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本の紹介10冊目:「野心のすすめ」「成熟スイッチ」(林真理子)

前回の紹介とは、うって変わって、売れっ子作家の林真理子さんが、講談社現代新書から出している2冊の本を紹介します♪

林さんは、我々の60代、70代に人気の女性作家だと思います。私の母親も全作品を読んでいます。

私は、小説にはあまり関心がなかったのですが、「野心のすすめ」や「成熟スイッチ」を読んでみて、林さんの作品は、小説というより、エッセー集ですので、とっつきやすく読み始めるハードルが低いことに、今更ながら気づきました。


野心のすすめ

まずは、「野心のすすめ」の紹介です。

2013年4月に出版された少し前の本ですが、いつのタイミングで読んでも人生の醍醐味を教えてくれる本です。

帯の「”高望み”で人生は変わる」という挑戦的な言葉にぐさっときます!

表現力があり、プライドもあるが、自分を卑下して、シニカルな笑いも取れる文体により、林さんの人生を流れるようにトレースできます。


「野心」とは?

そもそも、「野心」とは何なのでしょうか?
「野心」についてわかりやすい記載を、引用します。

人は自覚的に「上」を目指していないと、「たまたま」とか「のんびり」では、より充足感のある人生を生きていくことはできないのです。

なにも富士山を目指しましょう、とは申しません。谷川岳くらいでいいんです。そうして初めて、手頃なハイキングコースの人生を登って行けるようになる。最初から谷川岳も目指さず、高尾山ぐらいでいいやとぼんやり思っていたら、登山口の駐車場でずっとウロウロしている人生を送ることになります。

自分の身の程を知ることも大切ですが、ちょっとでもいいから、身の程よりも上を目指してしてみる。そうして初めて選択肢が増え、人生が上に広がっていくんです。

たとえば、受験はわかりやすい例だと思います。
最近の親御さんは、自分が偏差値教育で苦労したせいか、息子や娘に「あなたが無理せずに行ける学校でいいよ」と言うことが多いそうです。でも結局、第一志望には落ちて、第二志望、第三志望の学校に進むのはよくあるでしょう。であれば、第一志望のハードルを上げてみる。まずはできるだけ高く飛ぼうと努力しながら、結果的に目標の少し下をがっちり手に入れようとすることだって立派な野心だと思います。

(中略)
いま、「低め安定」の人々がいくらなんでも多すぎるのではないでしょうか。バブル時代の異業種交流会で、目をギラギラさせて名刺を配り歩いていたような人々もすっかり姿を消してしまいました。当時は少し鬱陶しいと思っていた彼ら彼女らのことがいまや懐かしくなるほど。

なぜ野心が希薄な時代になってしまったのかというと、景気がずっと悪かったんだから仕方がない、という考え方もあるかもしれませんが、私は「とりあえず食べていくことはできる、まだまだ簡単に飢え死にはしない世の中」が、その大前提にあると考えています。

「まあ、なんとかなるさ」と、自分の将来さえ真剣に考えようとしない人々ばかりが暮らす国の未来はいったいどうなるのかー。

私にはかつて、40社以上の会社から就職試験ですべて落とされ、アルバイトで食いつないだ貧乏時代がありました。お金はないし、男もいない、定職に就ける見込みも何もなかったけれど、常に自分の将来を見据えながら、自分を信じて挑戦を続けてきました。

ですから、私は、若い人たちが次のステップに進もうとして、一生懸命努力している姿を見るのが大好きです。駅のホームで、見るから新入社員といったぎこちないスーツ姿の若者が、慣れない敬語を使いながら携帯電話の相手に1人でお辞儀していたり、必死で頑張っているのを見ると、思わず涙が出てきそうになる。「がんばれ、がんばれ」と声をかけたくなります。

野心を持つことのできる人

つぎに、「野心」を持つことができる人の説明があります。

野心を持つことができる人とは、どのような人なのでしょうか。

それは、自分に与えられた時間はこれだけしかない、という考えが常に身に染み付いている人だと思います。

私が最近の若い人を見ていてとても心配なのは、自分の将来を具体的に思い描く想像力が致命的に欠けているのではないかということです。
(中略)
自分がみすぼらしい中高年になるとは想像もできない若い人たちが多すぎるのではないでしょうか。

人生の残り時間

確かに、「野心」を持つには、人生の時間を明確に意識して、生きるのが前提ですね。

マイクロソフトの創業者のビル・ゲイツは、大学で勉強する時間を惜しんで、ハーバード大学を中退しています。孫正義さんの自伝を読んだことがありますが、彼も大学生の時から、人生の残り時間を意識して、ご飯を食べるときも、必死に勉強をしていました。

「食事をするときも手から教科書を離さなかった。左手に持った教科書をにらみながら、視野のはしっこにボーッと見える皿に右手でフォークを突き刺して、とりあえず刺さったものを食べる。両手にフォークとナイフを持って、料理を見ながら食事をするなどという贅沢なことは考えられなかった」
という名言があります。

プロフェッショナルは、自分の人生の残された時間を、シビアに明確に意識していますね。

人生を俯瞰で見るということは、一生の儚さを知ることであり、自分に残されている時間をシビアに、かつ明確に意識することでもあります。

自分は果たして結婚したいのか、子どもが欲しいのか、ということも、一生の中で考えなければならないとても大事なことです。子どもを持ちたいと強く願う気持ちがあれば、それを認識するのが早ければ早いほど良いのは、最近よく報じられているとおりです。

