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355 命を懸けた訴え

はじめに

皆さんは、たとえそれが人の命を奪うような重大な事件であっても、いじめをした児童や生徒に配慮して、まだ未成年だからこれから更生するという理由で実名報道されることは少なく、被害者の多くは加害者が何事もなかったように日常を過ごしている姿を見て、悔しさを募らせていることに疑問をもったことはありませんか。
今日は、福岡県田川市立中の生徒が始業式の日、4月5日に自らの手で命を奪ったいじめによる被害を通して、学校の対応や子どもたちの置かれている状況について少しお話してみたいと思います。

福岡県田川市立中で起きていること

この学校は600人規模の学校です。中規模から大規模学校だと言えます。その生徒の内、約80人の生徒が不登校になっています。保護者の方からは「これだけ色々な問題が起きているのに・・・」という発言が出ているほどですから、今回の痛ましい事件はその氷山の一角なのでしょう。
その証拠に、今回の生徒が自ら命を絶った後に自分もいじめにあっているという声が60件近く上がってきているそうです。また、その内、今回の生徒と同様に重大事態にある事案は3件あったそうです。
これまでにそうしたいじめを告白できず、対応してもらえなった生徒たちがどれほど卒業していったかを考えると田川中とそれにかかわった教育者たちは、今回のことで何を教訓としてどのように教育改革を進めていくか明確に児童や保護者、地域に示す必要があります。

韓国では

2023年4月、韓国政府が打ち出したいじめ対策は、日本の教育者にとっても大変に衝撃的な内容であり、今後の日本の教育においても一つの考え方として議論の対象となったものでした。
その対策とは、「いじめの加害記録を大学入試の合否判定に反映させる」というものです。韓国では、いじめや暴力の件数がこの10年で3倍に増えています。こうした行為を行う生徒、加害者に対して厳罰化を進めたのが今回の対策と言えます。韓国では、日本以上に大学進学については受験競争は激しく、その後の就職にも大きく影響します。
また、韓国では小学校から高校まで学校でいじめがあった場合、学校内部だけでこの問題を解決するということはありません。いじめの発生とその実態が確認ができたものについては、学外に設けられた審議会などでいじめをした生徒、つまり加害者に対して処分を決定します。
この処分についても9段階存在し、最も軽いものは被害者への書面による謝罪ですが、「出席停止」、「クラス替え」、「転校」、「退学」の順に処分が重くなっていきます。
さらに、2026年からは、韓国の全大学において大学入試でいじめの加害記録を合否に反映するよう義務づけることになります。もうすでに韓国を代表する教育機関として、ソウル大学ではいじめの加害記録を合否に反映させる取り組みを実施しています。つまり、いじめをしたものは一流大学への入学が困難になり、社会的にも大きな制裁を受ける仕組みができたということです。これは大きな抑止力となるのでしょうか。3倍に膨れ上がってきたいじめの報告がどこまで抑制されるのか、今後の変化を慎重に見ていく必要があるでしょう。いずれにしても、被害者感情に寄り添った政策であり、国もいじめを許していませんという強いメッセージを発信していることには間違いありません。

世界の対応と日本の対応

もう少し代表的な国々の対応を見ていきましょう。
例えば、ヨーロッパを代表する国の一つであるフランスでは被害者が自殺や自殺未遂に至った場合には、加害者の年齢によっては禁錮10年の刑事罰などが科されます。アメリカでは、各州で差はありますが停学や退学などの厳しい処分を出すことは少なくありません。
それに対して日本は、学校内で注意する又は、保護者も交えて生徒指導を行うなどが関の山でしょう。これは、日本の学校では教師や学校の保身のためにいじめを隠蔽する体質が根強く存在していることもありますが、最も顕著なのが教育問題としてとらえている点にあります。
教育問題としてとらえるという考え方はある一定の条件下では重要な視点です。しかし、重大ないじめは被害者の命や尊厳を踏みにじる重大な犯罪であるという認識が足りないのです。

教育の放棄ではない

いじめは、学級や学校の中での人間関係の問題と考え、教師が解決すべき問題だと信じている人が多く存在します。けんかや人間関係のトラブルなどといった内容といじめを適切に区別してみていけば、教育的な指導で解決することと専門機関や警察相談するべき内容であることが見えてきます。
校内だけで解決しようとする姿勢は、加害者に配慮してのことなのか教師や学校の体面なのか、皆さんはどのように考えますでしょうか。
いじめという問題を学校が解決しきれないことは、もうすでに十分に証明されています。それは、いじめでこれほどまでに失われている人生や命があるからです。外部機関をたよることは、教育の責務を放棄しているわけでも捜査機関に生徒を売り渡しているわけでもなんでもありません。
むしろ、最悪のケースに至り、加害者に一生をかけて償っても償いきれないような重荷を負わせる前に、事の重大性を認識させ、自らの行為と向き合わせる更生と矯正の機会、まさに教育の機会をつくることにつながるのです。

一人で悩まないで、大人を頼って

文部科学大臣から子どもたちにメッセージが発信されています。今日本では、いじめに苦しんでいる子どもの数が過去最多になっています。不登校の児童生徒も今までにない増え方をしています。
いじめに気づくそして対応していくための、不登校いじめ緊急対策パッケージというものが進められています。身近な大人に安心して相談できない子どもたちに対しても、専門機関が相談に乗ってくれる仕組みが広がっています。困った時には、次のような相談窓口を利用しましょう。


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