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【「はじめに」公開】西任暁子 著『話すより10倍ラク! 新 聞く会話術』

 10月に発売する西任暁子 著『話すより10倍ラク! 新 聞く会話術』。
 本書は、人気ラジオDJとして5000人以上にインタビューを行い、現在は「ニシトアキコ学校 話し方教室」を主宰するほか、voicy、Spotify、YouTubeなどのメディアで活躍中の西任暁子さんが、会話を通じて相手の心をひらき、魅力を引き出す方法をまとめた一冊です。

発売を記念し「はじめに」をお届けいたします!

はじめに

 あるイギリスの女性が、二人の政治家とそれぞれ別の日に食事をしました。
 そして言いました。

「最初の男性は、イギリスでいちばん頭のいい男性だと思いました。そしてもう一人の男性は、私がイギリスでいちばん賢い女性だ、と思わせてくれました」

 さて、あなたが話したいのはどちらの男性ですか?

 二人はどちらも、19世紀後半のイギリスで二大政党の代表として活躍した政治家です。前者はウィリアム・グラッドストン、そして後者はベンジャミン・ディズレーリ。
 グラッドストンのように仕事ができて頭が良く会話も面白い人は、もちろん魅力的です。一緒にいれば、きっと楽しい時間を過ごせることでしょう。
 でも、「また会いたい」と思われるのは、ディズレーリのように相手の魅力を引き出して輝かせる人ではないでしょうか。

 私はこれまでラジオDJとして、5000人を超える方々にインタビューさせていただきました。
 スティーヴィー・ワンダーにエルヴィス・コステロ、ビヨンセといった海外のスーパースターから、渡辺謙さん、竹内まりやさん、木村拓哉さんなど日本を代表する大スター、またJALを再建された経営者の稲盛和夫さん、筑波大学名誉教授をつとめられた村上和雄さんなど経営者や文化人の方にもお話を伺ってきました。

 インタビューのほとんどは初対面です。しかも生放送という緊張感のある状況で、時間は10分から長くても1時間ほど。どうすれば出会ったばかりの方に心を開いて話していただけるのか、失敗を重ねながら探してきました。

 経験が浅い頃は、ロックバンドのメンバーとケンカしそうになったり、出演直前になって「こんな番組には出ていられない。帰る」と言われて、泣きながらインタビューをしたこともあります。
 お世辞にも聞き上手とはいえないDJでしたから、井上陽水さんに「西任さんが話しやすいから、コメント収録の相手をお願いしたい」とご依頼をいただけたり、「西任さんのインタビューは話しやすい」と平原綾香さんに言ってもらえたりしたことは、本当に大きな励みになりました。

 その後、スピーチコンサルタントとして、スピーチライティング、営業での話し方、新卒採用の面接やファシリテーションなど、さまざまなコミュニケーションのお手伝いをさせていただきました。
 そうした四半世紀の経験から学んだのは、「ありのままを受け入れることの大切さ」です。

 誰もが話を聞いてほしい、自分をわかってほしいと願っています。時に建設的な否定や批判も大切ですが、ありのままの自分を受け入れてもらえると、私たちは安心して心を開いていられます。自分を守る必要がないからです。

何を言っても、叱られたりバカにされたりしないと思える会議なら、発言は増えるでしょう。
 本音を伝えても関係が壊れないと信じられるとき、思っていることを正直に伝え合うようになります。

 大切なことは、ありのままのその人を受け入れ、安心してもらえる場をつくること。
 それは、誰にだってできることです。自分から話すのが苦手な人でも大丈夫。場づくりには、聞くことのほうが大切だからです。

 安心な場をつくる聞き方の秘訣─それをひとことで言うならば、「相手の輝きを引き出すこと」。
 相手の良いところを見つけて、その人が輝く舞台をつくるような感覚です。そこでは、その場にいるすべての人が楽しくなるでしょう。誰かの魅力に出会えることは、みんなにとっても喜びだからです。

 この本では、そのための方法を5つのステップでご説明していきます。

相手の輝きを引き出す5つのステップ
①相手を好きになる
②相手が話しやすい場をつくる
③相手を褒めて心を開いてもらう
④相手が話したいことを引き出す
⑤相手の話を盛り上げる

まずは、「相手を好きになる」のが最初のステップです。

 いきなりハードルが高いと思われるでしょうか? 私もインタビューでお会いするゲストの方の中には、苦手と感じる人や興味を持てない人もいました。そうした気持ちのままインタビューに臨んでいたので、はじめの頃は失敗の連続です。
「だったら好きになればいいじゃない!」と考え方を変えたところ、いろんな方に会えることが楽しくなりました。
 相手に好きになってもらえるのはもちろん嬉しいことですが、自分から好きになれるのはもっと嬉しいものです。
 それでもやっぱり苦手な人と話すときは、どうすればいいのか。心がラクになる対処法についてもお伝えします。

