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伝説の編集者が「完璧な第1話」と絶賛したジャンプ作品。
少年ジャンプに長く携わり〝伝説〟と呼ばれた編集者がいます。
鳥嶋和彦さん。
『DRAGON BALL』の鳥山明先生、『電影少女』の桂正和先生、『DRAGON QUEST-ダイの大冒険ー』の稲田浩司先生らを担当。『Dr.スランプ』に登場するDr.マシリトのモデルになった人物です。
その鳥嶋さんが絶賛した〝第1話〟があるといいます。
こちらの書籍で矢吹健太朗先生が証言していたのですが……、
『SLAM DUNK』と『北斗の拳』が「完璧」なのだそうです。
一体、どうしてなのか。読み返してみることにしました。
一九九✕年、世界は核の炎でつつまれた! 荒廃した世紀末、世は暴力が支配していました。
そんなある日、荒くれ者たちの変死体が発見されます。それはまるで体の内部から爆発したようでした。
一方、ある街では不審な男が捕らえられていました。脱水症状で朦朧としていたところ、野盗用のワナにかかったのです。そう、この男が主人公のケンシロウです。
牢に入れられたケンシロウは、ひとりの少女に施しを受けます。家族を失ったショックで失語症になっていた、リンです。ケンシロウは秘孔を突き「心の叫びが言葉を誘う」と言うのでした。
そのときです。街は荒くれ者たちに襲われてしまいます。リンも武器を取って戦おうとするのですが、敵うはずもありません。鷲づかみにされ、首をねじ切られそうになります。
駆けつけるケンシロウ。すると、リンは「ケーーーーーン!! 来ちゃだめ~!!」⚡なんと、心の叫びをあげたのです。
怒れるケンシロウは不思議な拳法で敵を爆発させていきます。そして、再び荒野へと旅立っていくのでした。
「ゴメンなさい桜木君 あたしバスケット部の小田君が好きなの」
「ズッコーーーーーン💔」
いきなり失恋した赤髪のヤンキー。その人物こそ主人公の桜木花道です。このときのショックで「バスケット」という言葉に敏感になってしまいます。
そんなある日、桜木は「バスケットは… お好きですか?」と尋ねられます。「ふぬ…」と怒りかけるも、目の前にはモロ好みの女子。すぐさま「大好きです」と豪語するのでした。
好きな娘と登下校することが夢である桜木は、浮かれまくります。絡んできた上級生にキレそうになったときも、その女子=晴子の声を聞いただけで上機嫌になるのでした。
放課後、桜木は晴子に誘われ体育館を訪れます。そこで「スラムダンク」のことを知るのです。
試しにやってみると、とんでもない跳躍力! ボードに頭をぶつけ、成功とはいきませんでしたが、ポテンシャルの高さが垣間見えたのでした。
桜木がバスケット部の救世主になることを確信した晴子。一方、校舎の屋上では上級生たちが決闘をすっぽかされていたのでした。
読み返してみて気付いたことがあります。
どちらも、具体的なゴールは提示されていない(ユリア奪還/全国制覇)。代わりに、ページの大部分を割いているのは、主人公の掘り下げである!
ケンシロウの魅力は優しさです。荒廃した世界で、人々が失ってしまっているものを持っています。そして、強い。非道な敵に対しては怒れる男に豹変し、人智を超えた拳法で敵を叩きのめします。
一方、桜木花道は憎めないところが良い。一見コワモテですが、好きな娘との登下校が夢なんて、お茶目じゃないですか。もちろん、身体能力の高さ&伸びしろも大きな魅力ですよね。
つまり……、
第1話で大事なのはキャラクターを立てること、ではなかろうか?
実は最近、その仮説を裏付ける書籍が発売されました。鳥嶋さんによる著書です。
漫画をゼロから書こうという時、漫画家志望者なら誰もが直面する二択がある。
それは「どんな主人公にしようか?」、「どんな物語にしようか?」ということだ。
共にマンガには不可欠だが、優先すべきはどちらなのか? 長編連載漫画ならその答は明快で、まずは主人公ありき、である。
主人公さえ魅力的なら、行く末を見守りたくなる。物語がわかりにくくても、付いて行こうと思える。
なるほど、確かに。
主人公ありきの構成――。これは創作に限ったことではありません。あらゆる文章の参考になる考え方ではないでしょうか。
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