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「自選の10」

渋皮ヨロイという筆名は、溜まった掌編のいくつかをnoteに公開するために、新しくつけたものです。ここで作品をあげるようになって、早いもので6年ほど経ちました(つまり、渋皮ヨロイとして6年目ということになります)。

その間に作品も溜まってきたので、はじめて私のことを知っていただく方に、どれを読んでもらいたいかなあ、と考えながら、10作、自選(自薦)のものをまとめてみたいと思います。

作品の中身をほとんど解説することはないと思いますが、どのような背景で(何向けに)書いたのかとか、状況的なことに触れつつ紹介できれば、と考えています。

いくつか読んだことがあるよ、という方にも未読のお話もあると思います。これを機に、新たなお気に入りの作品を一つでも見つけてもらえたらうれしいです。

全部読んでもらえないにしても、軽く数行、数語、触れていただけるだけでもありがたいですし、こういうの書くんだな、という、なんとなくの感じを知ってもらえたら、それもまたうれしいです。


1.「墓標」

noteに掌編をあげているうちに、BFC(ブンゲイファイトクラブ)というものがあることを知り、それで(BFC2に)応募した作品。

掌編は好きだけれど、6枚、という長さをはっきりと意識して書くことはなかったので、そこに挑戦しつつも、かなり納得できるものを書けたと思う。

もう少し変えたいところはあるのだけれど、これで本戦に出られたので、こういう書き方でいいんだ、という自信にはなった。
本戦でもう少し注目されたかったけれど、何か埋没してしまった感じがする。決して酷評された感じはないのだけれど、インパクトもなく、さらりと流されて終わっていた、という印象だった。
ただ、同グループの由々平秕さんが高く評価してくださったのがうれしかった。

また、BFC本戦をきっかけに、ツイッターで渋皮ヨロイのアカウントを作った。はじめ、どういう感じで振舞えばいいのかわからず、丁寧なですます調で始めてしまい、そこからずっとその口調が基本になっている(無理しているわけではないのだけれど、崩したいときも崩せないでいる)。
あと、最初は(今も公言していないが)性別を特定されるような書き方をしたくなかった、というのもある(一人称の作品でも、私とわたしと俺と僕、などで書くから余計に作者の色は出したくなかった……徐々に漏れて、今やびだびだだけれど)。

ともかく、これはこれでよくまとまっていると思う。特徴がよく出ている。なのでやっぱり好きな作品。
難解ではないけれど、はっきりと説明しないままで終わるので(拙作のほとんどの特徴だと思うが)、好みは別れるだろう。その感じ、BFCという場でも思い知らされることになった。
ただ、書いていて、最後のあたりで、オムライスに国旗、というところがつながったとき、やった! と思ってうれしくなった記憶がある(散歩中だった)。
この時期のような書き方は(具体的にどうというわけではないが)、今やしないし、もうできないと思う。ただ、本人以外からしたら、全然変わってない、と思われる気もする。


2.「うりふたつ」

ブンゲイファイトクラブに出るまでは、その関連イベント、イグBFCや、幻の二回戦作(まぽつー)、みたいなものがあるのも知らなかった。

イグがあることを知ったときは、これもまたいいところまでいけるのではないか、という淡い期待と自信があった。そして参加するときは「大喜利小説」にしよう、と決めていた。これが自分の武器だと思った。

個人的な捉え方として「イグイコールおもしろ」「おもしろとはお笑い」みたいな感覚があるので、おもしろいのを書きたい、書いてみせる、という強い気持ちで臨んだ。
まずは、ちゃんと6枚で小説として完成させて、そこで大喜利の話をしておいて、最後の最後で絵をつけて(フリップ)そのインパクトで終わる、ということを狙ってみた。イグは投票なので、この終わり方は強いのではないか(もちろん、ちゃんと小説と、大喜利がおもしろければ)、という思いがあった。
この作品は準々決勝まで行ったのだけれど、実態とかけ離れたような異常な投票数、とか、イグが最も混沌とした時期でもあって、いろんな波に晒された中、負けた記憶がある。

