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『アナザーラウンド』仕事中も酒飲んで血中アルコール濃度0.05%に保つ力技

”北欧の至宝”マッツ・ミケルセンが主演を務める『アナザーラウンド』は、第93回アカデミー賞で国際長編映画賞を受賞したデンマーク映画。映画ファンの中ではイケオジの代名詞的存在であるマッツが、今作でも十二分に存在感を発揮していますよ。マッツ好き、イケオジ好きはぜひご覧あれ!

あらすじ

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プライベートでも仲の良い4人の中年男性教師。家庭でも職場でもパッとしない日々を送っていたが、ノルウェー人哲学者のフィン・スコルドゥールが主張する「血中アルコール濃度を0.05%に保てば仕事の効率が良くなり想像力がみなぎる」という仮説を証明するべく実証実験してみようじゃないか!という事に…。

タイトル『アナザーラウンド』

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今作はデンマーク映画なので、もちろん劇中の言語はデンマーク語。今やハリウッド映画の常連にもなったマッツ・ミケルセンの母国語演技を楽しめるというのも魅力の1つです。ちなみにマッツさんは、デンマーク語にスウェーデン語、英独露仏語の6か国語を操るマルチリンガル俳優なのです。

さてポスターにあるように、原題は『DRUK』
Google翻訳によると「大量飲酒」という意味だそう。
英題は日本語と同じ『Another Round』

Another Roundって直訳の意味は分かるんですけど、何かしらの慣用句で別に意味があるんではないか…という事で調べたところ"アナザーラウンド"は、バーなどで「もっとお酒ちょうだい」的なノリで注文するのに使う文句のようです。

というように、どの言語のタイトルにしても「お酒」に関する意味を持つことは間違いなく、「お酒」が何かを良くする面と悪くする面の両面性を持っていることが、この映画における大きなテーマになっています。

 マッツ・ミケルセンについて

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『007 カジノロワイヤル』の悪役をはじめ、今やハリウッド映画でも見ることも珍しくないマッツ・ミケルセンは、今作の様な母国の映画でも活躍を続けています(日本で言うと渡辺謙さんみたいなイメージでしょうか)。

マッツさんは、1965年11月22日(いい夫婦の日やん)生まれで、2021年9月現在は55歳!若いころは体操選手としてトレーニングを受け、俳優としてのキャリアをスタートさせるまでは10年間プロダンサーを務めていたそうです。映画俳優としてのデビューが1996年。

ちなみにそのデビュー作は、同じくデンマークのニコラス・ウィンディング・レフン監督の『プッシャー』。主人公の麻薬密売人の相棒のチンピラ役で、今作のイケオジ役とは振り幅が凄いですね。

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そんなマッツさんと、ゲーム「DEATH STRANDING」で仕事を共にしたゲームクリエイターの小島秀夫さんは下記のように語っています。

『アナザーラウンド』を観て思ったのが、どのシーンもすごくマッツさんらしいということ。食事をしている雰囲気とか、僕が実際に接した、オフの時のふだんのマッツさんそのままです。(映画パンフレットより引用)

素のマッツ・ミケルセンってあんな感じなのか…というポイントに加え、今作では彼のダンスとロンダート(体操の技)が披露されますよ。私はそのシーンだけでも鑑賞料金を払う価値があると思ったほど感動しました。

トマス・ヴィンターベア監督について

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(左:マッツ・ミケルセン 右:トマス・ヴィンターベア監督)

トマス・ヴィンターベアはデンマークの映画監督で、マッツ・ミケルセンと仕事を共にするのは『偽りなき者』以来の2作目になります。『偽りなき者』もアカデミー国際長編映画賞にノミネートされた名作ですが、その話はまたの機会に。

ヴィンターベア監督は、同じくデンマークの映画監督ラース・フォン・トリアーと共に「ドグマ95」と呼ばれる映画運動を始めたことでも有名です。

ドグマ95には「純潔の誓い」と呼ばれる10個の映画製作におけるルールがあり、ドグマ95の公式サイトから誓いを守って制作すると宣言し申請することでドグマ映画として認定されるそうです。

ドグマ95「純潔の誓い」
1. 撮影はすべてロケ撮影だけで行わなくてはならない
2. 映像と音を別々に生み出すべからず
3. キャメラはすべて手持ちで撮影しなくてはならない
4. カラーフィルムで撮影しなくてはならない
5. 光学合成とフィルターの使用を禁ずる
6. 表面的な行動を含んではならない
7. 時間的・地理的な乖離を禁ずる
8. ジャンル映画は許されない
9. 上映フィルムの規格は35mmのスタンダードサイズでなければならない
10. 監督の名前をクレジットすべからず

参考サイト

記念すべき1作目のドグマ映画『セレブレーション』を、当時29歳だったトマス・ヴィンターベアが監督しています。こうした活動が認められ、2008年のヨーロッパ映画賞ではラース・フォン・トリアーらと共に「世界的貢献賞」を受賞しました。

今後もますます期待していきたい映画監督の1人です。

劇中の楽曲

さて、話が本編から反れてしまいましたが、劇中でとても印象的に使われている曲を2つほどご紹介します。

1つはThe Metersの「Cissy Strut」
マッツ達4人の教師が酒に溺れる時にかかっています。
個人的にも大好きな70sファンクの曲ですし、繰り返し使われていたことから監督としても印象を残すために使用したのではないかと思っています。

もう1つはScarlet Pleasureの「What A Life」
今作のメインテーマであり、卒業する学生達を送り出す、そしてマッツ・ミケルセンが躍りだすシーンでかかります。

重要なシーンでの曲なので、監督とマッツ・ミケルセンはかなりたくさんの曲を探して聴いて…それでもピンと来なかったそんな折に、監督の奥さんが提案してくれたのがこの曲だったそう。

この曲がかかるそのシーン、とにかく素晴らしく、その時の気分に浸りたい私は、鑑賞後1週間たった今でもエンドレスリピート状態です。

おわりに

映画が好きなみなさんはもちろん、マッツ好き、イケオジ好き、お酒好き、音楽好き、ダンス好き、劇中のマッツの様な仕事の疲れた方々まで。万人受けするということではありませんが、この映画のメッセージが響く方は沢山いるはずです。

悪いこと言わないから劇場に観に行った方が良いっすよ!


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