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おばあちゃま

1.呼び名

102歳で天国へ旅立った私の父方の祖母。
私の大好きな「おばあちゃま」

父方の血筋は、なぜかこの呼び名が代々続いている。

もちろん私の息子たちも、両親を「じいちゃま、ばあちゃま」と呼ぶ。

幼い頃は何の違和感も無く呼び、物心がついてくると、ちょっとよそと違う呼び方なのだと気づき、人前だけで「おばあちゃん」などと呼んだりする。

そしてまた、そこを通り過ぎるとその呼び名がかわいらしく、素敵で、格好良くて、誇らしくなる。

明治の時代から一世紀を駆け抜けた、そんな私たちのおばあちゃまの話をしたい。

2.ルーツ

彼女の生まれはなんと、私が現在住む兵庫県なのである。おばあちゃまは神戸のとある町から遠く離れた九州へ嫁いでいったということになる。

一体、当時どういう縁で、そんなにも離れた土地の縁談がくるものか予想もつかないのではあるが、とにかくおばあちゃまは故郷から遠く離れた地方へ嫁ぎ、人生の大半を九州で過ごすのである。

この彼女のルーツに置いては、あっさりと書き記すに勿体ないほどのストーリーがある。脚本の才能があるならば、渡る世間の次は担えるほどのストーリーだと。

親族の誰もが、心の中でそれに似た感情は持ち合わせているのではと感じている。

しかしもってそういう技量も時間も私にはないわけで、ただただ彼女との思い出話を書き連ねることとしたい。

3.小町

幼き頃に、何度も何度も何度も聞かされたパワーワードがある。意味も分からない時分から、私の脳裏にはその言葉が染みついた。

「あたしゃ〇〇小町て呼ばれとった」 

おばあちゃまがかつて孫たちに散々説いた言葉を要約すると、その地区でダントツでぶち抜きの美人だったんだと。そう豪語していた。
それが小町というのだと。

おばあちゃまが過ごした神戸の一角。とある小さな地区である。
何故知っているかというと、大学時代に突如己のバックボーンが知りたくなり、耳にタコができるほど聞かされた、その場所を訪れた事があるからだ。

その地区で、誰もが振り向くほどの美人だったらしいおばあちゃま。血筋と言えど、決して美人とは言えない自分も、なんだか誇らしい気持ちでそこを目指したのである

私は確か20歳弱だったろうか。

少し胸を張ってその土地におりたった。

ここが、おばあちゃまの故郷。

そして、小町と呼ばれた彼女の華々しい瞬間を、身をもって感じながら歩いてみた。

ものの十数分そこらであっけなく回り終えた。

何とも激狭地区。

いや、これは勝手に想像していた私が悪いのである。

まさか、憧れに憧れた、ミス小町。

ミスジャパン。いや、ミスユニバース。

そんな規模で空想を広げたのは私である。

私は逆におばあちゃまが愛おしくなった。

「散歩圏内小町」

を孫にミスユニバースレベルで植え付ける事ができていた。

してやったりの大成功である。

ここまで来たのならば、私も絶対の自信を持って、おばあちゃまは小町だったと自慢したい。

と強く思った。


-----つづく-----

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