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映画好きSNSコンサルが観た『SNS-少女たちの10日間-』

このドキュメンタリーは、社会的な実験と、性犯罪の証拠という要素を兼ね備えていながら、見るに堪えないという側面も持つ強烈なコンテンツ。ぜひ怖いもの見たさでも良いので、普段は見ることのできない現実を直視していただきたいです。

私もSNSのお仕事をしている以上「SNS」と名の付く映画を観ない訳にはいかんぞ、という事で鑑賞してまいりました。

映画の概要

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2020年のチェコのドキュメンタリー映画。巨大のスタジオの中に作られた3つの子供部屋と、幼い顔立ちをした3名の大人の女優。

彼女たちは作られた子供部屋という疑似空間で”12歳”という設定の下、偽のSNSアカウントを開設し友達を募集。10日間のチャットで、2,458人が彼女たちにコンタクトをしてきました。

【ルール】
①自分からは連絡しない
②12歳であることをハッキリ告げる
③誘惑や挑発はしない
④露骨な性的支持は断る
⑤何度も頼まれたときのみ裸の写真を送る(※偽の合成写真)
⑥こちらから会う約束を持ちかけない
⑦撮影中は現場にいる精神科医や弁護士などに相談する

撮影方法

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まずは少女の部屋の再現。

スタジオ内でコーディネートされた子供部屋にさらに生活感を出すため、今現在の彼女たちが実際に使用しているものや、子供時代に好んでいたものを持ち込んで部屋を彩っています。

どの国のどの地域に住んでいるのかという設定まで決まっているので、この子供部屋は「現在〇時〇分でそこの天気は〇〇」という事まで辻褄が合うように、部屋の外から入ってくる疑似日光のライトニングまで調整されている徹底ぶりです。

女優陣は撮影2週間前から、12歳の女の子がどんなふうに話し、どんな風にメールを書くのかなどを徹底的に研究しており、メイク担当は若干顔の血色が異なるという思春期前の女の子のメイクを施しているそうです。

さあ、そんな形でできた「女の子」と「女の子部屋」。
実験の結果やいかに。

実験結果

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冒頭に書いた通り、10日間の実験の中でこの疑似”女の子”にSNSでコンタクトを取ってきたのは2,458人。中には女性もいました。

チャットや電話が始まり、一言二言話した直後にはもう「服を脱げ」と脅迫まがいの指示をしてくるような輩が次から次へと現れます。自分のイチモツを見せてきたり、ポルノサイトのリンクを送りつけてきたりと、モザイクは入るものの、成人男性の私でも吐き気を覚えるような所業が映画館の大きなスクリーンに映し出されるのでなかなかにしんどいものがあります。

コンタクトを取ってきた人達には所謂”ロリコン”と呼ばれる人もいますが、「幼いから」ではなく「高圧的な態度をとることで服従させ支配できるから」という理由で接触してきている人も多く、尚更タチが悪い。

映画を観ていただきたいのでこれ以上の詳細は書きませんが、しんどいけれども現実で実際に起きている事で、これを直視することには意義があると思います。

日本でも起こり得るのか

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この映画では主にFacebookとSkypeが使用されていたようですが、同様にSNSを使った子供に対する性的被害というのは日本でも起こり得るのでしょうか。

結論、起こり得ますし、もう起こっています。

2020年(令和2年)にSNSに起因する被害を受けた18歳未満の子どもは1,819人にのぼることが、警察庁の調査結果より明らかになっています。被害者は中学生と高校生が9割近くになっており、利用されたSNSは「Twitter」が最も多く全体の35.3%を占めております。

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(画像出典:警察庁)

コロナ禍の影響なのか何なのか、増加の一途を辿っていた被害児童数は幸いにも令和2年は前年を下回る数で推移しましたが、依然かなり多い印象です。

被害内容の割合の中で最も多いのが「青少年保護育成条例違反」です。その内容は、みだらな行為やわいせつな行為などの行為そのものや、風俗店での性的サービス提供の勧誘行為、性的なものでなくても大麻や覚せい剤などの薬物関連の行為が含まれています。

被害者が利用していたSNSは、被害人数の多い順にTwitterが642人、Instagramが221人、ひま部が160人、TikTokが76人、KoeTomoが63人となっています。Twitterを利用していた被害児童が最も多く全体の35.3%となっており、その他のSNSも前年比で増加しているものが多いという現状です。

今後、より流行しそうなClubhouseやTwitterの新機能であるSpacesなどの音声SNSも、その温床となる可能性はあると思います。

おわりに

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長々とSNSの危険性という部分にフォーカスして書いてきましたが、SNSが好きでSNSの仕事をしている立場から擁護させてもらうと、問題なのはSNSというプラットフォームを悪用している人達の存在です。

もちろんその提供側にも、広告費の確保のために厳しい規制を強いていないという問題がありますし、事実そういったことが劇中でも語られます

映画はハッキリ言って観ていてしんどいです。けれど、スクリーンに映されるのは紛れもない真実であり、だからこそ社会的な意義やドキュメンタリーとしての価値は物凄く高いと思いました。事実、犯罪の証拠として現地警察が動いたようですし、同様の事案の撲滅に一役買っています。

圧倒的なリアリティをその目で確かめていただきたく、ぜひお近くの劇場でご覧ください。
あ、デートには向いてないですよ。念の為。


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