この大会で旋風を巻き起こした(すべてを吹き飛ばし、なぎ倒し、優勝する)衝撃の作品、吉田棒一さんの「飯塚」と戦いたかったな、とあとから思ったし、翌年以降のイグは、打倒棒一、という険しい過ぎる道を目指すことになるのだった。

それにしても、この最後のイラストの答え、やっぱり大好きだ。完璧ちゃう? と思う(まず、お題がいい)。
私には絵のセンスがまるでないので、このnoteのカバー絵の多くと同様に、知人のイラストレーターの方にお願いしていて、この大喜利のフリップ(翌年以降も)も、そうなのだが、そのおかげで、イグを戦えている。ありがたい。


3.「僕はたけのこを傷つけない」

イグBFC3用に書いた作品。
前年の「うりふたつ」でイグでいい結果が出なかったことで、次回はもう「大喜利小説」の形で勝負はできない、と覚悟していた。最初のインパクトで勝てなかったら次はない。
そうなったとき、次に取る方向は二つあった。小説の形をとって、変てこな(でも私のことだから、リーダビリティがあって、ちょっとおもしろい、秀作、みたいなお話)作品を書くか、もう大喜利だけにしてやろうか。

結果、ビーズ(あえてカタカナで書く)らしき二人が会話をして、そこから大喜利みたいなことをする(かっこいいたけのこの里の見せ方、というようなお題)だけの話なのだけれど、これはもうずっとフリップを使うことにした。ちゃんと、少しずつ、答えが飛躍している、段階を踏んでいる、丁寧な並びにしているのだけれど、単純に並列的に見たとしても、どれか一つでも、どなたかにはまるような内容にもしている、つもりだ。

これは応募後、レギュレーションの問題で、一度、本戦に出られない、という判定が下ったのだけれど、そのおかげで同情の声があがったというか、その時点で、いろんな方に触れてもらえたこともあり、結局、本戦に出られるようになってからも調子がよかった。
このままなら決勝で勝てるな、と思ったけれど、準決勝で負けてしまった(前年王者棒一さんがすでに負けていたので、よりチャンスがあると思っていたのだけれど)。まだ優勝いけたんじゃないか、と思っている。

それでもnoteにあげた作品で一番反響があったかもしれない。書いてよかった。

例によって、イラストはお願いしてある。ありがたい。アイデア(というか、下手過ぎるラフ)はすべて伝えるのだけれど、想像以上のものが仕上がってくる。このカバー絵なんて、大好きだ。

この作品を書く過程を描いた「僕はきのこだけを傷つけない」も読んでみてほしい。これはかなりしっかり書いたので、合わせて読むとより楽しんでもらえるかも、と思っている(長いけど)。


4.「ペノキヨ」

そしてイグ4である。正直、イグに関しては優勝してさくっと卒業したいと思っている。正直、読者投票、精神的にきつい。そういう思いはある。

けれど、やっぱりイグ優勝の称号はほしいな。
この先、どれだけ尻すぼみになっても、過去最高の大盛り上がりを見せたイグ2優勝(吉田棒一)とイグX優勝(渋皮ヨロイ)って横並びにしたとき、ぱっと見、全然(大会の盛り上がりとか熱とかの)違いがわかんない感じで、雰囲気だけで、おお、って思わせられないかな、みたいな。

というわけで、前回でもう大喜利はやめたので(また何かいいフォーマットがあれば書くけど……って結局イグに出るのか、って感じだけど)、どうするのか、何を書くのか、と考えたときに、大喜利のお題を使った設定で書くことにした。
詳しくはまた執筆の顛末を書いた「ペノキヨができるまで」を参照してもらいたいのだけれど(これも超長い)、ピノキヨの嘘で鼻が伸びなかったものとは、みたいなお題から、お話を作った。そこから逆に、伸びがすごい嘘とは、という前提にシフトチェンジして考えた。