人の一生には、ほんの短い時間しか与えられていません。どのように生きていくかということを真剣に考えるのは、充実した人生を送るために不可欠なことだと思います。

人生の頑張り時

必死に生きているなかで、人生の頑張り時という面白い表現があります。

人生には、ここが頑張り時だという時があります。そんな時、私は「あっ、いま自分は神様に試されているな」と思う。たとえば、仕事や勉強を必死でやらなければならない時なのに、つい気が緩み、ソファに寝そべってお菓子を食べながらテレビを観ているとします。しばらくするとハッとして、「いかんいかん。この姿も神様に見られているんだから、頑張らなきゃ」と再び机に向かうんです。

ちゃんと努力し続けていたか、いいかげんにやっていたか。それを神様はちゃんと見ていて、「よし。合格」となったら、その人間を不思議な力で後押ししてくれる。

高等な職

さて、どんな仕事もいい仕事なんてわけはなく、世の中の職業には貴賤(きせん)が存在します。

たとえ、いい大学を卒業しても、その後、ボーっと生きていたら、次の10年がいい人生にはなりません。常に10年先に先行投資をするイメージですね♪

20代で頑張った結果は30代の人生に反映されるし、30代に努力したことは40代の充実感にそのまま比例します。40代になってから、他人を羨ましがるばかりで「どうせ私なんかパートやるしかないじゃん・・・」と怒るのは間違っているんです。

私の担当編集者で40代の独身女性(東大卒)が
仕事は楽しくて仕方がないけれど、長い目で人生を考えるといちばん羨ましい女性の生き方は、医者や弁護士になって同業の男をつかまえた同級生の子たちです。高収入の共稼ぎ夫婦だからお金も貯まるし、豪邸を建てたりしている。それになんといっても確固たる資格を持っているから、自分の裁量で、妻は出産後に仕事を数年間休んだりっていうことができるんですよ。定年もなく働けるし・・・キーーッ!」と悔しがっていました。

たしかに”手に職”、それもとりわけ”高等な職”を持っている人たちは、いちばん幸せを見つけやすいのではないかと思います。

もしも、10代でこの本を読んでくださっている方がいたら、10代の勉強は20代の人生に、20代の勉強は30代の人生に生きてくることを心に刻んで精進してくださいね。

50代の後悔とは

さて、20代、30代では、子どもの有無が、その後の人生にどのような影響を与えるか、予想できないところです。

林さんは、50代の過ごし方も、教えてくれます。

私と同世代の独身女性編集者たちがいま、定年退職の年齢に差し掛かっています。ずっと仕事もお金も不自由しなかった彼女たちが、50代後半に入り「あー、しまった!」と思うのは、結婚できなかったことではありません

なんといっても、子どもがいるかいないかなんですね。かつて「大変よねー」と遠巻きに見ていた同業の女性の子どもが就職したり結婚したりするのを見て、自分の人生を後悔する人が多かったりします。
(中略)
私は4年間の不妊治療の末、44歳にして子どもを授かりました。毎回「次はきっと」という期待を裏切られる辛さといったら・・・これは1冊の本になるくらい、いろんなことを私に与えてくれました。野心を持って一生懸命頑張れば何でも手に入ると信じていましたが、努力の甲斐もないことが世の中にはあるということ、自分の力ではどうにもならないことを思い知った期間でした。
(中略)
子どもを生んでつくづく良かったと思ったことーそれは自分にとって、いかに仕事が大切かという思いを再確認できたことです。

本を読むことの価値

大作家の林さんが本を読むことの効用を説くのは、だいぶ手前味噌ですが、私、桐島も大賛成です。

「趣味は、ヨガです!」なんていうのは、典型的過ぎて、会話が広がりません。

「趣味は、読書です!」と言わないまで、こっそりと、読書を趣味にしている人は、魅力的です。

さて、妄想力を鍛えるためには、なんといっても本を読むことです。辛い時には、空想の中で遊んだり、物語の世界に逃げ込むことだってできる。

それに、読書って、ひとりでやっていて惨めに見えない、数少ない趣味でもあります。本を読む楽しみを知っているのと知らないのとでは、ひとりで過ごす時間の充実度が違ってくる。人が電車の中で携帯メールを打っている姿と、文庫本を読んでいる姿では、圧倒的に後者のほうが素敵ではありませんか。

成熟スイッチ

成熟スイッチは、以下で紹介した幸福が上向いてくるタイミングの、50歳以降を主な舞台にしています。


まさに、「人間は成熟しきると、大抵のことはどうでもよくなってくる」という至りの境地のことです。

大人の振舞い方やマナーなど、が書かれています。

私が、特に印象的だったのは、読書を引用します。

読書の快楽

本を読むと、頭がよくなるとか、思慮深い人間になると考えたことはないんです。最近の子どもだちや若い人の活字離れは深刻を通り越して絶望的ですが、彼らにこんな話をすることがあります。

「いっぱい本を読んだからって、立派な大人になって、いい会社に入れるとはかぎらない。でも、本を読むと、大人になったときに一人でいることを恐れずに済む人間になれます

若い人は一人でいることを恐れ、もっぱらスマホで「つながり」を求めますが、読書の習慣がれば、一人でもカッコよく見えるし、退屈もしません。

社会人になると、周りの人が読書をする人か、しない人かすぐに見抜けます。読書をしない人は、孤独を恐れて、同じようなレベルの人たちとツルム(付き合う)ことを全肯定しています。

私、桐島は、時間があると、この本読みたい、このマンガ読みたいと、時間を読書時間に換算してしまい、1人時間を欲してしまいます。

なんなら、拘置所に入っても、読書ができるのであれば、2年ぐらいは余裕で耐えられる気がします。

「野心のすすめ」は、20代、30代前半の人向け、
「成熟スイッチ」は、30代後半、40代、50代の人向けだと思いました。

それでは、よい読書日和を♪


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