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プロスポーツクラブの本質的な価値とは何だろうねってことをメルカリと鹿島アントラーズの例から考えてみる回

 どうも、ゑんどう(@ryosuke_endo)です。

 最近、メディア野郎(古い)こと田端慎太郎さんがメルカリがUS事業を失敗しているのではないかと疑義を出しつつ、経営に関する提言を出すなどアクティビストとして活動を活発化させています。

 なぜ、彼が個人アクティビストとしての立場を明言できるのかと言えば、本記事が公開されている時点でメルカリの株式三万株を保有している利害関係者ステークホルダーであるからに他なりません。

 メルカリの株価が低迷する中、70%以上もの株式を保有し実質的に経営権を握っている鹿島アントラーズが2期連続で赤字となっているだけでなく、直近4シーズンでタイトルを獲得していないことにも触れており、この株式保有は上場企業であるメルカルとして妥当なものなのかどうかを問い続けています。

 おそらく、熱心な鹿島アントラーズのサポーターをされている方々の中には賛同しかねるどころか、余計なチャチャを入れてくるんじゃない!と憤慨されている方もいらっしゃるでしょうし、反対に、株式会社の株主として妥当な物言いに賛同する方もいらっしゃることでしょう。

 プロスポーツクラブの経営ってのは成績を残せばいいだけでなく、ビジネス的な側面においても株式会社を名乗る以上は株主の利益を確保するために躍起にならなければならないもので、通常の経営に比べて難易度が高いようにも感じられます。

 再三、書いていますが株式会社である以上は株主の利益を優先させなければいけません。それは株式会社であることの宿命であって、仲良しクラブで経営を二の次においておくようでは過去のスポーツがビジネスとして認められなかった暗黒時代に逆戻りしてしまいます。

 クラブを存続させるためにも経営が機能し、株主への利益を出し続ける必要があり、熱情や愛情だけではクラブを存続させることなどできません。

 ここで考えたいのがプロクラブにおける本質的な価値って何だろうってこと。

上場企業の連結子会社である以上の責務

 まず、鹿島アントラーズの立場はメルカリの完全子会社ではなく、会計上の連結子会社。親会社となるメルカリは東証マザーズへ上場する上場企業なだけでなく、鹿島アントラーズの株式を71.2%保有する筆頭株主です。

 他にもLIXILが10%、日本製鉄が7.1%と後に続きますが、メルカリが鹿島アントラーズの経営に大きく、深く関与する体制を敷いていることは明白ですが、完全子会社というわけではありません。

 完全子会社とは、ある会社が他の会社の発行済株式の全てを保有している状態を指します。上記している通り、メルカリの保有株式率は71.2%にとどまっていますので、あくまでも会計上の連結子会社となります。

 ただ、その保有率が非常に高いことから鹿島アントラーズの実質的な経営権を握っているのはメルカリということになります。

 つまり、メルカリには自社の株価を上昇させるために鹿島アントラーズを活かす責任があり、鹿島アントラーズの経営状態が悪化することは親会社の連結業績に大きな影響を及ぼす存在であると言えます。

 メルカリの株価は2021年12月に最高値を記録してから一気に急落。一時は6,900円をつけていた株価も2,000を割り込む形。

https://www.nikkei.com/nkd/company/chart/?type=5year&scode=4385&ba=1

 メルカリはこの株価を最大化させるために鹿島アントラーズを経営しているはずですが、結果として、現状は経営権を握っていることによるビジネス的な成果を示すことはできていないことになります。

 ビジネス的な成果だけでなく、競技面においても過去4シーズン、つまりはメルカリが大量の株式を保有し経営権を握って以降、鹿島アントラーズは一つもタイトルを獲得することができていませんから、メルカリのクラブ経営参入は現時点で成功を収めているとは言い難い状態だと言えます。

スポーツクラブの経営特性としての"ファン"

