感する。そんなテキーラハイボールは、まるで天まで登らせてくれるんじゃないかとさえ思う。

 私はその差し伸べられた手を掴むように、2杯目3杯目・・・あれ今何杯目だっけ・・・。

 こんな美味しいテキーラに、私はブッタとシャカの前で拝んでしまう。針だらけの私の脳は、やがて強い酔いを訪れさせる。もう大怪我。ブッダもシャカもこの曲名「大怪我」要Checkしとけ〜。って感じ。

 酔いも回ってくると、最近、聴いている音楽が脳内で回転し始める。その後、脳内で始まるのは、仕事の苛立ち、この後やらなきゃいけない事、このあと続いてく人生、ハイになった脳内に現実が混じり、ごった返した私の脳内もその場で睡眠を始める。

 カーテンの隙間からの光、硬いベルトで永遠と締め付けられているような痛みと、一晩の後悔で目を覚ます。

 荒れ果てたゴーストタウンが広がる私のテーブルを前に、ため息をついてしまう。このため息は確実に逃げている、幸せが。そんな気がした。
 
 とりあえず立ち上がる私は、シワついたシャツを脱ぎ、ふと目に入ったカーテンの隙間から空を見る。

 こんな状態の時に限って、空は雲一つない。

 私の中とは正反対なものを見せる空は、憎たらしく感じる。

 憎たらしくのに、私はどこかで、雲一つない空を取り戻した気がした。

 なんつって、私はiPhoneで音楽(Shakka Zombie 空を取り戻した日)を再生してから、元の生活に戻った。

 

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