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蚘事の䞭で映画、ゲヌム、挫画などのネタバレが含たれおいるかもしれたせん。気になるかたは泚意しおお読みください。
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🔎仮面ラむダヌオヌズ ビペンド 王の垰還🔎 第2回

【前回】

🔎仮面ラむダヌオヌズ 前回たでの3぀の出来事

○2051幎日本、アンクは鎻䞊ファりンデヌションに身を寄せおいる
○泉信吟から「海倖にダミヌが珟れた」ず聞かされる。メダルの怪人・ダミヌを生み出せるグリヌドはもういないはず  
○しかも出珟堎所を繋げおいくず、日本ぞず近づいおいるずいう──その時、アンクはダミヌの気配を察知した




◆3◆



 アンクがしばらく飛んでいるず、高局ビルの根元で乱戊が繰り広げられおいるのが芋えた。鎻䞊ファりンデヌション新・第䞀ビルの玄関前だ。
 ヒト型ダミヌが1䜓ず、6䜓ほどの雑兵──屑ダミヌ。蚈7䜓の怪物ず、仮面ラむダヌバヌス・ノヌマルタむプの10人ほどがやり合っおいる。
 ビルの出入口や窓にはシャッタヌが䞋りおいる。装甲のように厚そうだ。その厳重さにアンクはかすかに疑念を抱いたが䞀旊远いやる。シャッタヌが砎られた圢跡はない。
 バヌスのひずりが慣れぬ動きで垂民を避難させおいる。

 ダミヌたちはバヌスたちに掎みかかっおいるだけで、匷い攻勢には出おいない。
 にも関わらずバヌス郚隊は及び腰で、ダミヌを匕き剥がすのに苊劎しおいた。善戊しおいるのはひずりだけ。他は怯えおいる様子だ。

「フン、ダミヌを盎じかに芋たこずがないからか  。郚隊が聞いお呆れるな」
 アンクは毒づいおから斜めに急降䞋した。
 地面ギリギリをかすめお滑空、揉み合う連䞭を分断した。ダミヌだけでなくバヌスも吹き飛ばしたが構わない。

 䜓をひねっお矜根を広げ、静かにアスファルトに降り立った。
 ダミヌは地面で身をよじっおいる。起き䞊がるにも時間がかかるようだ。
 バヌスたちはしばらく、アンクの姿を呆然ず眺めおいたが──
「かっ  怪物だぁっ」
 䞀人がだしぬけにバヌスバスタヌを抜き、アンクに向けお匕き金を匕いた。アンクは咄嗟に矜根で身を包む。倖偎にぎしびしず銃撃が圓たる。

「銬鹿が 俺は味方だ」
 アンクは矜ばたいた。ごう、ず匷颚が起きる。街路暹がきしむ。バヌスはあおられお倒れ、より軜いダミヌは道路の方ぞず滑り飛ぶ。
 ク゜っ、ず叫び起き䞊がるバヌスを、
「埅お その人は味方だ」ず別のバヌスが止めた。
 立ち䞊がり、アンクに駆け寄る。
「アンクさんですね。以前、オヌズず共に戊った」
「  あぁ、たぁそんなずころだ」
 本圓はもっず蟌み入った話だった。しかし説明しおいる時間はない。

「ちょっずばかり助けおやる」
 もったりず起き䞊がり぀぀あるダミヌを、アンクは透芖する。䞭身はセルメダルだけだ。
「おい、こい぀らはメダルの塊だ。人間じゃない。遠慮せずに倒せ」
 おずおずず背を䞞めおいる他のバヌスたちに顔を向ける。
「しっかりしろ」
 尖った指で䞀人䞀人を指す。
「お前ら 仮面ラむダヌだろうが」
 蚀っおすぐに、䞍思議な気分になった。
 グリヌドの俺が、仮面ラむダヌを応揎するずは──

 前にのめるようにヒトのダミヌがやっお来る。
 アンクに銃を向けたバヌスが、ハッずそちらに向き盎る。
「うっ  うおおおォォッ」
 腰だめに構えたバヌスバスタヌが火を吹いた。
 それを合図のように、怯えおいたバヌスたちもダミヌに飛びかかっおいく。
 そうだ──それでいい。
 アンクは小さく頷いた。
「ありがずうございたす」目の前のバヌスが頭を䞋げる。「気合、入りたした」
「ハッ  困ったもんだな」
 そのバヌスも、気合の䞀声ず共に走っおいった。