 第2ステップでは、相手が話しやすい場をつくります。目線や声、身体の向きなど、全身を使った5つの方法で少しずつ会話の場をあたためていきましょう。相手が話に乗ってくれないなど、気まずい雰囲気からの脱出法もご紹介します。

 つづく第3ステップでは、相手の魅力を言葉にして伝えます。
「素敵だな」と感じても、いざ言葉にするのは少し照れくさいかもしれません。
「自分はそんなキャラじゃない」。そう思う自分の枠を、超えてみませんか? きっと新しい世界が待っています。
 相手の良いところを見つけられないという人も大丈夫。探し方や、どんな言葉にすればいいのかという具体的な褒めレシピ、また相手が謙遜してちょっと気まずくなったときの返し方もお伝えします。

 第4ステップでは、相手が話したいことを引き出す質問の技を身につけます。
 ポイントは、「ここを聞いてほしい」という心のスイッチを見つけること。そもそも、何を聞いていいのかわからないという方には、基礎編から始めて少しずつレベルアップしてもらえるよう、4段階に分けて質問法をご紹介しています。

 いよいよ最後の第5ステップは、話が途切れずにふくらんでいく、場の盛り上げ方です。
 会話は生き物。丁寧な水やりや草抜きが植物を育むように、ちょっとした心遣いで会話はイキイキしてきます。反論しても盛り下がらない言い方や、話が長い人への伝え方、また短時間でも深くつながれる共感についても書きました。

 さあ、5つのステップで相手の魅力を引き出す聞き方を身につけたら、コミュニケーションはもっと楽しくなるでしょう。

 みんなが心を開いて会話を楽しめる。
 そんな場づくりで、あなたもまわりも幸せになれる、ハッピー・コミュニケーションの始まりです。

目次

Chapter 1 相手を好きになる
01 相手の好きなところを見つける
02 会う前に3つのことをリサーチしておく…他

Chapter 2 相手が話しやすい場をつくる
07 目線を合わせてから話しかける――場をあたためる5つのステップ①
08 明るい笑顔と明るいトーンの声で話しかける――場をあたためる5つのステップ②
09 身体の表面積で興味を示す――場をあたためる5つのステップ③…他

Chapter 3 褒めて心を開いてもらう
15 褒めることに慣れる
16 褒めどころを見つける――誰でもできる褒めワザ〈基礎編〉1
17 褒めどころに「素敵」をつけて伝える――誰でもできる褒めワザ〈基礎編〉②…他

Chapter 4 相手が話したいことを引き出す
27 質問は相手への興味から始まる――まずはここからの質問ワザ 〈基礎編〉①
28 質問するのが不安なときは、前置きする――まずはここからの質問ワザ〈基礎編〉②
29 質問する前に、意図を伝える――まずはここからの質問ワザ〈基礎編〉③ …他

Chapter 5 話を盛り上げる
40 あいづちのバリエーションを増やす
41 全身であいづちを打つ
42 頭で理解したことを伝える
43 心で理解したことを伝える…他

Chapter 6 オンラインではどう話す?
54 自分の見え方を意識する
55 カメラはオンにする
56 ときにはあえてカメラをオフにして話してみる
57 あいづちは大きく打つ

著者について

西任暁子 Akiko Nishito
株式会社Solaris代表、ニシトアキコ学校主宰
スピーチコンサルタント、Podcaster、ラジオDJ

大阪生まれ、福岡育ち。アメリカへ高校留学後、慶應義塾大学在学中にラジオDJデビュー。東京FMなど全国32のラジオ局で番組を担当。15年間でインタビューした国内外の著名人は5000人を超える。
MCをつとめた「Gaba G Style English シチュエーション別英会話」は、4億4千万ダウンロードを記録。iTunesオールタイムベストポッドキャスト賞を3年連続受賞した。
その後、スピーチやコミュニケーションについて伝えながら心理学や哲学、宗教学、演劇、声と体の表現を探求。1年半のサバティカル休暇で自己に向き合い、「人間の本質はやさしさ」という体験的理解を得た。
現在は、話し方教室やインタビューなど、すべての人に内包されるやさしさが表現される世界を目指して活動している。
著書に『ひらがなで話す技術』(サンマーク出版)、『本音に気づく会話術』(ポプラ社)など。

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・口下手で、会話がなかなか続かない
・苦手な人が相手だと、気まずい空気になってしまう
・初対面で話題が見つけられない
そんな方におすすめの一冊。

ずっと、どう話すといいかと悩んでいたのですが、どう聞くか、相手が安心して気持ちよく話せる場をつくれるかという視点で「会話」を考えると、もっとできることがありそうですね。
(営業部 伊東)

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