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スマホ時代の哲学 失われた孤独をめぐる冒険(著者:谷川嘉浩)


ジャンル:哲学

満 足 度:★★★★☆


〇感想

・通常の哲学本と比べ、多くの例えが使用され、また、アニメや漫画のセリフを哲学的に読み解くなどの試みがされており、読んでいて飽きない。

・過去の哲学者の言葉、世間でよく言われていることや、頭では分かっていることに対して、現実的な目線からとらえ直しているため、共感しやすい。

「スマホ」、「自己啓発」、「メンタルヘルス」など、昨今よく聞く言葉に関する話題も多く、小難しいイメージの哲学が身近に感じられた。

〇印象に残ったこと

・哲学は「未開の地を冒険すること」「医者」に例えられる。心身に異常が無い人は医者に通わないが、病気やケガをすることは誰にでもあり、医者は必要な存在。哲学も同じように人生でつまずいたり、悩んだりしたときに頼りになるもの。
また、哲学は2500年前から今も残り続けているヒットコンテンツ。

知識を習得する際には、その運用方法(ノリ)である「想像力」も同時に身に付けないと、単なる一問一答やイントロクイズになりかねない。現在の教養ブームは、とりあえず知識だけを得ようとする傾向がある。さらに、知識や想像力を学習する時は、下手に自分に分かる範囲に落とし込もうよせず、そのものを理解するように努めたい。そうしないと、誤解や、見当違いが生まれる危険性がある。

・考える際には、自分は完全でなく、不完全であることを気に留め、常に注意深さを怠らない。

自分で考えたアウトプットは平均的なものくらいにしかならないことが多い。考えることは必ずしも、自分の頭のみで行う必要はなく、他者の考え方を利用するのがよい。そのためには、知識習得の際に、運用方法である想像力を身に付け、その想像力のストックをいかに増やしておくかが重要

スマホによって、私たちは手軽に得られる刺激にさらされる中で、注意を複数のことに分散させられ、マルチタスクを強いられるようになった。そのため、難しいもの、モヤモヤ、消化がしにくいものは避けられるようになってしまった。

・また、自分自身と対話をするために必要な「孤独」が失われ、代わりに複数でいるのに一人ぼっちの感覚になる「寂しさ」が増すようになった。

・上記の難しいもの、モヤモヤ、消化がしにくいものを曖昧なまま保持しておく能力は「ネガティブ・ケイパビリティ」というが、孤独になり、自分自身との対話をする中でこの能力は育つ。

孤独を取り戻すのに有効なものが「趣味」。しかしこれは日常的に使われる意味の趣味ではなく、何かを作る、育てるということに限定される。趣味によって、作られる・育てられるものは自分の想定の及ばないもの(謎)であり、その謎を通して自分自身との対話が為されていく。

・孤独による自分自身との対話の経験は、自分や他人の感情や情動を理解するうえの助けになる。

・しかし、孤独は油断すると、寂しさに転換されてしまう危険性もはらんでおり、孤独のなかにいる自分と仲間とともにいる自分のバランスが重要。

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