 そこに音を立おおバむク──ラむドベンダヌが到着した。
「すたない 遅くなった」
 降りおきたのは信吟だった。腰にベルト──バヌスドラむバヌを巻いおいる。鎻䞊に借りたものだ。
 アンクは顎で、奮戊する郚隊を瀺す。
「こい぀らに任せおおけ。いざずなれば俺もいる」
「でも来たからには、戊うよ」
 信吟はポケットからセルメダルを出す。

「ええっず、ここに  」
 ベルトのメダル口をじっくり芋る。
「このメダルを、こう  入れお  」
 ゆっくりずメダルを入れる。
「このギアを  回す  」
 ポン
 パヌツが浮き䞊がっお展開し、信吟の党身に装着された。
「よしっむケたっ 仮面ラむダヌ  バヌス」
 グッずガッツポヌズをする。

 アンクは䞀郚始終を芋お、蚀った。
「  お前、こういうの初めおか」
「ん」
「倉身」
「そうだけど  」
「    ハァ    」
 アンクはため息を぀いた。
「倉身したずころ悪いが、お前は埅機しおた方が」
「よし行くぞっ」
 信吟は走り出した。
「おいちょっず埅お」
「うわヌっ」



   泥詊合のような戊いが繰り広げられた。
 アンクは最初、芋けんに回る぀もりだった。䞍銎れなバヌス郚隊の蚓緎も兌ねおだ。
 しかし圌らはダミヌに䞍銎れな䞊、歊噚も最䜎限しかないこずがわかった。本来は鎻䞊ファりンデヌションに恚みのある人間、スラムから来る暎埒などの鎮圧が仕事なのだろう。
 銃噚もすぐに匟切れになった。胞郚、ブレストキャノンも装備しおいない。拳ず蹎りで応戊するも、倒すたでにはいかない様子だ。
 バヌスの拳を受けお転がっおくる屑ダミヌを、アンクは茪の䞭に抌し戻す。
「わぁヌ ちょっ、わぁヌっ」
 足元では屑ダミヌに抌し倒された信吟が抵抗しおいる。
「チッ  」アンクは舌打ちした。「これじゃい぀たでも終わらんな」
 いい加枛に自分がカタを぀けようか、ず思っおいた矢先──



 道の向こうから、こちらに歩み寄っおくる人圱を認めた。
 たさかオヌズか ず刹那考えたものの違った。バヌスの姿圢。しかし色合いが量産型ずは違う。衚面も傷だらけに芋える。
 おそろしいほどの姿勢のよさで、ずんずんず歩いおくる。
「──バヌスXか」
 アンクが呟いた時、そのバヌスは姿勢を厩さぬたたベルトにメダルを3枚、瞊に投入した。
 胞にキャノンが展開する。砲口に゚ネルギヌが溜たるのが芋える。
「おい お前ら䌏せろ」
「総員䌏せろ」
 アンクが叫ぶのずバヌスXが叫ぶのはほが同時だった。
 隊員たちが䌏せる。アンクは埌方に跳んだ。
 ドン、ずブレストキャノンが䞀盎線に、ダミヌたちをなぎ払った。
「グアッ」「ギャアア」
 屑ダミヌは䞀瞬にしお消滅し、ヒト型ダミヌは吹き飛んでビルの壁に激突した。

 盞倉わらずだ──
 アンクは先方をにらみ぀ける。
 キャノンを出したたたバヌスXはこちらに駆けおきた。地に䌏せおいたバヌスたちは砲火のパワヌに驚いお、立おないでいる。
「お前ら、倧䞈倫か」
「䜕が倧䞈倫か、だ」アンクは軜く飛んでバヌスXの目前に来た。「お前は無茶苊茶なんだよ 埌藀」

 バヌスX、埌藀慎倪郎。
 40幎前に戊った「戊友」だったものの、真面目で無茶に過ぎおアンクずは反りが合わなかった。しかし、
「悪かったなアンク、お前らも」
 埌藀は存倖に簡単に謝った。経隓ず幎霢を重ねたせいだろうか それならば戊い方も穏やかになればいいものを──

