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どんな卒業をイメージするか?から始める支援

発達障害や不登校など「学校生活に特別なニーズがある子どもたち」の個別支援を行う学習教室・スタジオplus+の石川です。

私たちスタジオplus+は、利用開始の際に保護者の方に必ずする質問があります。

「お子さんがどうなったら、スタジオplus+を卒業してもいいなと思えそうですか?」

これから入会というときに、いきなり「卒業」の話をされるので、面食らってしまう方もいます。それでも、卒業のイメージを一緒に持てるようにと思い、話をするようにしています。

この時に話す卒業のイメージが、ご家庭と教室の共通の目標になり、そこに向かって一緒にお子さんをサポートしていくことができるからです。

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支援における「卒業」というゴールは何か?

今年度も、スタジオplus+は卒業生を送り出します。

新年度で学年が上がったり、高校に進学したり、区切りをつける・自分の卒業と向き合うといったきっかけにしやすいお子さんたちにとっては春が卒業のシーズンになることがあります。
すでに卒業したお子さんの中には、小学生もいました。

「個別で指導してもらったので、学ぶための基礎力が身に着きました。次は、集団で学ぶ場に挑戦してみようと思います」という理由からでした。

お子さん自身も、「学校での授業もわかるようになったし、友だちがいるところに通いたいから、プラスは卒業する!」ということだったので、喜んで送り出しました。

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また、高校1年生の生徒たちの中には、夏休み前や冬休み前に卒業していく姿もありました。

みなさん、「新しい環境(高校)にも慣れたし、自習もできるようになったから、もうスタジオplus+には定期的に通わなくても大丈夫だと思う」という理由でした。

保護者の方々の本音としては、不安もあったと思います。
教えてもらえるなら、支えてもらえるなら、ずっと通わせたいと思っていたかもしれません。

それでも、「子どもが自分で決めたことだから」と、卒業に同意してくれました。

中には、「支援を必要とし入会の順番を待っているお子さんのために、我が子の席をお譲りします」と言ってくださったお母さんもいらっしゃいました。

私たちが目指しているゴールは、子ども達に「スタジオplus+がなくても、大丈夫」と言ってもらえることです。

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自分の力を伸ばす、誰かに頼ることを学ぶ

スタジオplus+は福祉事業所であり、通える年限が高校生までと定められています。

ギリギリまで通うのもひとつの選択ですが、それよりも前に卒業することで、いざというときには戻って来られる余白をつくっておく。これも、選択の一つかもしれないと思うことがあります。

いきなりサポートが受けられなくなるよりは、少しずつ、受けるサポートを減らしていく。

そうすることで、他の場所に繋がったり、スタジオplus+の講師以外の大人に頼ることができるようになったりして、お子さん自身が、社会の中で生きていくための力を身につけていくのかなと思うのです。

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自立というのは、なんでもかんでも自分ひとりでできるようになることではなくて、人や場所に上手に頼って、社会の一員として生きていけるようになることなのだなと、この仕事をしていてつくづく思います。

だからここでは、自分自身の力を伸ばしながら、他の誰かに頼ることも学んでいってほしいなと思っています。スタジオplus+に通っている間に、外にも頼れる場所や頼れる人を増やしていってほしいのです。

卒業後も社会の一部の繋がりとして


私は以前、就労支援の現場にいました。就労支援なので、いずれ就職して「卒業する」のが当たり前の環境でした。
事業所に通いながら、他者との関わりの中で、できることを見つけて、自分の特徴を知って、自分に適した進路を選んで、就職していく。

彼らにとって卒業するということは、ある種、誇りでもあっただろうなと思います。そして就職した後も、職場で困ったことがあったときや、嬉しいことがあったときに事業所に顔を出してくれました。

ふらりと顔を出してくれる卒業生たちを迎えるたびに、スタジオplus+も「卒業」がある支援だ、と思うのです。

先日は、成人式を迎えたと言って、報告の電話をしてきてくれた卒業生がいました。

オンライン授業続きだった大学生活で初めての対面授業だったと、大学からの帰り道で教室に立ち寄ってくれた卒業生もいました。

「スタジオplus+がなくても、大丈夫」と言って、卒業していった面々です。

スタジオplus+の「卒業」は、子ども自身が自立の一歩を踏み出した、あるいは、その一歩を踏み出そうとしている時に訪れる通過儀礼のようなものなのかもしれないなと、思います。

今まで卒業していった生徒とも、そしてこれから卒業していく生徒とも、毎週顔を合わせる関係性ではなくなっても、彼らの社会の一部として、これからもゆるやかに繋がっていられる場所でありたいと思っています。


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