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ウクライナ情勢を理解するために4月に読んだ本4冊

ロシアによるウクライナへの侵攻が長期化している。3月から、情勢を理解するための本を読んでおり、4月も読み続けた。プーチン体制の根元的な戦略や、他国の領域で暗殺を展開する非道性への理解を深めた。

①現代ロシアの軍事戦略

テレビ出演や、SNSで名前をよく耳にしたロシア軍事研究者の小泉悠さんの著作。「長い2010年代」「永続戦争」という概念で、ロシアが冷戦期の戦闘姿勢、対立構図を引きずり続けていることが理解できた。

常に戦争状態で、森羅万象が勝敗に影響するという考え方だからこそ、日本人の想像以上にNATOの東方展開を「挑発行為」と捉えたのだな、と推察できる。

また、平時のサイバー攻撃やフェイクニュース流布を組み合わせる「ハイブリッド戦争」も、戦局を有利にするために必要な発想なんだなと思う。ウクライナ危機も戦争に発展したというより、常に戦争だったのかもしれない。

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②戦争は女の顔をしていない


非常に有名だが未読だったので、今更ながら読んだ。第二次大戦に戦闘員として参加したのに、表舞台にほとんど出てこない女性兵士の言葉を集めたノンフィクション。地を這うような視点。生の言葉がそのまま記されている部分が多く、衝撃度は大きかった。

一方で、本書は女性兵士を「英雄」に仕立て上げたいわけではない。まさにそうやって、男性兵士の英雄化の過程で、女性兵士が切り捨てられてきたから。だから女性兵士の証言を「こうであるべき」に押し込めない。その姿勢が非常に重要だと思えた。

こんな悲惨な経験をした女性たちが数多くいるのに、なぜロシアはまたも戦争を選んだのか?疑問が膨らむ。それが戦後の時間の経過の重みなんだろうか。

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③ロシアン・ルーレットは逃がさない


ロシアの富豪や、和平交渉に参加したウクライナ代表団にロシアが毒物を持ったのではないかというニュースを見て購入。ネットメディアのバズフィードが、過去にあった暗殺疑惑を調査報道したノンフィクション。

「西側メディア」による取材のため、ロシア国内の内実に関してはバイアスがかかっていそうではあるが、これまでロシアが国外に逃げた富豪「オリガルヒ」の一部に執拗な攻撃を加えたことは事実ではないかと思われる。

そうした国家犯罪に対して、イギリスなど欧米各国はこれまで不問に付して、対ロシア関係の友好化を優先したことも疑いない。いまとは大違いだ。

国内法による犯罪対応と、国家犯罪に対する対応は変わらざるを得ない。これは空恐ろしい。

④われわれの戦争責任について


第二次対戦後、戦後ドイツの戦争責任についてドイツの哲学者カール・ヤスパース氏が大学で講演した講義録をもとにされた本。正直、そのうちにロシアが撤退し、「戦後」が問題になるだろうと思って買ったのだが、それは見込み違いになってしまった。

内容的には、侵攻が進行中の現在も参考になる。今後の展開は読めないが、ロシアが「戦勝国」を自称したときに、戦争責任についてウクライナに何を押し付けるのかが推測できる。

また別の観点で、というかこちらが本質だが、本書は敗戦国が戦争責任を「引き受ける」ために書かれた本だ。これは無責任にならない思考であり、遠く離れた日本に住む私たちにも非常に参考になる内容だ。

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5月も読み続けているし、戦争が続く限り(あるいは終結後も)読み続け、学び続けていきたい。そしてウクライナに想いを馳せていく。

3月に読んだウクライナ関連本まとめはこちら。

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