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アーケード商店街から考える、町の未来

僕はアーケード商店街に二つの意味で憧れていた。

はじめは買い物を楽しむお客さんとして。
そして、お客さんを迎える店主として。

たくさんの店と人で賑わう屋根付きのアーケード商店街は、その地域ごとに雰囲気を異にするが、"街"という規模感が、「ファンタジックな非日常空間」として僕をワクワクさせてくれた。

そして、お店を経営するようになってからは、「あの商店街は、雨の日もお客さんが歩いてて、賑やかでいいなぁ」という、俗に言う"無いものねだり"で、単純に羨ましく思っていた。

しかし、今はそのアーケード商店街が抱える問題と、未来の可能性について考えている。

なぜか。

それは僕が、

お客さん→店主、

と立場を変えてきて、
今は「町おこし」の住人となっているからだ。


さて、ご挨拶が遅れましたが、僕は滋賀県湖南市の地域おこし協力隊、ドリーと申します。
湖南市に"ブックカフェ"を立ち上げるプロジェクトを主に、活動をしています。


アーケードはとにかくお金がかかるし、基本的に組合理事の"借金"。

ところで、テーマに挙げておいて恐縮だが、僕はアーケード商店街の活性化に取り組んでいるわけではない。またアーケード商店街の近くで暮らした経験もない。ただ、「まちづくり」について学び、実践する立場となってから、改めてアーケード商店街を、同じ「まちづくり」という視点で考えてみようと思ったのだ。
空き家、空き店舗問題や、人口流出は、アーケードがあろうとなかろうと抱える問題の根本は同じはずだからである。

大型スーパーマーケットやオンラインショップの台頭で、昔ながらの商店街の客足は遠のき、どこも経営不振で苦しんでいる、という話は枚挙にいとまがない。
もちろん今も活況な商店街は存在していて、観光地やレジャースポットとしても盛り上がっているところもある。

しかしながら高度経済成長期に次々と作られたアーケード商店街は、全国でゆうに1000件を越えていて、経営不振とアーケードの老朽化によって"撤去"を余儀なくされているケースも散見される。
記事は数年前のものだが、すでに当時から全国的に問題視はされていた。

しかしながら"撤去"も"維持"もできないケースもあるという。

それは、撤去するのに多額の費用がかかることと、撤去に対しての助成金制度が少ない、というのが理由。
"作ること"に対しては予算が下りるけど、"壊すこと"には中々予算が下りないという。
さらに、このアーケードというものは公共施設のように見えて、実際は自治体の管理物ではなく、商店街組合の分担金と国からの借金で成り立っている
組合理事は、そのほとんどがアーケード設立時に"連帯保証人"となっていて、多額の負債を抱えていることが多いので、後継者も現れない。

八方塞がりである。

各地の地域創生プロジェクトに関わり、第一線で活躍されている、エリア・イノベーション・アライアンスの木下斉氏においても、コラムに以下のような見解を述べられている。

私は商店街が自ら整備するアーケードは「貴族の設備」と思っています。とんでもない金額が常にかかり続ける巨大建築物だからです。だから、お金のありなしで判断します。

〜略〜

今、全国各地でアーケードを撤去していっている商店街は沢山ありますので、僕はオープンモールにして、既存建築のまま若い人たちにリノベーションかけて店舗や住まいとかにしてもらうという形がやっぱりいいなーと思っています。自分としての実践的にも、その他の実例的にも。

まちづくりとしての「アーケード商店街」の可能性

さてここで地域おこし協力隊という立場の僕が考えるのは、経営の成り立たなくなった商店街をいかにして次世代に繋ぎ、「町を活かせるか」という課題だ。
僕は滋賀県湖南市の中でも、「石部宿(いしべしゅく)」と呼ばれる旧東海道五十三次の宿場町であったエリアに拠点を構えて活動している。

かつて江戸時代には宿場町として栄え、さらに昭和には商店街として賑わったこの町も、やはり時代の変化とともに衰退していった歴史がある。

いわば江戸時代から始まる、第三世代のエリアリノベーションに携わることとなったわけだが、宿場町→商店街→現在と変遷を経て来たこの町の、次の風景とはいかなるものになるだろうか。