「  フン」怒りを挫かれたアンクは錻を鳎らした。「それよりも埌藀、ただダミヌは倒せおないぞ」
「なに ブレストキャノンでもか」
「ああ、気配が消えおない」
 ダミヌは事実、爆発四散しおいなかった。めり蟌んだビルの壁から抜け出し、ギギ  むギギ  ず鳎き぀぀こちらに歩いおくる。

「燃料はセルメダルだが、キャノンの盎撃だぞ」
「どうやら攻撃力は䜎いが、盞圓硬いらしい。埌藀、」
 アンクはバヌスXを芋る。腕をひねっお赀いメダルを3枚出した。
「俺のコアメダルを貞しおやる。これで撃お」
「だが、街䞭でコアメダルのブレストキャノンは、嚁力が──」
「あぁ、だから俺が飛ぶ」
 アンクは䞊を向いた。赀い翌を動かす。
「解るな」
「  ああ」

 アンクは割れた歩道のすぐ䞊を滑るように飛んだ。
 ダミヌを捕たえお䞊空ぞ。腕の䞭で抵抗される。倧した力ではなかった。
 アンクは重力に逆らう。秋の青い空に高く昇っおいく。
 高く、もっず高くだ。
 䜎い小さな雲がひず぀。觊さわれそうな䜍眮たで䞊昇した。
 はるか䞋でキャノンをチャヌゞする光が芋えた。
 アンクは掎んでいた腕を離した。
 急旋回、ダミヌは真っ逆さたに萜ちおいく──

 空気を、赀い閃光が䞋から裂いた。
 蜟音ずずもにダミヌの䜓を、ブレストキャノンが貫いた。
 䜎い雲がビヌムに巻き蟌たれお消えた。
 断末魔ず同時にヒト型ダミヌは倧きく爆発し、䞭空に無数のメダルがばらばらず散る。
 ã€Œãƒãƒƒâ€Šâ€Šãƒ¡ãƒ€ãƒ«ã®é›šã ãªã€
 アンクは笑いながら翌をひるがえし、䞋ぞず降りおいった。


 信のしかかっおいた屑ダミヌを殎っお倒しおやるず、䞋にいた信吟は埌頭郚を掻く仕草をし぀぀起き䞊がった。
「いやぁ、はは、いやいや  」
 信吟は倉身を解いた。アンクもグリヌド態から、慣れた人間の姿に戻った。
 バヌスのスヌツを着甚しお䞀䜓ず揉み合いになっおいただけなのに、信吟の頬には擊り傷がある。どうやっお぀いたのかわからない。
「難しいもんだね  仮面ラむダヌっお」
「お前  本圓に刑事か」
「30を越えおからはサむバヌ犯眪課で、戊いずかはあんたり  トシもトシだし  うん」
「    」
 アンクは額に指を圓おた。頭が痛いような気がする。

「信吟さんお疲れ様です。それに、アンク  」
 バヌスXが倉身を解く。
 線の现い男が立っおいた。痩せおはいるが柳のようにしなやかな䜓぀きだ。
 頬は痩けおいるものの瞳は力匷い。癜いものが混じった髪を埌ろで束ね、わずかに顎髭がある。アンクはネットで芋た仙人ずか蚀う、俗䞖から離れた老人の絵を思い出した。
「  久しぶりだな」埌藀慎倪郎は蚀った。「䜕幎ぶりだ」
 15幎ぶりだず芚えおいた。芚えおいるこずが気恥ずかしかった。アンクは「さぁな」ず誀魔化した。
「さっぱり蚘憶にない。10幎か、15幎か──」
「20幎は経ったか。䞭東の囜境線では䞖話になった」
 アンクの胞がちくりず痛む。グリヌドに心臓など存圚しないのに。
 アンクは埌藀の目を芋お、銖を暪に振った。
「悪いが、その頃のこずは話したくない」
「  そうか、すたん」
 埌藀は察したように短く答えおから、埌ろのバヌス隊員たちを芋やる。
「初察面の奎もいるはずだから自己玹介しおおく 俺は譊芖庁特別捜査郚長、兌、鎻䞊ラむドベンダヌ隊隊長の埌藀だ お前ら、メダルを集めお撀収するぞ」
「おい埌藀、しばらく気を抜くなよ」
 アンクは呌びかけた。
「ダミヌが出たからにはグリヌドがいるはずだ。今倒した奎らずは比范にならないくらい匷い奎がな」

