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[読書まとめ]なぜサービスデザインなのか?

書籍『THIS IS SERVICE DESIGN DOING.』の「なぜサービスデザインなのか?」パートのまとめと、SIerのしがない所感を書かせていただきました。

1.1 顧客は何を求めている?

私たちが製品やサービスを手に入れるとき、実際の提供物を受け取るまでには多くのプロセスを通過しています。最終的な提供物よりも、そこに辿り着く過程で顧客が感じる体験に着目する必要があると本書には書かれています。(下図参照:本書P33図参考)
例えば、スタッフの接客態度、WEBサイトのインターフェース、企業側の販売業務、システムやツール、物流など多くの層を通過してようやく提供物に触れることができます。

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企業はこれまで、真ん中にある提供物を、それを届けるのに必要な最も内側の層に大きく注力してきました。

しかし、モノが豊かになった昨今では提供物の機能やクオリティでは他社との差別化が図りづらく、顧客にとっては良いものが提供されるのは当然のこととなりました。
そのような中で顧客は、提供物そのものではなく、それを受け取るまでの体験に関心を持つようになりました。
美味しいハンバーガーよりも店員の感じの良い対応、銀行の信頼性よりもWEBサイトにすんなりログインできる方が大事なのです。
つまり、顧客に影響を与えているのは核となる提供物よりもそのまわりのエクスペリエンスの層と言えます。

1.2 組織にとっての課題

企業として顧客の体験の質を高めていくための課題が大きく二つ挙げられています。

1.デジタル革命によってデータと体験を駆使するようになった顧客の理解
2.組織のサイロ化を解消し、組織横断的に協力し真の価値を生み出す

1.デジタル革命によってデータと体験を駆使するようになった顧客の理解
デジタル革命により顧客の購買行動は大きく変化しました。町にある店よりも地球の裏側から買う方が簡単になったのです。
その際に顧客はPCを広げるだけで価格の比較や別の選択肢、信頼できるレビューといったたくさんのデータを入手できるようになりました。また、SNSなどを介して顧客は体験を数百万人もの人と共有する機会を手に入れました。
顧客はそういったデータや体験から選ぶようになりました。
つまり、カスタマーエクスペリエンスは収益に大きく影響するようになったのです。優れたカスタマーエクスペリエンスを提供する企業が市場を支配し、顧客はその企業を推奨し、再び購入する可能性が高いです。その上、上質な体験が得られると確信すればもっとお金を支払うことも考えられます。

2.組織のサイロ化を解消し、組織横断的に協力し真の価値を生み出す
工業化以降、組織は最高水準の業務と効率化を重視してきました。すべての組織単位(サイロ)は、企業にとって理にかなった業務機能を中心に作られています。そして、顧客ではなく企業の視点からサイロ内でそれらの機能を最大限発揮するために活動しています。
そして、こうした組織のサイロが体験の層の多くに関わり、それぞれの層は別々のチームに委ねられます。
サイロ間を繋げようにも、各サイロ内では独自の見解や任務を持っており、成功の判定基準もKPIもバラバラのため、広く共有したところで文脈が一切不明で真の顧客ニーズは見逃されてしまうのです。
カスタマージャーニーには顧客にとって重要な部分がたくさんあるにも関わらず、従来型のプロセスの見える化ではそれが何一つ浮かんでこないのです。
組織は測定だけに止まらず、サイロを飛び越えて戦略的に体験にイノベーションを起こす、信頼できる、拡張可能な、今までにない方法を求めているのです。
それを実現するのがサービスデザインなのです。

1.3 なぜサービスデザインのアプローチなのか?

サービスデザインには、以下の特徴があります。

●デザインプロセスの考え方とワークフローを採用し、柔軟で気軽に使えるツールを組み合わせている
●短期間に実験とプロトタイピングを繰り返し、可能なソリューションを迅速かつ低コストでテストするのと同時に新たな知見とアイデアを生み出す
●個人的見解や権威ではなく、リサーチとテストの上に成り立っている
●イテレーティブアプローチにより意思決定のリスクが低くなる

そのため、最初から完璧にやらねばと気を遣う必要はなく、さまざまなオプションを展開させ、プロトタイピングとテストの構造化されたプロセスを用いて、試しながら向上させていくのです。

また、サービスデザインのツールにはデザイナーの考え方が反映されていて、視覚的で素早く気軽に使えてわかりやすいです。
つまり、異なるバックグラウンドを抱えた組織間、サイロ同士がコラボレーションするための共通言語になるのです。

サービスデザインは多様なステークホルダーを関与させ、権限を持たせ、力を集結させて行うプロジェクトに、ずば抜けて強力な共通言語とツールセットを与え、体験や業務やビジネスのニーズのつり合いを取るための、堅固だがわかりやすい方法なのです。
組織はサービスデザインを活用して、現在提供しているサービスを向上させ、新たなテクノロジーまたは新たな市場の発展をベースにしてまったく新しいバリュープロポジションを確立することができます。

SIerのしがない所感

近年、SIerの中では「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という言葉をよく耳にするようになりました。(聞きすぎて夢に出てきそうなくらい)
変化が激しい時代で、外部の変化に対応するだけでなく組織内の変革も牽引し、新しいテクノロジーを活用して、新しいサービスやビジネスモデルを創出し、顧客エクスペリエンスを向上させ、他社との差別化を図ることが求められています。
これを実現させるのがまさにサービスデザインなのだと改めて強く実感しました。
まだ日本国内ではサービスデザインの知名度はそれほど高くありませんが、これからの時代を生き抜くために必要な考え方・手法であるとmidori labsでは確信しています。

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