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【詩】

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08 ヘイズ ―haze― 【詩】

08 ヘイズ ―haze― 【詩】

誰か私を呼ぶ声がする

私の意識の遥か遠くから

それは確かに私に向けられていた。

何か聞き覚えがあるような、

それでいて 何かは分からない。

私の前に薄い靄がかかっていて

特殊な要素は無い様に思えたが、

耳を澄ませば澄ますほどに

誰かの輪郭は明らかになっていった。

ついに 声の主が誰であるか理解した。

それが私の知らない人であることを

しかし

その誰かは私にとって大切な人であ

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06 聞きたくない声も音楽だ 【詩】

06 聞きたくない声も音楽だ 【詩】

予定調和な日常に
ゆられ さまよい
流れつき、
耳タコな言葉なんかも
私を今では透り抜ける。

ピアスを開けたら私にも
まだ痛みはあるみたい。
片側だけ、
自分で穴を埋めてみた。

今日は何聴こうか って、
イヤホン挿して触れる耳の
ほんの少しの昂ぶりを
横切る風が教えてくれる——
前のめりに進む足たちも
いつもと違う
新しい今日を感じて
昨日と違う音を探している

聞きたくない声も音楽だ。

04 うつつのみ 【詩】

04 うつつのみ 【詩】

他人事みたいな今日が現れて

目をつむってみても

枕に埋まっても寝られやしない。

窓の外では

車たちが 右往左往して

猫じゃらしが揺れている。

その傍らで、

一匹の猫が のんびり

アクビをしたりなんかして、

僕は猫にもなれやしない。

食欲や

空想仮想ばかりが拡がって、

近くの温もりなんて無いみたいな。

明日が思い通りになるなんて

体力すらない僕にどうしろと。

そうか、そ

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03 葛藤 【詩】

03 葛藤 【詩】

無力で想うことしかできなくて

関われない範囲があって

口に出せない思いがあって

伝わらないかもしれないけれど、

でもそれは事実で、

伝わっていれば変わる世界もあって

伝わらないことによって生まれる世界があって

願うならすべてが好転してほしいのに

報われない思いがあるのも事実で、

不条理や世知辛さが蔓延(はびこ)る

この世界で生きていくには

やはり細やかな意識が集合してほしくて

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02 走性 【詩】

02 走性 【詩】

月明かり光る石段転けぬよう

手すり頼りに 上り往く

耳を澄ませば、風凪いで

カサカサ木の葉ゆらす音

月よりも強く誘う光目指して

虫たちは

バチッと命散らせ逝く

辺りには自然があった

肩で息吐き足を震わせ

カラダと空気結ばれる

上りきり街見下ろせば、

生活の光眩しく目を燃やす

真に月より強い光だ。

蛍光灯の下見れば、

此処でも虫が腹見せる

石段を 転んでいいと

手すり

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