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死にたくなったらダンスホールへ disc 7

高校生の頃に60年代のロックに傾倒し、アナログのレコードにも興味をもちはじめた。現代ほど情報が溢れておらず、頼りになるのは専門誌だけで、博打のような感覚で音源を購入していた。
地元の田舎町にはアナログを取り扱っている店がなく、リサイクルショップのジャンク品が放り込んであるような箱の中から、レコードを探すしかなかった。規則性がなく、無造作に陳列されているので、レコードを見るだけで体力が消耗したのを憶えている。
初めてレコードを買ったのも近所のリサイクルショップだ。本当にジャンク品ばかりで気が滅入ったが、なんとか4つのバンドをピックアップした。ビートルズ、T.レックス、ローリング・ストーンズ、ピンク・フロイド。全て購入するつもりでいたが、中古とはいえども高校生の財力では厳しい。当時の好みでいえば、無難にビートルズを選択したかったのだが、妙な自意識が芽生えていて、こじらせていた時期。
「初めて買ったレコード」が、“ビートルズ”でいいのだろうか。サブカルかぶれならではの斜に構えたどうでもいい苦悩に陥る。ここはちょっと背伸びをして、“ピンク・フロイド”にした方が通っぽくないだろうか。若くしてサイケデリックの世界に触れているのだ。しかし、ピンク・フロイドは少し苦手であった。結局のところビートルズを購入したのだが、決め手は“青盤”という通称の響きである。
それから暇を見つけてはリサイクルショップを巡り、異常に窮屈なレコードコーナーで腰を痛めながら名盤の発掘を続ける。労力の割にさほど成果はなかったが、NYパンクのジェームス・チャンスを見つけた時は仰天した。あとは意図が分からない変なデザインのEPばかりをジャケ買いしていた。
しばらくすると、友人と一緒にレコードを発掘するようになり、待望していたレコード屋が地元にオープン。仲間が増えたことで、共通の話題で盛り上がれる楽しさもあるが、“競争相手”という側面もある。僕だけが目当てのレコードを入手してしまい、帰りの電車内で気まずくなる時間を何度も過ごした。
そのような青春の中で手に入れたレコードは、やはり思い入れが強い。ダムドの『ニュー・ローズ』を聴くと破天荒なドラムに痺れると同時に、埃まみれになりながらレコードを探していた高校時代を思い出す。そして、ノスタルジックな気まずさが、そこらをゆらゆらと漂うのであった。

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