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160 秋しらす


はじめに

皆さんは、秋を知らせる魚と言えば何を思い浮かべるでしょうか。私は、秋刀魚(さんま)も思い浮かびますが、鰯(いわし)が好きです。今日は、そんなカタクチイワシやマイワシの稚魚、しらすについて教育コラムでお話ししたいと思います。
きっかけは、新物の秋しらすをいただいたことにあります。しらすと言えば、春の季語にもなっていますが、イワシ漁の盛んなこの時期はしらすにとってもシーズンなのです。むしろ、春より秋のシラスの方が好きだという方も多いかもしれません。

しらす

そもそも、スーパーなどでもよく見かける「しらす」ですが、はじめにも述べたように、カタクチイワシやマイワシの子どもがしらすです。食べ方もいろいろですが、売られるときには、釜揚げシラスや生しらすやしらす干し(ちりめんじゃこ)などといったように、乾燥のさせ方や調理の仕方に違いがあります。
春先から初夏までは、少し色味の濃い、クリーム色に近いしらすが多く見られます。一方、秋~冬は真っ白なしらすでしっかりとした風味でありながら、さっぱりとした味わいが楽しめます。様々な薬味や料理の具材としても秋のシラスは、好んで用いられることが多いのもこうした理由からです。

海を学ぶ、命を学ぶ

しらすのみならず、魚の漁獲量については減少傾向にあります。みなさんもたびたび、鰻や秋刀魚が不漁で値段が高くなっている等のニュースを目にしたことがあるかと思います。
人手不足もありますが、この原因は、乱獲と気候変動が大きな要因だと言われています。漁獲量が減れば、魚の値段も上がりますし手に入りにくくなります。ここ最近の魚の値上がりは、船の燃料費や輸送費の高騰だけが理由ではないのです。実は、乱獲と気候変動の影響は甚大で、しらすの漁獲量も南の方の県では、半減するほどに減っているのです。
こうした海の実情とそれに対する取り組みを取り上げ、教育活動の一環として様々な方法で提案しているのが、日本財団の海と日本プロジェクトと呼ばれるものです。「海を未来へ引き継ぐアクションの輪を広げて」という呼びかけに多くの人々や企業が参加しています。

地球の表面の 7 割は海洋です。また、地球上の水の 97.5%は海にあるのです。生命の誕生も38 億年前に海で起こりました。地球の気候システムに海洋が与えている影響も大きく、海を中心とする「水の大循環」人間を含むすべての生物にとって命そのものであるとも言えます。
 また、海洋と人間の歴史は深く、経済活動とも密接に関係しています。海がどれほど人類史に恩恵を与えてきたかを見ていくことは大変に重要な学びの要素を含んでいます。環境教育の充実がさけばれている今日において、海洋環境や生態系に配慮した生活の重要性を学ぶことのできる「海洋教育」は有効な手段だと言えます。

また海洋教育は、食育にも有効です。紹介する本は「しらすどん」という本で、少し前に出版された絵本です。

どんぶりに残された1匹のしらすからお話が始まります。食べ残されたしらすがどのような道をたどるのか、また、そのしらすが自分だったらどんな気持ちになるのか、どんな体験をするのかを考えながら読むことができます。
海や魚を通して、命や環境について考え学ぶことは、まさに生きる力を培う教育に直結する要素を含むと言えます。

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