これもきちんと大喜利を踏まえつつ、優等生的な「物語」を書けたので(そういうおさまりのいい話にしてしまうところ、そういうものしか書けないところが、私がイグで突き抜けない理由だと思う)、一応、満足はできた。ただ、どうしてもジェネレーションギャップがある内容を出してしまって、その調整を少しはしたのだけれど、どうしてもある種の世代向けに偏ってしまっている、感じもある。

そして、念願かなって決勝まで進むことができたし、ここでもいろんな人に読んでもらえたとは思うのだけれど、結局、勝てなかった。できれば、優勝してもうイグを卒業したかった。

棒一さんにさくっと(涼しい顔で)優勝(二年ぶり二回目、ですって!)をかっさらわれた。悲しかった。序盤はいい勝負をして、拙作が勝っている時間もあって、これはいけるかも、と期待していたのだけれど、じりじり差が開き、もう前日くらいには、大勢決していた。
まあ、ここは二位で終わるか、準優勝を名乗ってやっていくか、と思っていたのだけれど、残り十分くらいまで、ああ、二位だな、という状況を確認していたのだけれど、最後、怒濤の勢いで二位の座すら抜かれていた。
これは切なかった。

それでまた、投票しんどい、という思いをまた強くしたのだけれど、結局、イグが開催される限り、私はまた懲りずに立ち上がるのだと思う。でももう本当に何を書いていいのかわからない。

それでもイグに3回出した作品を通して、こういう形の大喜利だったり、それを踏まえたお話だったりを書けるのは(みんなやらないだけだけど)、私だけではないのか、という自負はある。


5.「ゴリラを焼く」

渋皮ヨロイのアカウントを作り、ブンゲイアカウントみたいなフォロワーもいることにまずは驚き、そういう方々がこれまで知らなかったタイプの公募に向けて書いていることを目の当たりにする。
そういう中で、さなコンやかぐやSFなどの、オンライン上で展開されるSFの賞に出会う。

まるでSFを通らないで生きてきたので、それっぽいものすら書いたこともなかったし、書けるとも思わなかった。
ただ、さなコンなら最初の一文、かぐやSFならテーマ(未来の○○)があることで、興味がわいた。おもしろそうだった。ちょっと挑戦してみよう、という気持ちになった。

三題噺ではないのだけれど、そういう縛りがある中で書くものが好きだ。いつか、三題噺の公募賞を開催してほしい(ないなら自分で主催してみたい)、と思うくらい、好きだ。

というわけで、はじめて書いた、(お恥ずかしい限りだが)SFのつもりのお話。
これは「未来の色彩」というテーマだった。
ゴリラ、バナナ、黄色、みたいな感じで、未来から妻がゴリラの姿になって戻ってくる、その遺体を焼いたら黄色い煙があがる、みたいな柱だけはすぐ思い浮かんで、その感じが好きだったので、書いてみた。

今でもSFの公募用に書くものは、お恥ずかしい限りで、設定とか、根本的な科学の知識が欠落していることを自覚しているのだが、この作品は特に恥ずかしい。何がポッドだ、と思う。何が、フューチャープランだ、と思う。
でも、そういう「考察」を抜きにしたら、お話としては個人的にはやはり好きだ。というわけで、今回のラインナップに入れてみた。

お題と最初の一文、みたいなところで、強いインパクトを与えたらいいだろう、という確信だけで、突き進んでいる。その潔さもまたよい。


6.「マカロニ」

初期作の中で、かなり気に入っている。

何かしらのオブセッションでもあるのか、というくらいに、よく妻が出て行く話を書く。これもその「ひな型」みたいな作品だ。
タイトルは奥田民生のマシマロみたいに、本文とは(あまり)関係ない、ものをつけられたらいいな、と思っていて、マカロニペンギンがちょうど出てきたので、そういう感じにした、という記憶がある。