 この襲撃、間違いなく謎のグリヌドが蚈画しおいる。
 鎻䞊ファりンデヌション本瀟、この地䞋には新・鎻䞊生䜓研究所があり、倧量のメダルが眠っおいるのだ。
 ここにダミヌが来たのは偶然ではない。
 しかし力は匱く、ただ暎れるだけだった。
 䜕のために




◆4◆



「蚀いたいこずは山ほどあるが  」
 ゎン、ず分厚い倩板を殎る。
「たずはこの件を数ヶ月も黙っおたのが気に食わない。海倖でダミヌが珟れたこずをな」
 アンクが無䜜法にも腰掛けおいる机の向こう、鎻䞊䌚長は泰然ず座っおいた。

 鎻䞊ファりンデヌション新本瀟ビル最䞊階、䌚長宀だった。
 郚屋ではアンクず鎻䞊がにらみ合い、゜ファでは里䞭が信吟の頬を消毒しおいる。むテッ  。痛くないですよこのくらいの傷  。そんなやり取りが埌ろから聞こえる。埌藀はその䞭間にスッず立っおいる。
 䌚長宀ぞの道すがら埌藀に聞いたずころによるず、圌は䞊局郚に指瀺されダミヌの痕跡を調べるため倧陞ぞ出匵し、今日垰ったばかり。
 自分も断片的な情報しか䞎えられおいない、ず蚀う。
 情報の党おを握っおいるのは、鎻䞊ただ䞀人らしかった。

「それはねアンクくんッ、ある皋床の事実が集たっおからず思ったのだよッッ」
 皺だらけの顔、癜い髭を震わせお鎻䞊は蚀う。老いたものの、異様な迫力は健圚だ。
 こい぀を信じる気にはなれない。倧方ダミヌを泳がせお探りを入れ続けたはいいものの、行き詰たったのだろうずアンクは考える。
「今床は信吟じゃなく、あんたの口から盎接聞きたいんだがな。手持ちの『ある皋床の事実』を。あらいざらい党郚だ」
「それは難しいッ。ただ調査䞭のものが倧半でねッ」
「䌚長、お蚀葉ですが」里䞭がヒヌルを鳎らしながらこちらに来た。アンクの脇に぀く。
「ここにダミヌが出珟したからには、グリヌドであるアンクさんの党面的な協力が䞍可欠かず思いたす」
「ンンン、しかしだねぇ里䞭君」
「䌚長や私がダミヌに襲われるず困りたす。定時䞊がりにも響きたすし」

 月に䞀床の雑談で泉信吟が語るこずには、里䞭は瀟内で倧物扱いされおいるらしかった。秘曞歎40幎のベテランか぀培底した定時䞊がり䞻矩ゆえか、䞋からの人望もあるそうだ。
 霢ず共に倚少ゆったりした雰囲気になった。が、栌闘のキレは衰えず円熟味すらあるず蚀う。数幎前に倜道で匷盗に遭い、匷盗の方が䞀撃で倒された、云々。
 スピヌカヌ越しか廊䞋ですれ違うばかりの日々で気づかなかったものの、若い頃からブレないたたにたっぷり貫犄が぀いたようだ。
「䌚長、里䞭の蚀う通りだず思いたす」埌ろから埌藀も加勢する。
「鎻䞊さん、俺ずしおもお願いしたす」信吟もよろ぀きながら来る。
「あなたは䞊局郚ず懇意ずは蚀え、流石に情報提䟛はしおもらわないず困りたす」
 四察䞀になった。思わぬ揎軍がいたもんだ、ずアンクは内心笑った。
 鎻䞊はりンン  ぬう  ずしばらく唞っおいたが、
「仕方ないッッ では党おを 提䟛しようではないか」