 サッカーに限らず、あらゆるスポーツクラブにはファンが存在します。

 サッカーならサポーター、バスケットボールならブースターなど、競技ごとに名称は異なりますが、それぞれにクラブに対して強い愛着や帰属意識を持ち、クラブを単なる企業としてではなく情熱を注ぐ対象として認識し、アイデンティティ(同一性)を見出しては生活の一部とします。

 そういった人たちがいるからこそ、クラブ経営における収益源となるチケット収入やグッズ販売が可能であり、その母数がいればいるほどにスポンサー収入に影響を及ぼすことにもなるため、スポーツクラブを経営する上で「ファン」という特性を無視することはできません。

 特に、鹿島アントラーズは地域密着型のクラブとして長年にわたりファンと強い絆を築いてきましたし、そのファンと共に多くの輝かしい成績を収めてきましたから、競技面で成績を収められないことはファンからすると非常に悲しい事態だと言えるでしょう。

 メルカリとしては、上場企業の責任として株主の利益を確保するだけでなく、クラブの発展、ファンからの期待に対してバランスを保ちながら経営しなければならず、短期的な業績プレッシャーに向けて焦って長期的な視点を見失うようなことがあってはならないため、非常に困難な舵取りをしていることになります。

 そういった特殊な特使絵を理解しつつ、ビジネスとしての合理性を追求するバランス感覚は一般的なビジネスとは異なる点があります。

 しかし、経営権を保有しておきながら株価は低迷する形となっていることからビジネス的に合理的な成果を出すこともできず、直近4シーズンは何のタイトルも獲得していないことから競技面でも成績を収めることができていない点を踏まえると、上場企業としては経営からの撤退なども視野に入っているのではないでしょうか。

プロスポーツクラブの本質的な価値ってなんだ

 ビジネス的な価値については株価で示すことができますし、競技的な価値については成績から判断することが可能でしょうが、ファンの人たちは成績が悪かろうが何だろうが、自らの人生に伴走してくれる存在としてクラブを愛しているわけですから、何か本質的なところで価値がありそうです。

 じゃー、その価値って何でしょうか。

 まず、競技力とエンターテインメント性はスポーツビジネスを語る上で外すことはできないでしょう。スポーツは劇場型であり空間型のビジネスであると同時に、刹那性の高い結果の見えないものです。

 結果が見えないからこそ90分間の中で高いレベルのサッカーを提供し、ファンを魅了することが求められるだけでなく、所属する選手の技術や戦術、チームワークなどが勝利につながっていく、シーズンを通してタイトルを獲得する過程で生み出すドラマこそ、クラブの大きな価値となります。

 あとは、そういったエンターテインメント性の高い興行を行いつつ、着実に歩んできた過去の歴史や、これから培っていく独自のアイデンティティをクラブカラーや象徴的な選手、スタイルなどを積み上げていくことによって伝統とし、それをファンにとって特別な意味を持たせていくことで絆を得ていくこと。

 スポーツクラブの源泉となるのはファンの熱狂ですから、それを生み出し続けていくことにこそ、クラブが存在する価値があると言えるでしょう。

 ファンとの絆がしっかりと構築できていくのなら、地域のあらゆるコミュニティへ貢献することが可能となりますから、クラブの存在自体がコミュニティとして機能することが期待できます。

 こういったスポーツクラブだからこそ生み出せる価値があるにはありますが、それらを持続・継続していくためにはビジネス的な成功がなければ成立しません。クラブは営利企業である以上、利益を出すことができないのであれば存在することは叶わないのです。

 これらを全て網羅的に実現していくことができるクラブこそ、本質的な価値をビジネスへと転換できている強いクラブなんでしょうね。

おわりに

 正直、今回は鹿島アントラーズが注目される形になっていますが、他のプロスポーツクラブでも同様のことが言えるわけです。

 ただ地元で人気だからといってあぐらを書いてビジネス的な成功を収めることができないのであれば存続すら叶いません。

 こういった背景や前提条件がある中で、しっかりと経営的に成功を収めているクラブや球団があることも注目すべきでしょうね。

 ではでは。

 ゑんどう(@ryosuke_endo)


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