また、今と少し文章の感じが違うかもしれない。密度が緩いというか、隙間があるというか。
やはり、最初の一文、一行ありき、みたいなところからお話が始まっている。
ビスチェこうてこいや、と犬が言う、という出だし(やはり妻は不在)。
先の展開や終わりも何も考えていないまま、そこから自分でもどうなるかわからずに書いている。そういう書き方が好きだし、こういう短いものだと、それで書き切ることが多い。
BFCとかほかの賞とかのことを考えず(そういう存在を知らない時期に)書いたものだから、とことん楽しんで、自由に書いている。
そういう意味でも、今回のラインナップの中でも、一番好きかもしれない。


7.「メロウイエロー」

「エッチな小説を読ませてもらいま賞」という言葉がツイッターのタイムラインで踊っていて、なんだこれは、と思った。
暴力と破滅の運び手さん主催の企画なのだが、渋皮ヨロイという名前ではあまり直接的な性的なシーンや表現をしなかった。
そういうものをやたらと、これが「文学だぜ」ではないけれど、意図的に書いていた時期もあったのだけれど(いやですね)、そういう書き方はずいぶんしていない。
けれど、性的なものを扱えてこそ、という思いはあるし、やるからには自信もあったので、書いてみた。

決めていたことは、文中で性器を出さない(この露出狂めいた物言いよ)、それの一環でとにかく直接的な表現をしない(えっちな賞だからこそ、そういう濃厚でえろえろな描写や設定の小説が多く集まると思った)、あとは彼と彼女と性別を特定する表現はしない(まあ、読めばわかるのだけれど、絶対的に規定はして書かない)、ということだった。

何故ボウリングの話を書いたのかはわからない。ボールとピンは、もうあれのメタファーじゃん、みたいなことを思ったのかわからないけれど、それでもやりすぎないようしたつもりだ。

自分でもあまり書かないタイプのお話になった。だから思い出深い。
結果、特別賞をいただいたので、ものすごくうれしかった。そしてそれが文フリなどで販売されたのもありがたかった。
講評で、きっと、意識していた二点について触れられると思ったけれど、それはなかった。だとしたら、何がよかったのだろう。それがわからないから、上達しないのかもしれない。

改めて読み返してみたら、やっぱり変な話だな、と思う。文章はかなりタイトにしたけれど、不思議な抜け感がある。
何かの粉(ネタバレ?)を舐めるところはやりすぎだろう。今ならそう書かない。

個人的につやつやとしたものが好きなので、イエローのボールが欲しい。
カバー絵のつやつやのボールを見るだけで、わくわくしてくる。


8.「供物」

阿波しらさぎ文学賞というものがあると知ったとき(これもフォロワーの方が応募していて、それについてつぶやいていたことで知った)、身内や友達が何人も阿波踊りをやっていて、かなり馴染みがあるので、いつか賞が取れるのではないか、と思った。本場の阿波踊りを見に徳島へ行ったこともあった。
前段の文章の前半と後半には何のつながりもないような気がするけれど、個人的に親しみがある土地とその代名詞(阿波踊り)なので、この賞は書きやすいのではないか、と思った、ということだ。

というわけで、もちろん、阿波踊りについて書いた。

けれど、すでに阿波踊りに関する内容のものが受賞作になっていて、まさに、レッドオーシャン的題材だった。しかもコロナに関する話だったので、それもまた一年遅かった。
「どうやったって」という作品でnoteにもあげている)

一次を通ったけれど、その先に進めなかったので、やはりもう阿波踊りだとか、コロナとか、そういう題材を扱うならば私の力量では抽んでたものは書けない、とわかった。

わかったのに、また翌年は、、という作品で、阿波踊りに出かける夫の話、を書いたのだった。
これは一次もだめだったと記憶しているので、やはりもう阿波踊りは無理だ、と悟った。遅すぎるくらいだ。

阿波踊りについて書かないなら、もう阿波しらに出せるようなものを書けないだろう、と思った昨年の五月ころ、縁あって、たぬきの信楽焼について少し学ぶ機会があった。
そこで徳島の小松島にたぬき学会があるらしい、と知る。その瞬間、今年のあわしらはいける、と思った。もらった、と思った。それがこの「供物」という作品だ。