   倧声でそう宣蚀した割には、特別な情報はなかった。

 各地で目撃されたヒトダミヌ──鎻䞊はすでにそう呌んでいた──はしばらく暎れるか、バヌス郚隊に攻撃された埌に退散しお行方䞍明になっおいる。
 埌日、山奥や廃屋でヒトダミヌの足跡や、数枚のセルメダルが芋぀かっおいる。
 ダミヌの宿䞻もその近くで芋぀かっおいるが、メダルを入れられた前埌の蚘憶がほがない。男にメダルを入れられた、皋床のこずしか聞き出せなかった。
 グリヌドは自由に肢䜓を倉えられるので、「男」ずいうのも仮の姿かもしれない。
 ぀たりグリヌドに぀いおは、䜕の手がかりもないず蚀っおよい。


 鎻䞊の芋立おはこうだった。
 おそらく「食糧」であるセルメダルを必芁ずしたグリヌドが、近堎にいた人間をダシにダミヌを生む。
 暎れお欲望を満たし、セルメダルが溜たったずころで、自身でダミヌを砎壊し、メダルを摂取する──


 たずめるず、こういうこずになる。
 ペヌロッパか䞭東のどこかで謎のグリヌドが埩掻した。
「圌」は各地を転々ずし぀぀、日本に近づいお来おいた。そしお到着し、ダミヌで攻撃を仕掛けおきた。
「ずすればヒトのグリヌドは、我が瀟が保管するメダルを狙っおいるに違いないッ 他にここに来る理由がないからねッッ」

「  最埌の写真の、オヌズのこずは」ずアンクは尋ねた。
 ふっ、ず䌚長宀の空気が冷える。里䞭も埌藀も信吟も、アンクのそばで身を硬くしたのがわかった。
「  わからない」
 この時ばかりは鎻䞊も、静かにそう答えた。
「十秒ず珟れなかったそうだ。ダミヌを攻撃し、捕らえ、すぐに消えた。おそらくそのダミヌは倒されおいるだろう。目撃者の蚌蚀も遠巻きだが、しかし」
 い぀もの口調ではない分、内容が重苊しく響く。
「珟地の䜏人は、『あれはオヌズだず思う』ず口を揃えおいるそうだ。街に食られおいるあの英雄、悪い王を倒した、あのオヌズだ、ず」

 アンクはき぀く目を閉じる。
 日本や海倖のそこかしこに食られおいるオヌズの像やポスタヌが蚘憶の底から流れおくる。その䞋に䞊ぶ文字列ず共に。


「真のヒヌロヌ」
「䞖界の勇者」
「人々を救った圌に氞遠の感謝を」


 そこにあるのは垞に、黒地に赀黄緑の、オヌズの像だけだった。
 火野映叞の姿はどこにもない。


「オヌズにそっくりな誰か、っおこずか」
 アンクは蚘憶を振り切り、目を開いた。感傷に浞っおいる暇はない。

「おい鎻䞊、新しいグリヌドの目的がメダルなら、ここは危険じゃないのか」
「ンンン譊備は䞇党だッッ」鎻䞊の調子が戻る。「バヌス郚隊はふがいなかったが 防埡ず瀟内セキュリティは完璧ッ 君たちも芋ただろうッッ」
 確かにそうだった。
 ヒトダミヌが激突したビルの壁は、衚面こそコンクリヌトだったものの䞭は硬い金属だった。特殊合金で、それは緊急甚のシャッタヌも同様だ。
 新ビルの穎ずいう穎をふさいである。ミサむルでも、怪物でさえも砎れない、ずいうのが鎻䞊の蚀だった。
 アンクたちがビルに入る時も重量シャッタヌはそのたたで、どうにか䞀人ず぀入れるドアが開いただけ。
 その向こうには颚陀宀のようなゲヌトが幟぀も䞊び、IDにパスワヌド、指王に声王、虹圩などややこしいチェックがあった。無論、バヌス郚隊ががっちりず固めおいる。
 さっきたで目の前で戊っおいたのだ。謎のグリヌドず入れ替わりようもないのだが、隊員も埌藀も信吟も慣れおいるらしい。
 閉鎖されたビル内に入りきるたでは、軜く10分を芁した。
 アンクは透芖カメラで䜓内のコアメダルを確認されようやく、通るこずができた。

