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小売は、個人技からチームプレーへ

昨今の社会情勢により、多くの商業施設が休業に入った。
 
店を閉めたリアル店舗は、一時的にオンラインに活路を見出そうとする。
 
結果的に、ブランドにとっての未来を考えた時に、半ば強制的にオムニチャネルと向き合う事態となった。
 
オムニチャネルは、顧客が目的やライフスタイルにあわせて、商品の選定や受取の際に、オンラインとオフラインを使い分けることができるインフラのことである。

実店舗とECがそれぞれ独立しているマルチチャネルや、実店舗とECで在庫データ等を共有するクロスチャネルの進化モデルとされている。
 
顧客にとってはメリットの多いオムニチャネルも、課題は多く、成功事例はまだまだ少ない。
 
オムニチャネル化が進まない背景には、導入する労力に対して、効果が見えにくいことということがある。
 
オムニチャネルは実店舗とECの融合を目指しているが、既存事業では実店舗とECは別の部署の場合が多く、リーダーの強い意志がないと統合が進みにくい。
 
これまでは、無理をして統合しなくても、事業を続けることは可能だった。
 
しかし今回の騒動により、リアルでの販売が制限され、オンラインとオフラインの統合の必要性が浮き彫りになり、これからの顧客体験にとって、オムニチャネル化は避けて通れない段階になった。
 
これから生き残るのは、オムニチャネル化に正面から取り組み、オンライン・オフライン共通の明確な世界観を持ったブランドである。
 
実際に導入を進めるためのハードルは、大きな組織ほど高くなる。

既存事業を融合させて、別の組織にするようなもので、実店舗、ECともに担当者からみれば、事業の吸収合併に等しく、当事者からの反発も起こりうる。
 
障害をクリアするためのポイントはいくつかあるが、有効なのは、評価の指標を変えることである。
 
オムニチャネル化の進まない理由の一つに、自社内での売上のカニバリズムが起こり、現場同士がお互いへの送客を嫌がる場合がある。ここがボトルネックとなり、スムーズな送客が阻害されている。
 
これを解消するためには、送客も評価の対象に加えることである。
 
言い換えれば、どこで売上が発生したかではなく、誰が売上を発生させたかで評価することである。

こうすることで、送客することも自身の評価につながり、モチベーションの低下を防ぐことができる。
 
野球で言う送りバント、サッカーで言うアシストのような、間接的な売上貢献を評価対象に含めることが、スムーズな送客には重要である。
 
オムニチャネル化を進めるためには、小売も個人競技からチームプレーに変わる必要がある。

オンラインとオフラインを滑らかにつなぐインフラは、これからのブランドに必須の条件となるのである。

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