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大学院進学へのきっかけ②

 大学院進学へのきっかけ①からの続きです.

 テクノロジーが加速度的に発展する中,バブル時代が終わりを告げます.僕が修士2年生の時の話なので,今から30年近く前なので,あくまで生き方・考え方の1つという感じで読んでもらえればいいです.当時は,もちろんインターネットもスマホなんかもない時代.だから恋人同士が待ち合わせをするにも家の固定電話から親の目を憚りながら,小さな声で来週○○駅にXX時にといったやりとりが行われる.ドラマなんかでは,まだ付き合ってないけど相手を意識している男女が,『別に好きじゃないけど,まあ行くよ』みたいな約束の仕方をしちゃって,駅の東側と西側でそれぞれが待ちぼうけ.でも連絡が取れないので,雨の降る中2時間待ってる.結局,会えないまま帰宅して,翌日風邪で学校なり職場を休んでしまう.その二人は電話で,昨日,駅に行ったの?みたいなことを探り合うんだけど,お互い行っていないとごまかす.数日後,ひょんなことから,間接的に友人から,その駅の反対側の場所で待ってたことを知る,なんていうストーリーがあったりした時代.

 ちょっと話が逸れてしまったので元に戻すと,博士課程後期つまり修士から博士に進学しようという思いが強くなったというところでした.まず,私が大学4年生の時に,研究室で始めてMacに触れた時の感動がまず思い出されます.コンピューターというのは,基本的にヲタクがぱちぱちキーボードを打っている感じだったのが,非常に洗練されたデザインのモニタに”マウス”というデバイスでGUI(グラフィックユーザーインターフェース)を操作するという衝撃的なスタイルに様変わりした!そして,Window95のエクセル.今まで電卓で毎回数字を打つ必要があったのに,プログラムを書くことなく,数式を埋め込んでおけば値を変更するたびに勝手に答えが変わる.そしてテトリスとブラインドタッチのソフトで暇つぶし.正直いうと,この素晴らしい環境を少しでも長く味わいたいという,社会人までのモラトリアム延長という甘えた考えも多少ありました.そして,研究室の教授に,博士課程後期に進学したいと,研究室に残りたいと相談に伺いました.私の恩師の一人である非常に人格者の教授は,日本における博士の現実をよく見る様に仰いました.端的にいうと,修士卒で一旦就職しなさい.就職した後で,研究者になりたいという志があれば大学に戻るチャンスはあるが,博士課程への進学を決めてしまうと,その後の就職先の選択肢はかなり狭まることを覚悟する必要があるということです.日本では,良いも悪いも含めて,博士号取得者に対する処遇というのは,非常に低いと言わざるを得ません(ドイツに出張した際のホテルではDr.という敬称を書く欄があったりして,Mr.とは呼ばれませんし,海外では,年齢よりも学位Dr.に重きが置かれる給与体系が当たり前).高度成長を支えた重工業や自動車関連においては,大量生産の高い品質が求められます.それは,1日でも早く入社してその会社における製品開発・製造工程に精通した方が合理的であり,高度な理論式などを振りかざしてもまだまだコンピューターの演算性能が不十分なので,経験則の方が実務では余程役に立つ状況だったのです.DL(世に言うAIを実現するテクノロジーの1つである深層学習Deep Learning)も考え方はあっても,それを妥当な時間(日数)で計算が完了できなかったのです(何かの最適化ジョブ演算プログラムを実行させて,それが終了するのに数ヶ月パソコン起動しっぱなしでは仕事にならない).博士号取得まで全て浪人・留年することなくストレートでも27歳になります.もし,博士課程後期(基本3年で終了だが6年まで在籍可能)の期間で博士論文が何らかの事情で,規定の査読付き論文発表数に足りないなどで学位が取得できない可能性も多分にある.3年普通に頑張れば学位が取得できるというものでもない.また,博士号を取得できても,講師→助手→准教授→教授という保証もなければ,大学の講師といった正規雇用すら保証できなくて,多くの人がポスドクといった不安定な状態を余儀なくされる.政府の最高学府に対する予算配分が悪い,企業がもっと積極的に博士を採用すべきなどといったことはずっと言われているものの,一向に改善されない.どうも博士号取得者は,理屈っぽい・ヲタク・社会不適合者(今でいうコミュ症?)・態度が横柄(研究以外に単に何も考えてないだけ)といったイメージがあり?,会社側としても高い給料を払わなければならない割りに,すぐに目に見えた成果が出にくいし,そのような高学歴者を上手く使いこなすチームリーダーも実務が忙しくて,じっくり協議する時間が取れずに持て余してしまう.

 教授からのアドバイス通り,一旦就職しよう.もちろんガンダム世代の私はロボット的な製品のメーカーに.というわけで,晴れて開発エンジニアになるのである.次は,そこからどういう経緯で,博士号に至るのかを書いていきます.


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