糀谷駅前で道に迷ってるインバウンドな人に道案内をした話
前回のあらすじ。川崎でハロウィンを楽しんで京急に乗って糀谷駅へ帰ってきたら、駅前ロータリーで迷っていると思しきインバウンドのおばちゃんがいた。
糀谷駅前のロータリーで、子供を乗せられる自転車を押して歩いていた通りすがりの地元民に、
「英語喋れませんか?」
と話しかけているインバウンドのおばちゃんがいた。話しかけられた人が首を横に振っていたので、即座に割って入って話を聞いてみた。
「タクシーに乗りたいと思ってタクシー乗り場で待ってるんだけど全然タクシーが来ないの。そこの道路で止めようとしても全然止まってくれなくて困ってるのよ。どうしたらいいの?」
「どこへ行きたいの?羽田空港?」
「いいえ、六本木に行きたいの!」
「六本木!? それだったらここから電車に乗ったほうが早いし安いよ」
「電車で来たんだけども行き先が全然分からなくて、よくわからないところへ来てしまったから、この駅で降りてタクシーに乗ろうと言うことにしたのよ。六本木へ行きたいのに乗る電車乗る電車、ことごとく思ったところへ連れて行ってくれなくて全然わからないの…」
スペイン語訛りだけどもクリアな英語で話してくれたこの方、母親と思われし老女と一緒で、少ない荷物、離れたところに座りこんでいる夫がいる様子からして、都内か横浜かを観光して回ってて帰ろうとしたら道に迷ったようだ。おそらく空港直通に乗せられてしまったか、京急蒲田での乗り換えに失敗したか、もしかしたらさらにその前段階でなにかしら間違えたかといったところだろう。それならいっそタクシーに乗ったほうが確実で不安も少ないだろう。しかしこの駅前でタクシーが客待ちしているのは見たことがない。タクシースタンドとして立派な看板はあるもののタクシー会社の連絡先などは一切書かれていない。タクシー会社の電話番号やアプリの QR コードでも貼ってあればだいぶ違うんだけどね。そして眼の前の環八は内回り羽田空港方面。すでに客を乗せて空港へ向かっているか、「羽田当番」で空港へ向かう回送くらいしかいない。逆方向外回りも、これまた空港で客を乗せて長距離ホクホクなタクシーか、空港へ送った帰りで規則上客を乗せられない東京23区外の回送ばかり。経験上ここで流しを拾うことは非常に難しい…。
そんなことを軽く説明して、
「ここの駅からなら地下鉄直通で乗り換え一回で行ける方法があるんだけど、PASMOとか持ってる?」
と聞いたら、そこは問題ないとのこと。
「それなら改札で時刻表を見て、これに乗れば大丈夫!という列車教えてあげるよ」
と伝えたところ、さっそうと取り出した iPhone に映し出された Google Maps の検索結果。すでに六本木のホテルへの検索結果を出してくれていたのだが、
「蒲35系統のバスで蒲田からJR乗り換え浜松町で大江戸線」
だの、
「歩いて京急蒲田から都営線直通大門」
だの、地元民でも迷うような結果が多すぎてこれはなおさら混乱する…。一応糀谷から都営線直通で大門乗り換え大江戸線という結果も出るのだが、検索を試みたのが10分ほど前で行ってしまってる。日本の鉄道はパターンダイヤだから、京急空港線の場合10〜20分ごとに同じ行き先の列車が走っているのだが、それを知らないと不安になるよね…。
検索画面を借りて、出発時刻を今から5分後に変更して結果を表示させたところ、ちょうど10分後に印旛日本医大行きが来る。それで大門乗り換え大江戸線という結果が出てきた。
「これなら乗り換え一回だけど行けるかな?」
と話すと、
「大門乗り換えならわかるわ!これに乗ればいいのね!」
と理解してもらえた模様。ようやく安堵の表情を見せたその家族連れ。
「改札を入ったら左側、品川方面のホームに行くんだよ。で、この結果以外の列車には乗らないように!」
と念を押したので、あとはダイヤ乱れなどなく、大門で上手いこと乗り換えが出来ることを祈りつつ別れた。
言葉がほとんど通じない外国の見知らぬ土地で、
・複雑怪奇な行き先で日本人、いや地元民でも迷う乗り換え駅
・全く機能していないタクシースタンド
・交通手段が多いが故に、無駄に情報量が多くなってしまった検索結果
という組み合わせでエアポケットに陥ってしまっていたのは不幸だったとしか言いようがない。今回たまたま通りかかって、無事救出することが出来たようでなによりだった。
大田区においては、タクシースタンドに張り紙の一枚でもやってくれればこうして路頭に迷う人を救えるのでは?とは思った。インバウンド需要と民泊の活用を全面に出して、大田区の知名度と価値の向上、ひいては経済の活性化を狙ってるんだからさ。実際この界隈では糀谷や大鳥居でもインバウンドの人たちを見かける上に、住宅地の真ん中に民泊が出来ていたりするわけだから、そういった街を挙げての細かい対策ができたら良いよね。