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36days of type 11

例によって今年も36days of typeにチャレンジする予定でしたが、公式から2024年のエディションは開催を見送るとアナウンスがありました。ただ、アナウンス以前から下準備をしつつ制作を進めていたので、個人的な鍛錬を名目に制作を進めました。

https://www.instagram.com/p/C4OIJzfIoni/?utm_source=ig_web_copy_link&igsh=MzRlODBiNWFlZA==

SNS上でのお祭り感が味わえなかったので残念でしたが、昨年同様に制作のプロセスや考えたことなどを軽くまとめたので、参考程度に楽しんで読んでいただけると嬉しいです。



Outline

36days of typeはスペインのグラフィックデザイナー、Nina Sans氏とRafa Goicoechea氏により、2014年から始動したプロジェクトです。タイポグラフィとレターフォームの無限のグラフィックの可能性を探求するべく、世界中のデザイナー、イラストレーター、ビジュアルアーティストに開かれたグローバルなプロジェクトです。(公式サイトより引用及び翻訳)
毎年、instagramを中心に行われる自主的な活動ですが、今年はinstagramがプラットフォームとしての役割を十分に果たせないことなどを理由に、開催を見送ることとなりました。


Environment

Tools

  • Adobe illustrater (タイプフェイスの作成)

  • Adobe AfterEffects (映像の編集に使用)

  • blender (3DCGの制作に使用)

  • TouchDesigner (背景のエレメント生成)

Machine Spec

作業環境の立て付け上、メインのPCはiMacを使用していましたが、レンダリングはベンチマークのスコアが高いM1 MacBookで行なっていました。

iMac Retina 5K, 27-inch, 2019, 64GB 2667 MHz DDR4
MacBook Pro, 14-inch, 2021, 16GB


Idea

昨年の36days of type 10はかなり良い反応をいただけましたが、全体として3DCGを編集プラットフォームとする比率が多かったため、今年はもう少し多面的にツールを駆使できる点を絵作りで伝えられたら、という考えがありました。
それらを踏まえた上で、多様な制作プラットフォームを駆使しても拡張性が保たれるデザインエレメントの生成や、トンマナの揃った絵作りを行う編集力の鍛錬も兼ねたワークフローを組んでゆくことを目指しました。

ビジュアルに関しては昨年同様、過去に良いと思っていた習作の解釈を広げながら、最終的に自分が作りたいルックに磨き上げていきました。
昨年〜今年にかけての習作の中から、TouchDesignerを用いたリッチなグラデーション表現や、blenderを用いたガラス質の3DCG表現が魅力的だったので、それらを軸にいくつかのプロトタイプを制作しながら、全体の構想を練りました。

習作のガラス質のグラフィック表現

Letter

Adobe illustratorで制作したアルファベットを3D化してゆくにあたり、RemeshとSmooth Correctiveを駆使して形を整えました。
共通のプロポーションを保ったまま、スピード感を維持した作業ができたかと思います。

svgから3Dデータを制作してゆく過程で、エッジが鋭すぎると読み込み時に頂点が想定していない挙動をするケースがあったので、全体の先端部分は丸みをつける処理を施しました。

ABFG
All letter
4×4のマスの正円を基準に構成

余談ですが、BlenderでSVGを読み込んだ際にうまく表示されないことが偶にありました。その際はプレビュー解像度を下げてあげると表示されるみたいです。


TouchDesigner

TouchDesignerで制作したグラデーション表現の解釈を広げつつ、背景に敷く素材と、blenderとAE間のカラートーンを統一するためのエレメントとして機能させました。

連番ファイルで書き出した画像フォーマットを、blenderのWorldに巻き付けることで、メタリックな質感の反射や透過の際に同じカラートーンが映り込むことを想定しています。
レンダラーの関係で書き出し時に色味は変わってしまいますが、共通の素材でアタリをつけることで、AfterEffects上でのカラートーンがスマートに整えられ、実質的なカラーパレットの役割を担ってくれています。


Music

昨年に引き続き、今年度の音源制作もSKYTOPIA氏にご依頼しました。
多様なプラットフォームを使用したワークフローの複雑さを、音源のポリリズム気味の混沌としたニュアンスでバッチリ表現してくださいました。
かなり難しいオーダーだったと自覚していますが、文句なしのクオリティで仕上げていただき、大変感謝しています。


J-WAVE ARRTSIDE CAST

11のシリーズがちょうど完成した頃、4月にオープンした神宮前交差点ハラカドの3Fにある、J-WAVE ARRTSIDE CASTでの展示のお話をいただきました。昨年のシリーズである36days of type 10も合わせて、サイネージ4面に展示していただきました。
約1週間ほどの期間、SNS以外での具体的なアウトプットの機会がいただけたことを大変光栄に思います。


Other

今回、公式にキュレーションされるなどの目標が立てられなかったので、クオリティの定量的な評価が難しかったですが、過去のStudyを再解釈しながら、パワーのある絵作りと計画的なワークフローの構築ができたかと思います。
途中、制作のWIPをSNSに小出ししていたので、そこから新しい制作のご依頼が来たり、実際に展示にアウトプットできたりなど、二次的な効果もありました。
36days of typeはデザインレファレンスとしても大変優秀ですし、クリエイティブに真摯に向き合う参加者の連帯感に毎年勇気をもらっています。
またいつか公式プロジェクトが復活してくれると嬉しいです。