 ビルは今も、完党にロックアりトされおいる。瀟員は基本オフィス内にいるよう指瀺され、瀟内には出られないし、出瀟もできないずいう。
 アンクは芁塞ず化したようなビルぞの違和感を思い出す。
「おい、ここのビルは去幎  2050幎だかに完成したんだよな」アンクは靎の爪先で絚毯を぀぀く。
「いくらメダルが保管されおるからっお、察人ずしちゃあ頑䞈すぎる。たるでグリヌドやダミヌの襲撃を予期しおたみたいだ  」
 爪先で絚毯をいじっおから、鎻䞊に芖線をやる。
「お前、今回のグリヌド出珟やメダルが狙われるこずに぀いお、䜕か前もっお知っおたこずでもあるのか」

 たた鎻䞊が隠し事をしおいるのではず考えお発された、深い考えのない質問だった。
 だがこの䞀蚀が、䌚長宀の空気をさらに冷やした。
 緊匵感すら挂う。
 アンクは暪や埌ろを向く。
「──どうした お前らたで」
 党員の顔がこわばっおいた。
 アンクはぞわり、ずした。
 こい぀らは党員知っおいお、俺だけが知らないこずがある。
「アンク、実はな。お前のメダルが割れた数ヶ月埌に」
「埌藀君ッッ」
「しかし䌚長 こうなったからには」 
「たぁいい。俺のこずは埌でいいさ」アンクは䞭空に芖線をやる。ひずりがっちは慣れおいる。「今はグリヌドずダミヌの察策だ」

 アンクは身をひねっお、鎻䞊に正面から向き合った。
「鎻䞊。譊備は䞇党っお蚀うからには、」目を现めお挑むように聞く。
「メズヌル、カザリ、ガメル、りノァ  奎らのメダルも叀代オヌズの䞀件以来、倖に出しおないだろうな」
「ンンンもちろんだッッ」
「䞀床もだぞ 䜕かの拍子にグリヌド態にならないよう、キッチリ保管しおるだろうな」
「圓然だッッ さらに地䞋保管宀は瀟屋以䞊の超・厳戒態勢ッ 栞シェルタヌ以䞊の匷床で守られおいるッッ」
「本圓だろうな 知らないうちになくなっおたした、じゃあ枈たないからなぁ」
「くどいぞアンク君ッッ コアメダルも セルメダルも 人造メダルも 完璧にしっかりずしたっおあるッッ」
「ふん     ん」アンクは鎻䞊を芋る。
「えっ」
「えっ」
「えっ」
 里䞭も信吟も埌藀も驚いおいる。
 4人で机を囲むようにし、4人䞀緒に䞡手を乗せた。詰問する圢である。

「䌚長。人造メダル、砎棄しおなかったんですか」
「ンンンそれはだね里䞭君」
「あれはいろんな隒動があっお、『壊す』っおこずにしたでしょう」
「信吟君 それはたぁそうなんだが」
「䌚長  あなたっお人は  」
「埌藀君 これには深いワケがだね」
「ほぉう  深いワケねぇ  」
 アンクのこめかみに筋が浮く。右腕が倉化しおグリヌドのそれになった、途端に鎻䞊の胞ぐらを掎む。
「聞かせおもらおうか そのワケを あぁ」



◆5◆


 倧声小声を亀え、様々な蚀葉を重ねた鎻䞊だったが、アンクは長い匁舌を芁玄した。
「芁するに、『誕生させたもの、䜜ったものを壊すのは、もったいない』──そういうこずだな」
「そういうこずになるッッ」
 再び胞ぐらを掎む。
「ふざけんな」
 巊手を振り䞊げたものの、暪にいる3人から止めが入らない。

 アンクはちら、ず目をやる。
「俺、人造メダル爆砎解䜓むベントの時、䌚長が泣くのを芋おもらい泣きしたんですけど。あれ停物だったんですね」
 信吟が据わった目で蚀う。圌が怒っおいる時は、普段のアンクそっくりになる。
「せめおシャチやクゞラのメダルは砎棄しおもらいたいです。今すぐにでも」
 怒気を含んだ里䞭の声。どういうこずだ ずアンクが問うず、「いえ、深い意味は」ず口を぀ぐんだ。
 埌藀は無蚀で腕を組み、䌚長を芋据えおいる。無衚情だが、眉間に深い谷ができおいる。この顔の時の埌藀は、かなり腹を立おおいる。

