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チェックリストの使い方


この記事は介護の職場で働いているスタッフに向けて、私が地域密着型デイサービスセンターで管理職として働いていた頃の経験をもとに書かれています。


今日はチェックリストを使ってスタッフのモチベーションを高める方法について書きたいと思います。



介護業界では細かくマニュアルが決まっていないところが多いかと思います。これがもし航空業界だとしたら大変なことです。航空機の事故では何百人という方が亡くなってしまいますので、航空業界のマニュアルは誰がどんなコンディションでやっても必ずミスが出ないようなものになっているそうです。新人がやったから、疲れている時にやったから、でミスが起こるような設計にはなっていません。


介護施設でマニュアルやチェックリストが行われることが少ないのはなぜでしょうか。介護業界では利用者様の安全が軽んじられているのでしょうか。それは違います。介護をやっている人なら誰もが聞いたことのある、ハインリッヒの法則では重大な事故の前にある何百ものヒヤリハットを見逃すなと教えられます(ピラミッドの図見たことない?あれのことです)。職場ではヒヤリハットの報告書だって書かされます。介護業界では安全が軽視されているわけではないのです。


介護業界ではスタッフのために時間を割くよりも利用者様のために時間を使え、という風潮があります。マニュアルやチェックリストのような役に立つのかどうか分からないものに取り組む時間があるのなら、日々刻々変わる利用者様に寄り添え、と古株スタッフには教えられます。つまり介護業界では時間の使い方に関して、古くから正しいと思われている慣習のようなものがあるのです。それは一言で言うとこういうことです。


「利用者様のために全エネルギーと時間を使え」

これは本当に正しいことなのでしょうか?



私はそうは思いません。



先ほどの言葉は「お金を稼ぐためにはとにかく働け」と言われているのと同じです。お金を稼ぐためには何もがむしゃらに働けばいいというものではありません。勉強の時間を持ち、資格を取ったり、セミナーに参加して自分の働いている分野の知識や技術を得ることで、さらに稼げる状態になることがあります。これを「投資」と呼びます。

「利用者様のために全エネルギーと時間を使え」という言葉には投資の視点が欠けています。勘のいい方ならお気づきでしょうが、介護業界でリーダーが投資すべき先は、もちろん介護スタッフです。


Q.質の高い介護サービスは誰が産み出すか?
A. 介護スタッフです。



Q.利用者様を喜ばせられるのは管理職か介護スタッフか?
A.多くの場合、介護スタッフです。



Q.介護の現場で誰が元気になれば、場の雰囲気が明るくなるのか?
A.介護スタッフです。介護スタッフが元気になれば利用者様も明るくなります。



チェックリストは、普段行っている業務を効率化・標準化する目的の他に、介護スタッフのモチベーションを高めるためにも使います。むしろ、後者の目的の方が優先順位は高いと思います。チェックリストをやって事故をなくす、安全性を高めるということよりも、介護スタッフのモチベーションを高める方が優先順位は上です。なぜならモチベーションのない現場に安全や安心があるわけがないからです。


だから私はチェックリストを実施した後に行うすべてのスタッフとの面談で、できないところがたくさんあったスタッフに対しても「指導」をしないようにしていました。「今はできないんですね」とか「でもここはできていますね」と言った声かけをします。チェックリストを提出した時点で、自分ができていないところがどこかを一番わかっているのは本人です。そこをまた他人に突っ込まれるのは気分がいいものではありません。リーダーはその人自身の反省・改善する力を信じ、モチベーションの高めるような声かけをした方がいいのです。


私は一回のチェックリストを実施する時に50くらいの項目があるリストを作っていました。項目の内容が違うリストを5バージョンくらい作り、3ヶ月に一度チェックを実施し、5バージョン目が終わったらまた1回目のバージョンに取り組むというようなことを繰り返しました。その内容は以下のようなものでした。


■勤務態度
■挨拶
■理念を理解しているか
■風呂の温度
■入浴介助中の動作
■プライバシーへの配慮
■利用者様への言葉遣い
■送迎車の運転
■認知症への理解
■清掃


他にもたくさんあったのですが、前の職場にチェックリストのデータを置いてきてしまったので、思い出せる範囲で書きました。
そして必ずチェックリストの最後にはスタッフのモチベーションに関わる項目を載せます。


■楽しく仕事はできているか
■疲れが溜まっていないか
■自分に何ができるか常に考えているか


さらに重要なことは、自由記述欄を必ず設け、好きなことを書いてもらいます。ここには普段言えないことを書いてくれるスタッフが多いので、後ほどの1:1の面談では書いてくれたことを中心にスタッフの想いを傾聴します。


チェックリストのもう一つの良いところは、それぞれの価値観を持って仕事をしているスタッフ達を、一つの方向性にまとめることができることです。介護は正解が一つではないからこそ、ある程度の方向性をリーダーが決める必要があるのです。



■今日のまとめ

チェックリストを使いスタッフのモチベーションをあげましょう。スタッフのために投資をするということが、巡り巡って利用者様のためになるということをおさえましょう。

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