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1.イヌの世界

動物の行動の根拠となる思考や感情は、それぞれ生まれ持った感覚器による特有の知覚と生きる中で蓄積した経験に基づいています。このそれぞれが異なる独自の世界を「環世界(ウンヴェルト)」と呼んでいます。

色であれ、においであれ、音であれ、味であれ、気温であれ、外界の情報の受取り方は、「個体差」というよりも「異質」と考えた方が的を射ているくらい、千差万別でしょう。その知覚に基づく思考や感情も千差万別なのは当然ですよね。

昨今、ヒト社会では、多様性を尊重する動きが広がっています。生きてきた世界、いえ、生きている世界が異なるヒトが集まってこの人間社会を形成しているわけですから、お互いにその多様性を認め合うことは、きわめて重要なことでしょう。

同じ種であるヒトの間にも「暗くて深い河」があると言われるくらいですから、ヒトとイヌの間には想像を絶する「深淵なる海溝」でもあるのでしょうか。イヌと暮らす時、どちらかがどちらかを従わせる、という関係ではなく、お互いに認め合う関係であれば、豊かなくらしにつながると考えています。理解し合うのは不可能にしても、深淵なる海溝の存在を認知し、お互いの環世界を大切にすることができれば、それだけでもその暮らしは豊かになると思うのです。

ただ、ヒトの社会で暮らすイヌたちには、ヒトのルールを教えることも必要です。お互いがお互いを認め合う関係を構築した上で、ヒトがイヌにルールを教える技術を身に着ける、それも飼い主の責務であると思うのです。

多くの行動が、知覚とそれを源とする感情にコントロールされているのは間違いないでしょう。ただ、ヒトでも、「正しいか正しくないか」「得か損か」「好きか嫌いか」など、行動をコントロールする思考スイッチはひとつではありません。イヌの行動もさまざまな感情とさまざまな思考が綾となって形に現れているものだと思うのです。

WIZ-DOGは、イヌに何をどう教えればイヌたちがこのヒトの社会で幸せに暮らすことができるのか、それを常に模索し続けています。そのためには、形骸化した行動制御メソッドだけではなく、イヌの知覚と感情を理解する努力が必要だと考えています。

このアカウントでは、ヒトとイヌでは、知覚や脳の処理のしかたがどう異なるのか、そこから生まれる感情はどのようなものなのか、などについて、あれこれ考えてみたいと思います。


科学的思考を育てるドッグトレーナースクール ウィズドッグアカデミー

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