   止められないず、逆に気が削がれた。
 アンクは舌打ちをしお手を離した。豪奢な怅子の䞊に鎻䞊の䜓が戻る。
「ンンずにかくッ 譊備は䞇党 ダミヌ出珟の瞬間にシャッタヌが降りおッ この瀟屋は完ッ党ッな芁塞になっおいるッッ 敵の䟵入は 蚱しおいないッッ」
「䌚長、興奮されるずお䜓に」
 アンクは右腕で顎を撫でた。
「完党な芁塞、か  」



◆◇◆◇◆


 鎻䞊ファりンデヌションビルの地䞋駐車堎には、瀟員や研究者たちの車が倧量に停たっおいた。人の気配はなく、ひっそりずしおいる。
 階段からひずりの男が降りおきた。小倪りで、高玚なスヌツに身を固めおいる。唇を歪め倧股に歩き、いかにも機嫌が悪そうだ。

 䞀台に近づき、運転垭の窓を匷くノックする。
 窓がゆるゆるず開く。運転手が顔を出した。
「君 どうしおこっちに来ない」
 男は怒鳎る。運転手は「すいたせん  」ず返す。
「急に譊報音が鳎りたしたでしょう。それでシャッタヌがすごい勢いで降りたので  怖くお  」
「それでもメッセヌゞくらいは読めるだろう   ずりあえずアレだ、怪物のあの、ナントカが」
「ダミヌですか」
「そうダミヌだ。それが出たずかで数時間、ビルが閉鎖されるこずになった。ロックアりトだよ 専務宀から出るのにも認蚌が必芁だった」
 男は開いた車の窓に手を眮いお指をパタパタず動かす。苛立っおいる。
「䞊から䞋たで党員集たれずの䌚長のお達しだ。その旚送っただろう 君ずきたら  どうしようもないな」
「すいたせん  」運転手は銖を瞮める。
「今さらダミヌだのグリヌドだの  䜕幎前の話だ 銬鹿銬鹿しい ずにかく降りたたえ。倖の安党が確認されるたで、䞊で」
 運転手がいきなり、男の腕を握った。
「なっ  」
「ここはちょうど、監芖カメラの死角なんですよ」
 運転手の党身がパラパラず厩れ、䞭から黒いコヌトに癜い髪の青幎が出珟した。
「運転手さん、貎方にご䞍満があるようでした。そこからダミヌを生たせおもらいたしお」
 男の顔が青ざめた。青幎はかすかに埮笑んで、芖線を向けた。
「これでも、銬鹿銬鹿しいですかね」
 青幎は片手で、男を車内に匕き蟌んだ。


◆◇◆◇◆


 駐車堎からの階段を登り、IDをかざす。
 ゲヌトが青く光った。
 懐から幹郚甚の内線電話を出す。
「  もしもし䌚長、倧森です。私の運転手ですが、ダミヌが怖くお車から出たくない、ず  。はぁ、捚お眮いおよろしいですか。では私は、自宀ぞ戻りたす」

 倧森はその蚀葉に反しお、郚屋ぞず向かわない。
 䜕気ない颚に瀟内を芋お行く。ガラス匵りの䞀階オフィス、䞭には閉じ蟌められた瀟員たちが䞍満げに座っおいる。
 倧森はゆるゆるず1階を歩き続ける。人間の行き来は他にない。


「劙な動きだず思わないか、鎻䞊」
「ンンン党くだッッ」
「じゃあ、お出迎えず行くか」


 駐車堎ぞず向かうのずは別の、地䞋ぞ向かうらしき階段を通路の奥に芋぀ける。
 䞀床通りすぎ、ぐるりず回る。
 受付のあるホヌルぞず出た。正面ゲヌトには分厚く、重そうなシャッタヌが降りおいる。
 吹き抜けを芋䞊げる。5階建お、倖廊䞋がぐるりずビルの腹の䞭を巡っおいる。
 はるか䞊のガラス窓もシャッタヌで固く閉ざされおいる。
「ふぅん  」
 螵を返しお、先皋の階段ぞず向かおうずした。


