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とある夫婦の平凡な日常。

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#親子

【小説】The『Tamias』saw!!:一月 後編

 お義姉さんと、観光の予定の調整をしていく。
 二人とも史跡にはあまり興味ないみたいだから、食べ歩き中心に、思い出に残るように写真映えするようなスポットを多めにした。

「ここ、行ったことある?」

 友達から勧められて行ってみたいと見せられたのは、最近、若い子に流行っている通販のアンテナショップみたいなものだった。
 わたしは若い子向けなのかなあって思い込んでたから、ちょっとだけ気後れして使った

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【小説】The『Tamias』saw!!:一月 前編

 一人っ子のわたしは、兄弟姉妹というものに憧れを抱いていた。
 だって、周りの仲の良い友人たちにはみんな、兄弟姉妹がいて、甘えたり甘えられたり、ケンカしたり。
 私の両親は共働きで忙しい人たちだったから、物心ついた時には、ひとりでお風呂、ひとりでごはん、ひとりでテレビ。
 まあ、慣れっこだったけど。
 そんなだから、私は友人たちの話に、いいなあ、と思っていたものだ。

 わたしの夫にはお姉さんがい

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栗鼠の親子:一月 後編

「ただいま。」
「こんにちはー。」
「お邪魔します!」

 思い思いの言葉を言いながら玄関を抜ける。
 商店街をなんだかんだとゆっくり回っていたら、遅くなってしまった。

「いらっしゃい。お義姉さん、ケイタくん、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。」
「明けましておめでとうございます。こちらこそよろしくお願いします。ほんと、新年からお世話になります。」
「お義姉さんもたまに

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栗鼠の親子:一月 中編

 あれは、暑い夏の日だった。
 
 先に眠りについた妻を撫でていた手を、そっと退けて、いそいそとリビングへ行く。
 煙草、携帯灰皿、スマートフォン、家の鍵、小銭、と、ひとつひとつ確認するようにポケットに詰めていく。
 サンダルを履きながら、下駄箱の上に置いた携帯用の虫除け器具を持ち、玄関を出た。
 夕立のせいか、マンションの廊下は湿度が高く、まとわりつくような空気が充満している。

 マンションを

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栗鼠の親子:一月 前編

 師走、とはよく言ったもので、私は誰の師になったつもりもないが仕事に生活と東奔西走し、あっ、と言う間にクリスマス、大晦日、正月が過ぎ去っていく。
 妻との結婚生活も六年目を迎え、都合五回も一連のイベントを共に過ごせば、それは穏やかな日常に変わる。
 一年の区切りを日常の連続だと認識できるようになったのは、いくつの頃だったろうか。
 流れる時間はとても愛しい、平和な日常。
 一月、季節は冬、真っ只中

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