今考えているのは「暮らすように、泊まれる町」としての石部宿だ。

フリーランスで働く人が珍しくなくなってきた昨今、「家」も持たずに自由な暮らしを望む人も増えてきている。
そんな世の中において、"ゲストハウス"というものの需要が高まって来ているように感じる。しかも観光地にあるようなゲストハウスではなく、"わざわざ泊まりに行く"ゲストハウスだ。

生き方、暮らし方が多様な現代の「宿」として、石部という町で暮らすように泊まれるゲストハウスを作り、一時的にでも町に関わる人を増やす。
そうして関わる人のうちの何人かが、旧道沿いにいくつかある空き店舗・空き家を活用して住み始めたり事業を始めたりする。
僕はそんな風に、"宿を起点として町に暮らす人が増えて行く"、というストーリーのエリアイノベーションを思い描いている。

そこで「暮らすように泊まる」を、アーケード商店街が取り入れたらどうなるだろう、とさらにエリアリノベーションのストーリーを展開してみる。

『泊まれるアーケード商店街

レトロな雰囲気の商店街。その空き店舗を活用したゲストハウス群。

元喫茶店、元酒屋、元レコード店、などなど。

個性的な居抜き物件をそのままゲストハウスにして、タイムスリップしたような雰囲気の宿泊体験が出来る宿。

古くなったアーケードだけが生み出す、"一体感"と"哀愁"

それが独特の味わいとなって、旅人の新しい目的地となる可能性はないだろうか。

そして、それを町の事業として取り組む。

アーケード商店街の問題を、"お店"と"お客さん"、で分けるのではなく、元々はお客さんだった地域の方々も一緒に、「まちのこと」として意識し、一緒に盛り上げるための活動をしていく。
アーケード老朽化で苦しんでいる商店街のために、町が予算を設けて整備費を助成する、空き店舗の活用のために積極的に情報発信をする、町をあげたイベントを興す、などなど。

さらに、外部からチャレンジする場を求めている若い世代を募り、彼らの滞在と活動の拠点としてのゲストハウスを、商店街の中で一つ、二つ、と作っていく。
ゲストハウスを経営する若手には低家賃で商店街内の物件で住めるようにしておく。共同キッチンを設けて、商店内外で食を共にする仕組みを作ることで、食費も下がって、コミュニティの強化に繋がっていく。
そんな循環が機能していけば、寂しいアーケード商店街も徐々に移住者や旅人を迎え入れるためのアットホームな場所に変化していくんじゃないだろうか。

あくまで机上の空論ではあるけども、「ゲストハウスブーム」は確かに日本各地で起きている現象なので、可能性は大いにある。

と、ここまで考えて、ふと「アーケード商店街 宿泊」で調べると、すでに事例として近いものが見つかった。

すでに宿泊業を営んでいる企業資本の元で立ち上がったプロジェクトではあるが、課題も目指す未来も基本的には僕たちのような地域おこしに携わる人間と同じだ。
こちらのプロジェクトを手がける「株式会社自由人」のインタビュー記事内で語られていた経営方針は、まさに僕らが取り組むべきことの本質を表しているように思えた。

一つだけ言えることは当社には“マネタイズ”という考え方がないことです。当社の手がけるすべての事業において優先されるのは“社会性”です。社会を変えて行く可能性がある事業なのかどうか、それがすべてに優先されます。事業性についてはその後のアイデアによって構築していく、といえば良いでしょうか。社会への必要性や有用性を“伝える”ことができれば、最終的に売上はついてくる、という考え方です。決して簡単なことではなく、様々なことが絡み合い、黒字化することは難しいのですが、絶えずそこに挑戦しています。

『経営もまたクリエイティブの一つ。行政マネーに依存しない事業を目指す』の一部抜粋

まちづくりは日進月歩

さて、こうして僕もあれやこれや物思いに耽って、noteに文字を書き連ねているわけだが、そうしてる間にも世の中では既に動きを始めている人達がどんどん先に進んでいっている。

為すが早いか、為されるが早いか。

僕はいつも"為す側"でいたいと思っている。みなさんはどうですか。

アーケード商店街から紡いだ「まちづくり」への思考。


Dongree 代表 ドリー

Dongree コーヒースタンドと暮らしの道具店・Dongree Books & Story Cafe(2020年6月OPEN予定)

略歴:WEB制作・デザイン業・コーヒースタンド経営・ハンドメイドクラフトショップ経営・各種イベント主催・地域おこし協力隊(滋賀県湖南市)

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