最終まで残ることができた。あの、坂崎かおるさんが受賞されて、さまざまなことを経て(ここでは明記しない)辞退、そしてさまざまなことがあって、あわしら自体がなくなってしまった(それについての所感も記さない)。

坂崎さんがいたからしょうがない、と決して言いたくないし、本当に受賞したかった、できると思ったのだが、講評で審査員の小山田浩子さんに触れていただいたのが何よりもうれしかった。

後日、実際に文フリでご挨拶させていただいたとき(御著書にサインしてもらうため、名前を告げたら)、渋皮ヨロイ、という名前と、この作品のことを覚えてくださっていて、さらなるご感想を寄せてもらえたのだった。
そのことは大変光栄で、うれしく、何より自信にもなった。
次の機会でも、小山田さんに読んでもらいたかったし、そこで大賞に推してもらえるような作品を書きたかった。それまでずっと、あわしら、頑張りたかった。

受賞して、徳島へ行きたかった。
またいつか、阿波踊りを見に行くつもりなのだが、そんな、本場のお祭りを夢見て描いた作品(阿波踊りのことはほぼ出てこない)。


9.「ポスタル・サーヴィス」

「墓標」でBFCの本戦に行けてしまったことにより、それが自分の中で、掌編の基準になっている。「墓標」同様に自分が納得して書いたものは、それくらいのできばえなのだ、と思ってしまうことは不幸かもしれない。ある種の呪いというべきか。

だから、以降のBFCで本戦出場が叶わないことは、とにかく、不甲斐ない、という思いがある。いちいち、毎回、それなりにダメージを喰らっている。
もちろん、選考の基準や方法に、いろいろな理由があることはわかるし、本戦にいけないからといって自分の作品が劣っているとか、だめとか、大切に書いたものを貶める気持ちはあまりないのだが、とりあえず、結果に対しては、ショックを受けたり、嘆いたり、悲しい気持ちになってしまう。

それが数回(BFC3,4と)続いた。それでもBFC用に掌編を仕上げていくこと自体が勉強で、書いていくうえでいろいろなこと私なりに実践してみている。まさにいい修練の機会なので、これは大会がある限り、続けていくだろう。

予選の経過を発表するようになったのは前回からだったと記憶しているけれど、このBFC5でも同様で、その二次予選通過作に名前があった。
ただ、そこから(例年より人数をしぼって)本戦を行う、という。嫌な予感がした。例年だったら、すでに本戦が始まっているところまで残っていて(そして早速、落選作展が始まっている)、ここから絞られるのは酷だなあ、と思った。
そしたらまじで拙作がそうなってしまったので、ちょっとこれまでになく落ち込んだ。

本戦が始まるまでの落選作展に出されている作品はすでに「前夜祭」的な状況の中、多くの人に読まれ、さまざまな感想も飛び交っていた。予選に残ったけれど、ぎりぎり落ちてしまった作品は(何しろ、本戦開始と共に落選を知るので)、ほとんど注目されない。そのタイミングで、落選展にあげたところで、すでにみんなの意識は本戦に集まっている。

危惧した通り、この作品はほとんど読まれなかった。感想が寄せられることもなかった。それが不憫でならなかった。
ある意味、今回、こうして自選作をまとめて記事にしようとしたのは、この作品をお勧めしたい、お知らせしたい、という気持ちが強かったところもある。

BFCに関しては、参加者の方々の多くは、レッドオーシャンをいかに避けるか、みたいな戦い方、書き方にいよいよなっている印象があって、それは回数を重ねてきただけに、当然の流れなのかもしれないが、私のようなさして特徴のない書き手には、なかなか厳しい道だ。
そんな中でも、自分のやり方、書き方を突き詰めたという印象があるので、ぎりぎり本戦まで残れそうだったことに、ある程度の納得と、そしてやはり無念さが残るのだった。