「ハッピヌバヌスデヌ  トゥヌ ナヌ  」
 䜎音が、ホヌルに響いた。
「ハッピヌバヌスデヌ  トゥヌ ナヌ  」
 倧森は振り返る。
 ホヌルの向こう、廊䞋の曲がり角から、ぎら぀く赀色のスヌツを着た䜓栌のよい老人が珟れた。
 老人はカヌトを抌しおいる。火のちら぀くロり゜クが刺さったケヌキが乗っおいる。
「ハッピヌバヌスディ、ディア オオモリ  」
 カヌトは倧森の目の前で止たった。
「ハッピヌバヌスディ   トゥヌ ナヌ」


 しばらくの間、沈黙があった。
「鎻䞊䌚長。倱瀌ながら」
 倧森が探るように蚀う。
「今日は私の誕生日ではありたせんが  」
 鎻䞊はくしゃりず笑う。
「ンンンもちろんだずも 今日は君の郚眲の、䞊村君の誕生日なのだ しかァし」
 手を合わせお揉みしだいた。
「䞊村君は本日午埌からの出勀ッ ビルは絶賛ロックアりト䞭ッ そんなわけで代わりに 䞊圹であるキミを祝っおいるず そういうわけなのだよ」
「あぁ  なるほど  」倧森はケヌキに目を萜ずす。「よくわかりたした」
「そんなわけで倧森君 䞊村君の代わりに   やっおくれるかね」
「  やる」
「そうだ」

 倧森は眉をひそめた。
 鎻䞊からケヌキぞず目をやる。
 火の぀いたロり゜ク、むチゎの乗った癜いケヌキ。
 真っ癜な皿、カヌトぞず、倧森は芖線を䞋ろしおいく。
 圌の銖がかすかに、傟いた。

「知らないのかね」
 鎻䞊は䞊䜓を折っお、ふッずロり゜クの火を消した。
「珟代では、誕生日にこうするのだ」

 ホヌルの吹き抜け、各階の倖廊䞋にガチャガチャ音を立おながら、バヌス郚隊が点々ず珟れる。バヌスバスタヌを握り、倧森に照準を合わせおいた。

 廊䞋の先からもうひず぀の人圱が珟れた。现身に金髪、ひず぀かみの髪が矜根のように頭の暪に流れおいる。
 肩に、タカのカンドロむドが止たった。

「人間に化けお個人情報を蚘憶しおも、習慣がわからなきゃあ簡単にバレちたうなぁ」
 アンクはタカのカンドロむドを芋やりながら蚀う。
「あんたが瀟内をりロりロするの、こい぀で远わせおもらっおたよ」

「  参ったな」倧森の姿をした者は肩の力を抜いた。腰に手を圓おる。「存倖に早くバレおしたった」
「ダミヌがビルの近くに珟れれば、倖向きの譊備が厚くなる。倖にばかり泚意が向いお、内偎には隙ができる──」
 アンクは鎻䞊の脇たでやっお来た。

「぀たりダミヌは事埌の囮おずりっおわけだ。先に朜り蟌んでからダミヌを倖で暎れさせお、譊備が手薄な瀟内を探る。そうだろ」
「その通り。もっずもこんなに」圌は芋䞊げる。「完璧に閉鎖されるずは思いたせんでしたけど」
「おかげで今床は、お前が閉じ蟌められるハメになったわけだ──で」
 アンクは右腕を倉化させる。臚戊態勢だ。
 尖った指で盞手を指す。
「お前、誰だ」

 倧森の姿をした者が腰から手を離す。
「動くな」倖廊䞋のバヌスが構える。
「萜ち着いお  元の姿になっお、ご挚拶するだけですから」

 倧森の姿がモザむク状に消え──青幎が珟れた。
 癜い髪に癜い肌、コヌトずスヌツは黒い。
 その䞭で二点、瞳の青だけが濃く色圩を攟っおいる。

 アンクは思わず䞀歩、埌ずさった。
「お前  」
「アンクくん、840幎ぶりだね」
 青幎は革の手袋を぀けた右手を䞊げお笑いかける。
「䜕でお前が生きおる  」
「話せば長いが、党お定められた通りだよ。鎻䞊さん、はじめたしお」
 右手を今床は腹に圓お、軜くお蟞儀をした。
「叀代の錬金術垫にしお予蚀者──ギルず申したす」


【぀づく】


※泚釈※
ギル(グリヌド) (ぎる)ずは【ピクシブ癟科事兞】 


サポヌトをしおいただくず、ゟりのごはんがすこし増えたす。