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将棋のタイトル戦を通して,AIとの付き合い方に思いを馳せた.

藤井聡太竜王が史上最年少で五冠を達成されました.おめでとうございます!渡辺名人相手に4連勝でのタイトル奪取.もう興奮が収まりません.何をどう捉えて,どう考えればそのような境地に辿り着くことができるのか.一体どんな景色が見えているのか.ど凡人の私などには想像もできない自己との対話がなされてきたでしょうし,前人未到の領域に立っている人は,いつも対等に相談できるのは内なる自分だけ...

1.将棋の世界におけるAIの活用

藤森棋士とヨビノリたくみさんが,将棋の世界にAIが波及したことに関して面白い対談をされていました.その中で私がなるほどと思ったのは,次の2点です.
①全てが数値化される.
将棋の対局で,最初のうちは,相手の駒とまだぶつかっておらず,駒組みの全体構想を描いている段階なので,昔の対局では,序盤戦はもっと緩やかに進行していた.棋士各々が,それまでの経験に基づいた対局感で将棋を指していた.それがAIによる指し手研究が進むにつれて,序盤戦の1手1手が数値化されるようになった.従来の定石だったものが,AIの評価値的には良くないといったことが定量的に示されるようになり,序盤の戦いが苛烈なものとなった.
②AIが下した判断に即した行動がとれるか否か.
人間は正解を指し続けることは難しい.そのため,『間違えにくい』局面を作り上げようとする傾向にあり,たとえ(将来の自分が)読み間違えたりしたとしても『立て直しやすい』局面を本能的に目指して指している.従って,AIの最善手とは異なる手を,名人と呼ばれる棋士が指す場合もある.AIが示す通りに1手も間違えずに指すのであれば勝利する.それは極小の針の穴に糸を通そうとするものであり,その手というのはちょっとでも読み間違えれば頓死を意味する.”詰み”まで完全に読み切っているなら,ともすれば一見危険な手と見える不可解な指し手も自信をもって指せる.果たしてそんな選択ができる人間が存在するのであろうか.ただ,現在最もそれに近い棋士が藤井五冠といえるそうだ.

2.介護・教育ロボットの普及

①認知症防止・安全見回りロボット
おひとり様,孤独死が増加する中,人工知能を持ったロボットというのは,人型の話し相手であれば認知症の防止ができるだろうし,ペット型ロボットなら癒しを与えてくれる.遠方の親族にとっても日々の安全確認ができてありがたい.
②学童保育ロボット
共働きの家庭が増える中,小さい子供を見ていて欲しいと思う親は多いのではないでしょうか.また何らかの理由で,親が入院することになってしまった場合も有り難い.ロボットが子供の話し相手になってくれて,火事や防犯についてもケアしてくれて,宿題や学校との連絡事項なども入院している親に随時報告される.

このような社会が加速した先に,どのような未来が待っているのか.健康・学力・安全など様々な事柄が数値化される.それによって人生コストが弾き出されてしまう.知らない方が良かったことまで知らされる(知らぬが仏という諺が辞書からなくなる?).兄弟喧嘩,親子喧嘩して仲直りするというのは,過去の文化として教科書や小説の中においてのみ存在する...飛躍しすぎだろうか.

3.AIとの距離

AIは,あくまで秘書であり参謀役,そして時々パートナーといった距離感がちょうど良いような気がしています.スケジュール管理や移動における交通手段の情報を教えてくれる.それを吟味して,最終的に判断を下すのは人間.でもその人に対する情報操作がなされないと将来にわたって言い切れるのか.判断の根拠を形作る人格形成において,すでにAI依存の危険性を孕んでいないだろうか.うーん.AIが人の判断のかなりの部分を担っているような気がする.多少遠回りでも,非合理的でもその時のフィーリングで,もっと自由に選択して,その結果が意図しないものであってもそれを許容する社会であって欲しい.

4.AIを知りディジタルツールを使いこなす

  人の能力:1
  AIの能力:1.5
(限られた領域においては人を凌駕する)
と仮定する.
{AIが2台の場合}と{AIと1人の場合}でどちらの生産性が高いかを考えてみる.
  AIが2台の場合 ⇒ 1.5 X 1.5 = 2.25
  AIと1人の場合 ⇒ 1.5 X 1 = 1.5

となり,AIが2台の方が生産性が高いと誰もが考える.
掛け合わせもいいけど,和の方が大きい場合も存在する.
  AIと1人の場合 ⇒ 1.5 + 1 = 2.5
AIは掛け合わせることしかできない.そこに人が介在する時のみ,和(なごみ,調和)に効果によって,AIだけのときよりも高い生産性(時が経たないと分かりにくいものかもしれない)が得られると信じたい.そしてそうなるような付き合い方を模索していきたい.

AIの社会実装においては,その使い方(運用方法),AIと人とのインタフェースがとても重要だと思っています.だからこれからも統計学や科学技術計算の勉強を怠らず,3D-CADや3DCGなどのディジタルツールを使いこなし続けていきたい.


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