主催の西崎さんが、予選通過作品の一つ一つにツイッター上で感想を書いてくださったのだけれど、この「ポスタル・サーヴィス」については、以下のように記してある。

これがおそらく、渋皮ヨロイという書き手に関する、(総合的な)イメージなのかもしれない。
何か、それらしく「書けている」けれど、いかにもな雰囲気もある感じだけれど(これがセンスうんぬんのことなのかもしれない)、ただそこで止まっている、みたいな。
イグに関する作品で記したように、「秀作」を書いてしまう、そこでとどまってしまう、私の限界なのかもしれない。

何よりも、「安定感と商業的なうまさ」という言葉がここではあまり褒められていないように感じるところが、BFCの恐ろしさ、すごさ、ではないだろうか。

私はもちろん、秀作から突き抜けたものを書きたいし、そう思って、渋皮ヨロイとして書くようになって、そこに挑んできたつもりだった。けれど、それでも手癖で、安易さ、を引き寄せてしまう。

西崎さんから、こうした言葉をいただけて、とてもうれしかった。このままでは、だめだよ、と激励されているように受け止めた。

どこか愚痴のように聞こえてしまうかもしれないけれど、本当に、この「ポスタル・サーヴィス」は多くの人に読んでもらいたかったし、それが可能だと思っていた。どうぞ、ここまで読んでくださった方は、ちらりとでも目に留めてみてほしい。心から思う。


10.「石褒め」

最後に、最近書いたもの。
古賀コンという古賀裕人さん主催、完全に主観によって審査される催しがある。
「一時間」でテーマに沿ったものを書く(一時間の捉え方は自由。そして自己申告に任せられている)。
これがルールなのだけれど、縛りのあるものを書くのが好きなので、これも一つの訓練の場として活用し、第二回から参加させてもらっている。
そして第五回、「第一座右の銘」がテーマだった。

過去、参加してきて、とても楽しく書いてこれて、それだけで十分に満足していたのだけれど、古賀さんの審美眼にはまる自信はまるでなかった。
それでも楽しく書くことができる限り、ずっと参加したいと思っていて、今回も、テーマは難しいが、なんとなくイメージに浮かぶ話の内容(石を褒める、という設定)とうまく絡めることができそうなので、自由に書いた。

それが裕人賞をいただいた。
この企画にも読者投票があったり、期間中は感想についてもX上で飛び交っていて、活気があり、そうした中に混ぜてもらえて、それもまた刺激になっている。

私は書くものさえ頭に浮かべば、結構早く仕上げることはできると思うが、延々と細かい間違いやブレが出てくる。今回、それがあまり露出しない感じで形にすることができたと思う。
内容もかなり気に入っている。時間をかけて直したとしても、あまり変わらないだろうと思う。これ以上の展開もしないと思う。

企画が終わったあと、気になった細かいところを直すべく、一時間弱かけて修正してみたのだけれど、そちらは「石褒め(改)」としてあげている。


以上、10作を自薦という形で紹介してみた。何か、愚痴のようなものが多かったような気がする。
自分が書いたものはどれも大切に思っているので、何かしらの結果が伴わないとき、どうしてもショックを受けてしまう。そんな気持ちも、正直に吐露した。
普段、X上では、ですます調で、ややもすると、何を考えているのかわからない(本心が見えない)キャラクターだと思われているような自覚はあるのだが、だから、余計に、意外に思われたかもしれない。

それでもそこで書いていることに嘘はなく、いつもどの作品も楽しく書いていて、それをずっと続けていきたい(そのためにどんどん書けるものを書いていきたい)、という気持ちが何よりも強い。それだけはどんな「私」であっても、はっきりと言える。
この記事についても、そこを大切にして、自作からピックアップした。

私の作品について、知ってもらう機会の一つとなれば、この上なく幸せです。すてきな出会いがあることを心から願っています。
ここにあげたもの以外も、作品はいろいろ公開しています。それもまた一つ一つ思い入れはあります。だから、どなたかのもとに何らかの形で届きますように。
最後までお付き合いくださってありがとうございます。

今後とももりもり楽しんで書いていきます。どうぞ渋皮ヨロイとその作品をよろしくお願いします。










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