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羽生結弦選手は〝超ファーストペンギン〟です。

フィギュアスケート・羽生結弦選手。

僕が22年間、放送作家の仕事を通して見てきた中で、唯一無二の存在感を放つアスリートです。

理由は、その言動。

〝超ファーストペンギン〟とでも言いましょうかねー。

天敵がいるとわかっている・・・・・・海へあえて真っ先に飛び込み、えさをもぎ取ってくるような。そして、すぐ次の海へ真っ先に飛び込んでいくような。

恐怖に打ち勝つほど強くなる。それを肌で知っているペンギン。

印象に残っているのは2013年、福岡で行われたGPファイナルで初優勝した際のインタビュー。

羽生選手はこのとき限界ギリギリの攻撃的プログラムについて、こう言っていました。

「挑戦自体がやっぱり僕のモチベーション上げるためのものだと思っているので。できることを出し惜しみしてやっていたら、つまんないじゃないですか。それは多分一生懸命ではないんですよ」

2013年12月9日放送『報道ステーション』

フィギュアスケートは採点競技ですから、技の難度だけ高くても、完成度が低いと減点されてしまいます。そのため、戦略として難度を少し落として、完成度を優先するのがセオリーといえます。

しかし、羽生選手は難度を最高にした上で、さらに完成度も最高を目指すべきというのです。

また、こんなこともありました。

2014年の中国杯では練習中にほかの選手と衝突。足元はふらつき、顔面蒼白、頭にテーピングを巻きながら強行出場したことが。

大事な五輪シーズン、この試合で無理をする必要はなかったのに、最後まで演技をやり切った。

自らを奮い立たせたのは「ここで逃げなかったら、諦めなかったら、また限界を突破できる」と考えたからではないでしょうか。

〝挑戦〟をこれだけエネルギーに変換できるアスリートはそういないと思うんです。

その羽生選手、今回の北京五輪でもとんでもないことに挑戦しました。

史上初のクアッドアクセル。

金メダルを獲得したネイサン・チェン選手をして「神の領域」と言わしめた最高難度の大技です。

結果、成功はしなかったものの、4Aは認定。世界はその偉大な挑戦を絶賛しました。

ところが。

きのう『報道ステーション』が行なったインタビューで、羽生選手はこう言ったのです。

「結果とれなかったら無駄だとは思います。はっきり言って。僕はそういう人間なんで」

2022年2月14日放送『報道ステーション』

僕にとっては衝撃でした。

「命をかけて練習してきた」「正しい努力をしてこれた」と発言してきた羽生選手。それでも、結果を出せなかったらダメなんだと。

今は「よく頑張った」と自らを褒めるのではなく、ひたすら「悔しい」……。

ペンギンはえさを獲るために海へと飛び込むわけで、えさを獲れなかったら意味がない。

ここに〝超ファーストペンギン〟の矜持を見た気がしました。なんという誇り高さか!

まさに唯一無二の存在感を感じた瞬間でした。

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